ワクチンの歴史

ワクチンの歴史
いまや、ニュースで「ワクチン」という言葉を聞かない日はないですよね。そのワクチンの起源について問う入試問題がありました。

問題に挑戦!

問題
天然痘のワクチンを開発した人物を、次の中から1つ選び、番号で答えなさい。

1 シーボルト
2 ジェンナー
3 モース
4 クラーク

(桐光学園中学校 2021年)
正解は「2 ジェンナー」です。
イギリスのエドワード・ジェンナーという医師が、18世紀の末に開発した天然痘のワクチンは、人類史上初のワクチンでもありました。その歴史をひもときます。

人類史上初のワクチン誕生

WHO西太平洋地域事務局で感染症対策に取り組んでいる、医師の高島義裕さんに話を聞きました。
高島さん
「ときには1000万以上の人間が苦しんだ病気を、徹底的になくすことができたのは、ワクチンによるものです」
天然痘は致死率の高い感染症で、紀元前から人々に恐れられていたと言われています。日本でも、何十年かに一度で大流行が起き、多くの命が奪われました。
18世紀の末、ジェンナーは画期的な発見をします。当時、乳牛の間で、牛の天然痘・牛痘が流行していました。牛痘に感染した乳搾りの人は、天然痘にはかからないことに目をつけたのです。
高島さん
「牛の天然痘(牛痘)にかかった人から『うみ』を取り出し、健康な人につける。人工的に牛痘にかかったあと、人間の天然痘ウイルスを感染させてみると、発症や重症化しないということを見つけた。『牛の天然痘、牛痘を人間にどんどん接種していけば、天然痘にはかからない』」
ウイルスそのものを利用して感染症を予防する。これが、人類初のワクチンとなりました。
その後、天然痘ワクチンの接種は世界中で行われました。日本国内での感染事例は、1956年(昭和31年)以降、確認されていません。1980年、世界保健総会で「天然痘の世界根絶」が宣言されました。
病との闘い方で、ワクチンの誕生によって何が変化し、どれくらい画期的だったのでしょうか。
高島さん
「1つの病気を、1つの国から、大陸から、あるいは天然痘のように世界中からなくすということが可能になったということ。ある程度、接種率が上がってくると、その中で病気が広がらなくなる。これを『集団免疫』という。ワクチンができたことによって、予防医学というものが非常に進んだというのは真実だと思います」

世界をけん引した日本のワクチン一斉接種

ワクチンを使った闘いのなかで、「ポリオ」は、日本が1960年代に世界に先駆けて対策を講じた感染症です。
高島さん
「口から入れる経口生ワクチンをソビエトから緊急輸入して1000万を超える子どもたちにワクチンをした。一斉接種で日本でポリオの流行を止めた」
日本の一斉接種のやり方を生かして、1988年、WHOが世界からポリオを根絶する取り組みを始めます。
そこで重要になったのが、「コールドチェーン」。ワクチンの温度を低く保ったまま接種拠点に届けるための輸送網づくりだったと、高島さんは話します。
高島さん
「場合によっては、ワクチンを持ってジャングルに入っていったり、スラムに入っていったり、山の中に入っていったりする。そういう歴史があるので、いま、コロナワクチンを一斉に途上国で現場まで持っていかないといけないときに、これまで作ってきたコールドチェーンが効いているわけです」

現在のワクチン接種状況

新型コロナウイルスに世界が立ち向かっている現在。ワクチン接種について、高島さんはどうみているのでしょうか。
高島さん
「本来、ワクチンを使った感染症対策というのは、1年、2年で軌道に乗るわけではない中、2020年12月から使われ始めたというのは、驚異的だと思います。接種率が全人口の60%、70%いっているような国から、まだ1%、2%という国もあるので、早急に接種率を上げて、ウイルスの伝ぱしにくいような状況を、とにかくどこにでも作るのが我々の仕事です」
今後、世界各地でコロナウイルスのワクチンの接種を進めていくうえで、考えておくべきこと、大事なことはどんなことでしょうか。
高島さん
「ワクチンを打つときに、副反応が出るのは避けられない。100%安全なワクチンはない。ワクチンの意義、病気の恐ろしさを話して、死ななくていい人たち、苦しまなくていい人たちを苦しませない、死なせないことが、しないといけない仕事になっていると思います」
高島さんは、ワクチンは「公共財」だ、とも話していました。いざ、感染症が流行したときに、市民に素早くワクチンを行きわたらせるための設備や体制は、道路や信号機のように、社会を安全に動かすために整えておかなければならないもの、という意味です。ワクチンには、個人の健康だけでなく、社会全体の安全を守る役割もあるんですね。
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