菅原元経産相を略式起訴 元公設秘書が証言「繰り返し現金を」

菅原一秀元経済産業大臣が、香典や地元の行事に参加した際の祝儀など合わせておよそ80万円分の違法な寄付をしていたとして、東京地検特捜部は公職選挙法違反の罪で略式起訴しました。菅原元大臣は今月3日に衆議院議員を辞職していますが、罰金刑が確定すれば原則として公民権停止となり、その間の選挙に立候補できなくなります。

略式起訴されたのは、東京9区選出の自民党の衆議院議員だった菅原一秀元経済産業大臣(59)です。

東京地検特捜部によりますと、菅原元大臣はおととし10月までの1年半の間に、71回にわたって選挙区内の33の団体と26人に対し、香典や祝儀などとして現金合わせて53万円と、枕花などの生花20個=27万円相当の違法な寄付をしていたとして公職選挙法違反の罪に問われています。

特捜部は去年6月、菅原元大臣がみずから弔問しない形での香典や枕花合わせて30万円分を寄付していたことを認定したうえで起訴猶予にしましたが、東京第4検察審査会はことし2月、「国会議員はクリーンであってほしいという国民の切なる願いにも十分配慮すべきだ」などとして「起訴すべきだ」と議決しました。

このため特捜部が改めて捜査を進めた結果、菅原元大臣が「祝儀」などとして、提供していた現金なども違法な寄付に当たると認定し、8日、略式起訴しました。

関係者によりますと、特捜部の調べに対し菅原元大臣は、地元での現金提供の一部が違法な寄付に当たることを認めているということです。

菅原元大臣は自民党を離党し今月3日、このような事態を招いた責任を取りたいとして衆議院議員を辞職していますが、今後、罰金刑が確定すれば原則、公民権停止となります。

公民権停止の期間は5年間で、裁判所の判断で短縮される可能性もありますが、その間はすべての選挙に立候補できなくなります。

元公設秘書「元大臣の指示で繰り返し現金渡す」

菅原元経済産業大臣の元公設秘書の男性2人がNHKの取材に応じ、元大臣の指示で、選挙区内の有権者に香典や会費などとして繰り返し現金を渡していたと証言しました。

元秘書の1人は「お金が関わる地元の会合に出席する前には必ず菅原元大臣にお伺いを立て『本日の香典はいくらですか』『新年会はいくらですか』と指示を仰いでいました。相手から要求されなくても1回当たり5000円から1万円の現金を渡し続けていました」と証言しました。

そのうえで「元大臣からは、現金を渡す際に『駐在所の警察官や自民党以外の政党の議員などが周りにいないか気をつけろ』と言われていたので、違法行為であることは認識していたと思います。政治家の事務所としては感覚がまひし常識とはかけ離れた状態でした」と述べました。

また別の元秘書は「事務所の車には香典袋や会費用の封筒がいつも10枚単位で備え付けられていて、元大臣から急に指示が来てもすぐに行けるよう準備をしていました。元大臣は起訴された事実を受け止め国民に説明してほしいです」と話していました。

元公設秘書「本人は違法行為だと認識」

菅原元大臣が略式起訴されたことを受けて、去年まで公設秘書を務めていた男性が東京 千代田区で記者会見を開きました。

元公設秘書は「菅原元大臣自身は、違法行為だと認識していたと思う。私たち秘書は元大臣から、誰に現金を渡すかや『こっそり渡して』など、渡し方も指示されていた。略式起訴され、罪に問われるのは致し方ないことだと思う」と述べました。

元秘書らへLINEで細かく指示

NHKが入手した元秘書らのLINEの画像には、選挙区内の新年会などに持参する現金の額など、菅原元大臣からの指示の内容が残されています。

このうち元秘書のLINEの画像には新年会に持参する現金の金額について菅原元大臣が「5000」や「1万」など地域ごとに細かく指示していることがわかります。
また別の元秘書のLINEのおととしの画像には、地元の支援者の父親の通夜や告別式の日程について報告を受けた菅原氏が「枕花、大」「即」などと返信し、注文する生花店まで具体的に指示していた様子が伺えます。

