【詳細】間もなくG7サミット 対面開催は2年ぶり 焦点は

G7サミット=主要7か国首脳会議がまもなくイギリスで始まります。新型コロナウイルスの感染拡大以降、各国の首脳が初めて対面で意見を交わす場となり、ワクチンの供給での協力体制をはじめ、中国にどう向き合うかなどが議論される見通しです。

ことしのG7サミットはイギリス南西部のコーンウォールでまもなく始まります。

イギリスには2日前にアメリカのバイデン大統領が到着したほか、日本時間の11日午前菅総理大臣が到着するなど各国の首脳が相次いで現地入りしていて、このあとサミットの会場で議長国イギリスのジョンソン首相の出迎えを受けることになっています。

各国の首脳が直接、顔を合わせる形でG7サミットが開催されるのは2年ぶりで、新型コロナウイルスの感染拡大以降、初めてです。

このため13日まで開かれる今回のサミットでは新型コロナウイルス対策が議論の柱となります。

イギリスはサミット開幕を前に、感染拡大を来年中に収束させるため、G7として少なくとも10億回分のワクチンを提供できるようにすることで合意する見込みだと明らかにしました。

また、気候変動や世界経済といった課題が議論されるほか、こうしたテーマの中で中国にどう向き合うかが話し合われる見通しで、G7としてどのような形で結束を示せるかが焦点になります。

議論の主な焦点は?

G7サミット=主要7か国首脳会議では、新型コロナウイルスへの対応のほか、気候変動や経済・貿易、地域情勢、教育などについて、議論が交わされる見通しです。

このうち、新型コロナへの対応では、ワクチンの公平な供給に向けた途上国への支援の在り方などをめぐって意見が交わされるものとみられます。

菅総理大臣は、ワクチンを分配する国際的枠組みに10億ドルの貢献を行うといった、日本の取り組みを説明し、積極的に支援していく姿勢を示すことにしています。

また、気候変動の問題では、議長国のイギリスが、11月に開かれる地球温暖化対策の国連の会議、COP26の議長国も務めることから、G7が世界の脱炭素化を主導していくメッセージを打ち出したいとしています。

菅総理大臣としては、2030年に向けた温室効果ガスの削減目標として、2013年度に比べて46%削減することを目指すと表明していることを踏まえ、日本のリーダーシップを示したい考えです。

一方、地域情勢では、覇権主義的な行動を強める中国への対応がテーマとなる見通しで、東シナ海や南シナ海などへの進出や、台湾をめぐる問題、それに、新疆ウイグル自治区での人権問題などについて、どのようなメッセージを打ち出すのかが焦点となります。

さらに、東京オリンピック・パラリンピックについて、菅総理大臣は、感染対策を徹底して、安全・安心な大会を実現することなどを説明し、改めて理解を得たい考えです。

世界全体の脱炭素化に向けて

今回のG7サミットでは、主要なテーマの1つとして気候変動対策について議論が交わされます。

G7各国は、2050年までに温室効果ガスの排出を全体としてゼロにするという目標で一致していて、ことし4月に開かれた気候変動サミットでは、出席した各国の間で2030年に向けた削減目標を大幅に引き上げる動きが相次ぎました。

こうした中で開かれる今回のサミットでは、温室効果ガスの世界最大の排出国である中国などを念頭に世界全体の脱炭素化に向けて、どのようなメッセージを打ち出すかが焦点となります。

一方、脱炭素社会に向かうにあたり、当面は、コストが安い石炭火力発電を利用せざるをえないアジアの途上国もあるとして、日本政府は、厳格化した条件のもとで石炭火力発電の輸出を支援する方針です。

日本が支援を続けることについてヨーロッパなどから批判が出る中で、先に開かれたG7の気候・環境相会合では、各国の事情に応じた対応を認める内容の表現が共同声明に盛り込まれたことから日本政府は、一定の理解を得られたとしていますが、今回のサミットでさらに厳しい対応を迫られた場合、難しい立場に立たされることになります。

脱中国の供給網構築も焦点

今回のG7サミットでは、安全保障上、重要性を増している半導体などの先端技術や希少資源について、中国の存在感が高まるなか、中国に依存しない形での供給網=サプライチェーンの構築でどこまで連携を深められるかが焦点となります。

スマートフォンや自動車など多くの製品に欠かせない半導体や、希少な資源のレアアース、それに電気自動車の中核となる蓄電池などの分野では中国が国家主導で産業の育成を進めています。

これに対抗して、アメリカのバイデン政権は、安全保障に直結する半導体について、国内での生産や研究開発を支援するため、5兆5000億円規模の国費の投入を議会に働きかけるなどとする計画を明らかにしています。

