愛知県知事リコール署名偽造事件 事務局長らを再逮捕

愛知県知事のリコール・解職請求をめぐる署名の偽造事件で、警察は先月逮捕した署名活動を行った団体の事務局長ら4人が、ほかにも佐賀市内でアルバイトを使って署名を偽造していたとして地方自治法違反の疑いで再逮捕しました。関係者によりますと警察の調べに対し事務局長は黙秘しているということです。

再逮捕されたのは署名活動を行った団体「愛知100万人リコールの会」の事務局長、田中孝博 容疑者(60)ら4人です。

愛知県の大村知事のリコール・解職請求に向けて提出された署名をめぐっては、およそ43万5000人分のうちの83%が有効と認められず、警察は田中事務局長らが去年10月、佐賀市内で、アルバイトに名前や住所が書かれた名簿を書き写させるなどして署名を偽造したとして、先月、地方自治法違反の疑いで逮捕し、捜査を進めてきました。

その結果、田中事務局長らが同じ時期に佐賀市内でほかにもアルバイトを使って署名を偽造した疑いがあるとして、警察は8日、地方自治法違反の疑いで再逮捕しました。

関係者によりますと田中事務局長は期間中、30万人分の名前などを書き写すという目標を示し、アルバイト数百人によって作業が行われたということです。

警察は4人の認否を明らかにしていませんが、関係者によりますと、これまでの調べに対し、田中事務局長ら3人は黙秘し、1人は容疑を認めているということです。

田中事務局長は逮捕前の先月、NHKの取材に対し「署名集めを広告関連会社に依頼はしたが、アルバイトに書き写させるという具体的な方法は広告関連会社が勝手に計画したものだ」と述べ、署名偽造への関与を否定していました。

警察は、偽造が行われた詳しいいきさつを調べています。

署名活動参加者にひぼう中傷も「不審な目で見られるのが残念」

署名活動を行った人たちの中には、今回の署名偽造が禍根を残し、今後リコール運動があった場合に運動に対し疑いの目が向けられてしまうのではないかと苦悩している人もいます。

愛知県豊田市の元大学教授 伊藤幸男さんは、署名集めの中心を担う「請求代表者」として、豊田市をはじめ岡崎市や西尾市などの街頭に立ち署名活動を行いました。

伊藤さんは当時を振り返り「何も疑う事はなく、どれだけ集まるかと不安はありましたが、同時に一生懸命やるんだと前向きな気持ちでいっぱいでした」と話しました。

しかし、ことし2月、佐賀市内で署名が大量に偽造されていた疑いが浮上しました。

伊藤さんも、署名簿の提出の直前、同じ筆跡で書かれるなどした署名用紙50枚以上を見つけて、提出をとりやめ、事実関係を公表していました。

偽造が発覚したあと、伊藤さんは署名に協力してくれた人たちから「あなたを信用して署名をしたのに」とか、「署名なんかしなければよかった」などと厳しいことばを浴びせられ、がく然としたといいます。

さらに、一緒に署名集めをした仲間たちもツイッターなどで名指しでひぼう中傷を受け、精神的に追い込まれている人も出てきているといい「思いを持って集まった署名が無残に引き裂かれて、不信の渦に巻き込まれてしまった。いろいろ不審な目で見られるのが残念です」と悔しさをにじませました。

なぜこのような偽造が行われたのか。

その真相が一日も早く明らかになることを望んできましたが、田中事務局長は終始、関与を否定し、活動に参加した人たちへの説明はありませんでした。

また、団体会長で美容整形外科「高須クリニック」の高須克弥院長は、関与を否定する一方で「責任は私にある」としていますが、詳しい調査や説明が行われず、伊藤さんは「不正があったらそれをきちんと調べて正さなきゃいけない。ここまでがトップの役目ですから。それを果たしていないので責任は重大であると思います」と批判しました。

伊藤さんは事実関係を少しでも明らかにし県民に示すため、今後、ほかの請求代表者とも連携して団体の上層部に偽造の経緯や活動資金の使われ方の解明や説明などを求めていくことにしています。

伊藤さんは「署名偽造によってすべてのリコール運動が疑いの目で見られる、愛知県のこのリコール運動がそういう禍根を残してしまった。あいまいなまま終わってしまったら、これから日本のどこかで起こるリコール運動がさいぎの目で見られてしまう。そうならないようきちんと結末をつけたい」と話しました。

捜査の焦点 書き写しアルバイトの費用はどこから

今後の捜査の焦点の1つは、署名の書き写しを行ったアルバイトの費用がどこから捻出されたのかの解明です。

アルバイトを集めた会社関係者によりますと、佐賀市内で作業を行ったアルバイトは数百人、書き写し作業の時間の合計は9000時間にものぼったということです。

この費用として、署名活動を行った団体の田中事務局長から会社に対し、現金や団体を振り出し人にした小切手で、合わせて1050万円が支払われたということです。

一方、団体がことし3月に愛知県の選挙管理委員会に提出した政治資金収支報告書や田中事務局長の説明によりますと、団体の収入は、▼クラウドファンディングによるものが3952万円、▼団体の会長で美容整形外科「高須クリニック」の高須克弥院長からの借入金が1200万円、▼活動を応援する人たちからの寄付が874万円など、合わせて6100万円余りにのぼったということです。

これに対し、支出は▼クラウドファンディングの返礼品や郵便費用など団体の活動費として4149万円、▼人件費が714万円、▼そのほかの諸経費として1057万円などで、田中事務局長は逮捕前、NHKの取材に対し、これらの支出には佐賀市で行われた書き写しのアルバイトの費用は一切含まれていないと説明していました。