五輪聖火リレー 最後の都道府県の東京都 実施まであと1か月に

全国で行われている東京オリンピックの聖火リレーは最後の都道府県となる東京都内での実施まで9日であと1か月です。都は、公道での実施を前提に準備を進めていますが、新型コロナウイルスの感染状況を見極めながら今後、最終的に判断することにしています。

ことし3月に福島県をスタートしたオリンピックの聖火リレーは、感染拡大の影響で一部の地域で公道での実施が取りやめになっています。

リレーの最後は開催都市・東京都で、1か月後の来月9日から実施されます。

大会が開幕する23日までの15日間、島しょ部も含めて都内のすべての自治体で聖火をつなぐ予定です。

都は、従来から計画していた公道での実施を前提に準備を進めています。

感染対策として、人の密集を避けるため著名人ランナーは公道を走らないようにし、沿道で応援するために他県から来ないよう呼びかけています。

ただ、都内には今月20日までを期限とする緊急事態宣言が出ていて、都は感染状況を見極めながら予定どおり公道を走るかどうかなど今後、実施方法を最終的に判断することにしています。

都内の聖火リレーの計画は

東京都内でのリレーはおよそ1300人のランナーが聖火をつなぐ計画です。

多くは公道を走りますが、隅田川では古くから伝えられてきた「日本泳法」という泳ぎ方で運ぶほか、東京スカイツリーでは155メートルの高さにある屋外の展望台を走る計画もあります。

一方、新型コロナウイルスの感染防止の対策として、初日の世田谷区のスタート地点やそれぞれの日の最後に行う聖火の到着を祝うイベント、それに最終日の都庁のゴール地点では事前予約制にして人が密集するのを防ぐことにしています。

このほか、リレーの当日は周辺で通行止めなどの交通規制が予定されています。

実効性のある対策課題

聖火リレーをめぐっては、密にならないよう呼びかけたものの、ランナーを一目見ようと大勢の人が詰めかけたケースも出ていて、全国最大の人口を抱える開催都市の首都 東京で1か月後に迫ったリレーは、実施の是非も含めて実効性のある感染防止対策が取られるのかが問われることになります。

ことし3月にスタートしたオリンピックの聖火リレーは、感染拡大の影響で一部の地域で公道での実施が取りやめになりました。

一方、都は、現時点では公道での実施を前提に準備を進めています。

都内の感染確認は減少傾向にあるものの、都の専門家は変異ウイルスの影響などもあり、人の流れや人と人の接触の増加は再拡大を招くおそれがあると、繰り返し強い危機感を示しています。

都は「著名人ランナーは公道を走らないなど、人の流れを招かない対策をとる。また、応援も沿道ではなく中継を見るように呼びかけていく」としています。

ただ、各地で行われている聖火リレーでは、密にならないよう呼びかけたものの、ランナーを一目見ようと沿道に大勢の人が詰めかけたケースも出ています。

都内での聖火リレーが1か月後に迫るなか、公道での実施の是非も含めて実効性のある対策が取られるのかが問われることになります。

脳梗塞から回復 感謝の聖火リレー

東京 羽村市を走る聖火ランナーで70歳の中野修さんは、特別な思いを持っています。

1964年に行われた前回の東京オリンピックで、中学生だった中野さんは、学校から推薦されて聖火リレーの伴走者を務めました。

当時のことをよく覚えていて「沿道に人がみんな出てきて『頑張って走れ』と応援してくれてうれしかった」と話しています。

それから50年以上たち、もう一度、走りたいと聖火ランナーに応募しました。

「感謝を伝えたい」という思いからです。

中野さんは、3年前に脳梗塞を発症して後遺症でスムーズに話すことができなくなり、まわりの助けをかりながら地道にリハビリに取り組んできました。

2回目の聖火リレーは、支えてくれた人たちに恩返しをする場にしたいと思っています。

脳梗塞から回復した今、聖火リレーに向けて体力を養おうと毎日、自宅近くの多摩川沿いを8キロ走っています。

中野さんは「本番が近いと感じて気持ちが高ぶり、朝、早く目が覚めます。走るのは200メートルですが、やはり70歳なので少し練習が必要です。元気になって走っている姿を見てもらい、皆さんも元気になってもらいたい」と話しています。

小池知事「密にならない状況確保など工夫したい」

東京都の小池知事は、都内での聖火リレーの感染防止対策について「それぞれ地域で準備しているところもある。それぞれの日の最後に聖火の到着を祝う『セレブレーション会場』については、事前の予約など密にならない状況を確保していくなど、いろいろ工夫をしたい」と述べました。

専門家「状況に応じ柔軟判断を」

東京都での聖火リレーについて、厚生労働省の専門家会合のメンバーで国際医療福祉大学の和田耕治教授は「現在、計画されている形で聖火リレーが行えるかどうかは、始まるときの感染状況によると思う。感染状況は人流の影響を受けて2週間から1か月という非常に短いスパンで大きく変化する。東京では現在、感染が下げ止まり、大きな減少が見込めない状態になっており、聖火リレーが行われる期間しっかりとした感染対策が行われなければ、来月23日以降、オリンピックが開催されたときの感染状況にも影響を及ぼすことになる」と指摘しました。

そのうえで聖火リレーの開催の在り方について「東京都での聖火リレーは、数日単位のほかの地域と違って2週間という長い期間にわたって行われるため、その間に感染状況が変化することも考えられる。期間中に開催について柔軟に判断することが求められるのではないか」と指摘しました。