また、EU=ヨーロッパ連合も2030年までに域内での半導体生産を倍増させることなどを柱とする目標を掲げていて、中国への依存度を下げるための動きが活発化しています。

こうした動きも踏まえ、今回のサミットでは主要7か国が中国に依存しない形で供給網を構築するためにどこまで連携を深められるかが焦点となります。

仏 マクロン大統領「米中の対立の場にならないよう」

フランスのマクロン大統領は10日、G7サミットを前にパリで記者会見を行い、中国の影響力が強まるインド太平洋地域に対するフランスの戦略について「この地域が中国の衛星地帯にならないようにするとともに、アメリカと中国の対立の場にならないように保証することだ」と述べました。

そのうえで、「この地域の友好国が民主主義の価値を守れるようにすることが重要だ」と述べ、アメリカをはじめ、日本やオーストラリアなど、地域の友好国と連携する考えを示しました。

ヨーロッパ各国 中国の海洋進出や人権問題 懸念

G7のヨーロッパ各国は、経済面、安全保障面での重要性が増すインド太平洋地域への関与を強め、中国の海洋進出の動きや人権問題への懸念を深めています。

このうちフランスは、インド太平洋地域に海外領土をもつことから、以前から定期的に艦船を派遣するなどしてきましたが、近年はさらに軍事的な存在感を強め、5月には日本国内で初めてとなる日本の自衛隊とアメリカ軍との共同訓練を九州で行いました。

イギリスもEU=ヨーロッパ連合からの離脱後、この地域への関与を強め、影響力を拡大させる中国に対し、国際的なルールを守るよう繰り返し促しています。

ドイツもことし8月には、この地域に向けてフリゲート艦1隻を派遣する予定です。

一方で各国は、気候変動や感染症対策など地球規模の課題をめぐっては、中国との協力も欠かせないという立場をとっているほか、経済面では中国との関係を重視しています。

イタリアはおととし中国が主導する巨大経済圏構想「一帯一路」に関する覚書をG7として初めて中国と交わしました。

またドイツにとって最大の貿易相手国は中国で、メルケル首相は就任以来、12回にわたって中国を訪問し、緊密な関係を築いており、各国は中国との決定的な対立は避けたい考えです。

菅首相 初の対面での国際会議

今回のG7サミット=主要7か国首脳会議は、菅総理大臣にとって、去年9月の就任以来、初めて臨む対面での国際会議となります。

菅総理大臣は、ことし4月にアメリカを訪れ、バイデン大統領と対面で会談していますが、そのほかのG7の首脳とは、総理大臣として直接会うのは今回が初めてとなります。

G7への出席を前に、菅総理大臣は、今月3日、安倍・前総理大臣と会談し、意見を交わしました。

安倍氏は、サミットは、個人的な見解を表明し合う場でもあるとして、菅総理大臣に、積極的に発言し、みずからの見解を示すようアドバイスしたということです。

菅総理大臣としては、去年まで7年8か月にわたって総理大臣を務め、連続してサミットに出席した安倍氏に替わって、日本の首脳としての存在感を示すことができるのか、その外交手腕が問われることになります。

一方、サミットにあわせて、菅総理大臣は、各国の首脳との個別の会談も調整していて、個人的な信頼関係の構築につなげたい考えです。

G7サミットの主なスケジュール

イギリス政府は、11日に始まるG7サミット=主要7か国首脳会議の詳しいスケジュールを明らかにしました。

【11日】
初日は各国の首脳が現地時間午後2時ごろ、日本時間午後10時ごろに会場に到着し、議長国イギリスのジョンソン首相夫妻の出迎えを受けます。

今回のサミットは議題ごとに6つのセッションが行われます。

11日の最初のセッションではパンデミックからの復興を集中的に議論し、この中で女性の教育についても話し合います。

その後、首脳らはエリザベス女王をはじめとするイギリス王室のメンバーと面会することになっています。

【12日】
午前10時、日本時間午後6時から議論が再開され、午前中は世界経済について、供給網=サプライチェーンを守る対策などを議論します。

午後1時、日本時間午後9時からは外交政策を議論します。

午後3時15分ごろ、日本時間午後11時15分ごろにはゲストとして出席する韓国やオーストラリア、南アフリカの首脳が会場に到着します。

その後、午後4時、日本時間13日午前0時に4つめのセッション。
新型コロナウイルス対策を議論します。

【13日】
最終日、首脳らは2つのセッションに臨みます。

午前9時半、日本時間午後5時半からは開かれた社会について、午前11時半、日本時間午後7時半からは気候変動対策について、それぞれ議論します。

その後、午後2時5分、日本時間午後10時5分にイギリスのジョンソン首相が議長国会見を行い、サミットの成果を発表します。