通信アプリ利用させる「おとり」捜査 世界700か所で800人逮捕

アメリカやヨーロッパの捜査機関は、独自に開発した通信アプリを「おとり」に使った国際的な合同捜査によって世界700か所で一斉に捜索を行い、さまざまな犯罪組織の合わせて800人を逮捕したと発表しました。ユーロポール=ヨーロッパ刑事警察機構は「かつてない規模の摘発だ」としています。

アメリカのFBI=連邦捜査局やユーロポール=ヨーロッパ刑事警察機構などは8日、国際的な合同捜査によって世界各地で犯罪組織を摘発したと発表しました。
発表によりますと、各国の捜査機関がFBIなどが独自に開発した通信アプリを、犯罪組織に気付かれずに利用させる「おとり」捜査を行ったところ、アプリは100か国以上でギャングや麻薬の密売組織など、300を超える犯罪組織に利用されたということです。

各国の捜査機関は、1年以上にわたってアプリ上でやり取りされた2700万通のメッセージを監視し、今月に入って世界700か所で一斉に捜索を行いました。
その結果、800人の容疑者を逮捕したほか、30トン以上の違法薬物や4800万ドル以上に相当する現金や暗号資産を押収したということです。

「トロイの盾」と名付けられた今回の合同捜査には、アメリカやヨーロッパの国々のほか、カナダやオーストラリアなど、10か国以上が参加しました。

ユーロポール=ヨーロッパ刑事警察機構は通信アプリを使った今回の捜査について「かつてない規模の摘発だ」としています。
今回の捜査の大きな鍵となったのが、暗号化したメッセージをやり取りできる通信アプリです。

アプリの名前は「ANOM」で、サービスを利用するには同じ名前の会社が提供する専用の端末を使う必要があります。

ユーロポール=ヨーロッパ刑事警察機構の発表によりますと、アプリを含むこのサービスはアメリカのFBI=連邦捜査局が開発に関わり、2年前(2019年)にオーストラリアの協力も得てサービスの提供を始めたということです。

FBIは暗号化してやり取りされるメッセージの内容を利用者には知られずに監視することができ、事実上このアプリとサービスはFBIが用意した「おとり」だったということです。

ユーロポールの発表では100か国以上のギャングや麻薬の密売組織など300を超える犯罪組織が「おとり」だと気付かないままサービスを利用し、合わせて1万2000台以上の端末が使われていたということです。
またこの大がかりな「おとり」捜査の成功のもう1つの鍵がタイミングでした。

FBIの発表によりますとFBIは2018年に犯罪組織の間で使われていた機密性の高い通信端末を販売するカナダの会社を摘発し、犯罪組織側がこれに代わる手段を探していたところに「ANOM」を登場させたということです。

また去年、ヨーロッパの捜査当局が秘匿性の高い「エンクロチャット」という通信サービスを閉鎖に追い込んだことなどで、「ANOM」への需要はさらに高まったということです。

FBIなど各国の捜査当局は8日、オランダのハーグで合同で会見を開き、このなかでFBIは「捜査によって100以上の命が助かった」と述べ、スウェーデンの捜査当局は「得られた情報によって国内で10以上の殺人事件が未然に防がれた」として成果を強調しました。
またFBIは一斉検挙を受けて7日をもって「ANOM」を閉鎖したと明らかにし、現在「ANOM」のものだったとみられるウェブサイトには合同捜査の作戦名である「トロイの盾」と書かれたロゴとともに「ドメインが差し押さえられています」という表示が出ています。