地元住民 祝儀など現金受け取った

菅原元大臣の選挙区、東京 練馬区の複数の住民がNHKの取材に対し、祭りなど地域の行事の際に元大臣から祝儀や会費として現金を受け取ったと証言しました。

このうち、地域の商店会の役員を務める70代の男性はNHKの取材に対し「菅原元大臣は必ず年一回の総会にあいさつに来て、5000円をお祝い金や会費として置いていった。祝儀や会費を持って何十か所もあいさつに行っていたのなら、大変な金額になると思う」と述べました。

一方で「現金を置いていくのは区議や都議を含めて、ほかの議員もやっていた。菅原元大臣は実直で頼もしく、今も期待しているので、1人だけ、やり玉にあがるのは気の毒だと思う」と話していました。

略式起訴とは

略式起訴は、検察が簡易裁判所に書面だけの審理で罰金刑などを求める手続きで、今後、東京簡易裁判所が罰金の支払いを命じて菅原元大臣が納付すれば、有罪が確定し、刑事手続きは終わります。

選挙区内の有権者に違法な寄付をした罪で罰金刑が確定すれば、公職選挙法の規定で原則として5年間、公民権停止となりますが、停止の期間は裁判所の判断で短縮される場合もあります。

一方、略式命令を受けた被告は不服がある場合、命令の告知から14日以内であれば、正式な裁判を開くよう求めることができ、その場合には公開の法廷での審理で有罪が確定するまで公民権は停止されません。

簡易裁判所も、量刑についての意見が検察官と著しく異なる場合や、事件の内容が複雑で慎重な審理が必要だと判断した場合には、略式命令を出さずに、正式な裁判を開くことができます。

加藤官房長官「ご本人が判断されるものと認識している」

加藤官房長官は、午後の記者会見で「一連の政治家としての対応については、常にわれわれは、みずからの行動に対してきちんと説明責任を果たしていくことが求められているわけであり、その求めにしっかり応じていくことが必要だ。ただ、ご本人の案件は、そうした判断に立ちながら、ご本人が判断されるものと認識している」と述べました。

自民 世耕参院幹事長「しっかり説明する必要ある」

自民党の世耕参議院幹事長は、記者会見で「菅原元経済産業大臣には、説明責任を本当に果たしてもらいたい。経緯や事務所内の判断など自身でも調べているだろうから、しっかり説明する必要がある」と述べました。

そのうえで、政権運営への影響を問われたのに対し、世耕氏は「東京都議会議員選挙には影響が出てくると思う。われわれが襟を正して法令順守を徹底することが何よりも重要であり、それが政権への影響を抑えることにつながる」と述べました。

立民 泉政調会長「今も説明責任消えず 国会で説明を」

立憲民主党の泉政務調査会長は、記者団に対し「法を逸脱した行為であれば厳しく処罰されるべきだ。菅原元経済産業大臣は、自分にとって非常に都合のよいタイミングで議員辞職したと思うが、議員でなくなった今も説明責任は消えていないので、国会でしっかり説明するよう求めたい」と述べました。

識者「国民の意思 検察も尊重せざるをえず」

公職選挙法に詳しい慶應義塾大学の小林良彰名誉教授は、今回の略式起訴について、「国民の意思を代表する機関の検察審査会が政治とカネの問題を断ち切る意味で『起訴相当』と判断した以上、検察も尊重せざるをえない。再び不起訴にすると、検察は国民から『何をやっているんだ』と見られかねず、略式起訴は妥当な判断だと思う」と指摘しました。

そのうえで、「地域によっては政治家による祭りなどへの寄付が根づいてきた長い間の慣習があると思う。今回の事件をきっかけに政治家も有権者も、『払わない』『求めない』ことを改めて認識すべきだ」と述べました。