田辺聖子さんの学生時代の日記見つかる 終戦の日の心境克明に

人生の機微を軽妙に語る小説やエッセーなどを数多く残し、おととし91歳で亡くなった作家の田辺聖子さんが、終戦の日を迎えた心境などを克明につづった学生時代の日記が見つかりました。「軍国少女」の一面がうかがえる一方で、戦争に振り回される境遇に対する率直な思いも記されています。

戦後、長年にわたって作家活動を続け、文化勲章を受章した田辺聖子さんは、人生の機微を軽妙に語る小説や、辛辣(しんらつ)な批評をユーモアあふれる大阪弁で語ったエッセーなどを数多く発表して人気を集めましたが、おととし6月、91歳で亡くなりました。

日記は兵庫県伊丹市の田辺さんの自宅で見つかり、10代の後半、当時の樟蔭女子専門学校に通っていた昭和20年4月から昭和22年3月にかけての出来事などが1冊のノートにつづられています。
昭和20年8月15日には、「嗚呼日本の男児 何ぞその意気の懦弱たる。何ぞその行の拙劣たる」と降伏を受け入れたことを強い筆致で批判し、愛国心あふれる「軍国少女」の一面がうかがえます。
一方で、勉学に励んで小説家を目指そうと苦悩する様子や、女学校の友達や家族との日常もつづられ、学徒動員にかり出されていた昭和20年4月には「青春を祖国に捧げ切るということは、やさしいようで辛く、むつかしいことだ。若き日の豊かなかがやかしい思い出は一つもなく、工場の油と埃にまみれてしまうのか」と、戦争に振り回される自身の境遇に対する率直な思いを記しています。
文芸評論家の斎藤美奈子さんは、「軍国少女の内面やありようが繊細に読み取ることができる日記だ。戦争を通じて日本人は流されやすいと感じていたことがうかがえ、それにあらがわなければいけないというメッセージをその後の作品に込めていたのではないか」と話しています。

この日記は、10日に発売される月刊誌「文藝春秋」に掲載されます。