19歳 笹生優花 全米女子オープン優勝 畑岡とのプレーオフ制す

女子ゴルフの海外メジャー、全米女子オープンで、19歳の笹生(さそう)優花選手が、22歳の畑岡奈紗選手と通算4アンダーの首位で並んでホールアウトし、日本選手どうしのプレーオフを制して、初優勝を果たしました。日本の女子選手の海外メジャー大会制覇は3人目の快挙です。

栄冠をつかんだ19歳にとって大きな武器となったのは「父とのトレーニング」によって作り上げられた力強いスイングでした。優勝を決めた最終ラウンドのプレーの様子やこれまでの「あゆみ」をまとめました。

日本選手どうしのプレーオフを制す

全米女子オープンは6日、カリフォルニア州で最終ラウンドが行われ、笹生選手は首位と1打差の通算6アンダー、単独2位からスタートしました。
笹生選手は前半、ショットの精度に苦しみ、序盤の2番と3番を連続でダブルボギーとするなど、通算3アンダーまでスコアを落として折り返します。

一方、同じ最終組で通算7アンダーの単独首位から出たアメリカのレキシー・トンプソン選手は1つスコアを伸ばし、前半を終えて笹生選手との差を5打まで広げます。

後半、トンプソン選手は11番をダブルボギーとすると、そこからさらに2つスコアを落としたのに対し、笹生選手は16番と17番を連続バーディーとして巻き返し、2人が通算4アンダーで並んで18番を迎えます。

一方、首位と6打差の通算1アンダーからスタートし、最終組の1組前で回った畑岡選手は、ショット、パットともに好調で、16番のパー5で、この日6つ目のバーディーを奪い、通算4アンダーまでスコアを伸ばして先にホールアウトしました。

最終組の18番では笹生選手がパーをキープしたのに対し、トンプソン選手は2打目をバンカーに入れてボギーとし、この結果、通算4アンダーで笹生選手と畑岡選手が首位に並び、日本選手どうしによるプレーオフとなりました。

19歳11か月17日の全米女子OP制覇 韓国選手と並び史上最年少

プレーオフの2ホール目まではお互い譲らず、迎えた3ホール目、笹生選手がラフからの2打目をピンそばにつけたのに対し、畑岡選手は2打目でグリーンを捉えたものの、長いバーディーパットを残します。

畑岡選手がこのバーディーパットを外したのに対し、冷静に沈めた笹生選手が競り勝ち、日本の女子選手3人目のメジャー大会を制覇する快挙を果たしました。

大会の主催者によりますと、19歳11か月と17日での全米女子オープン制覇は、韓国の選手と並び史上最年少だということです。

笹生優花 これまでの成績

笹生優花選手は、東京都出身の19歳。日本人の父、正和さんとフィリピン人の母の間に生まれ、現在は日本とフィリピン両方の国籍を持っています。

持ち味は体幹の強さを生かしたドライバーショットで、今シーズンは国内のプロでトップとなる平均で262ヤードの飛距離を記録しています。

また、子どものころから多くの国のゴルフ場でプレー経験を積み、正確なショットや巧みなテクニックを身につけてきました。
アマチュアのときにフィリピン代表として出場した2018年のアジア大会では個人戦で優勝し、2019年には男子の海外メジャー大会、マスターズ・トーナメントと同じ会場で行われるアマチュアの世界大会で3位に入るなど頭角をあらわしました。

日本では去年、19歳でプロデビューして2戦目でツアー初優勝を果たし、続く3戦目でも勝ってツアー2連勝を果たしました。

10代でのツアー2連勝は宮里藍選手と畑岡奈紗選手以来、3人目で、現在は賞金ランキングで4位につけています。

父の正和さんによりますと、東京オリンピックにはフィリピン代表として出場して、その後、日本国籍を選択する意向で、近い将来に海外ツアーに本格参戦することを目指しています。

「私はまだまだ これからも頑張る」

笹生選手は、大会後の記者会見で「とても気持ちがよくて私を応援してくれる人、みんなに感謝している。19歳で海外メジャーで優勝できると思っていなかった。優勝トロフィーに自分の名前があるのが信じられない」と興奮した表情で話していました。

また「序盤にダブルボギーが2つあり少し動揺していたが、キャディーさんが、まだまだたくさんのホールがあるので冷静にプレーしようと言ってくれて、落ち着いた」と最終ラウンドのプレーを振り返りました。

そして、プレーオフで畑岡選手のパットが入らなかったことを悔しがるそぶりを見せた理由を問われると「ここにいるみんながすばらしい選手たちなので、私はみんなを応援したかった」と話しました。

また、19歳でメジャー大会を制したことで、若い世代の選手たちへの影響について問われると「私はまだまだだと思うので、これからも頑張っていきたい」と笑顔で話していました。

8歳で競技を始め フィリピンで父と「力強いスイング」に

笹生優花選手の武器の1つは、国内でトップクラスの飛距離を誇るドライバーショットです。

今シーズンの日本ツアーでの平均飛距離は262ヤードと、国内ツアーの選手でトップに立っています。

宮里藍選手に憧れて8歳で競技を始め、小学生からプロを目指すと決めて、父の正和さんとともに練習環境を求めてフィリピンに拠点を移しました。

トレーニングでは特に体幹を意識して、両足に重りをつけた状態でフットワークを鍛える練習を行ったり、階段上りやキャッチボールなどを繰り返したりしました。

さらに、自宅でもサンドバッグ打ちなどのトレーニングで体幹を鍛え、軸のぶれない力強いスイングを作りあげました。
ドライバーの飛距離について笹生選手は「今の時代のゴルフを考えると、飛距離が出るほうが有利で、海外の選手たちと比べると私はまだまだなので、精いっぱい飛ばせるようにしています」と話していました。

また、豊富な経験による細かな技術も笹生選手の強さを支えています。

アマチュア時代から男子のメジャー大会「マスターズ・トーナメント」が行われる会場など、世界各国のゴルフ場でプレー経験があり、フィリピン代表としてアジア大会で優勝も果たしました。

こうした経験によって、深いラフや難しいバンカーでも状況に応じて巧みに打ち方を変える技術を身につけ、今回の全米女子オープンでも多くの選手が深いラフに苦しむ中、笹生選手はラフからでも体幹の強さを生かした力強いショットで挽回し、バンカーからも巧みなアプローチを見せていました。

また、英語や日本語、それにタガログ語や韓国語なども操り、世界の選手たちとの交流によってもプレーの幅を広げているということです。

日本選手と海外メジャー大会

女子ゴルフの日本選手で初めて海外メジャーを制したのは、1977年の全米女子プロ選手権で優勝した樋口久子さんが初めてでした。

その後、日本選手として初めてアメリカツアーの賞金女王になった岡本綾子さんが、1980年代から90年代にかけてたびたび優勝を争い、全米女子オープンでも1987年にはプレーオフまでもつれる争いで2位に入っています。

2000年代に入ると、アメリカツアーで通算9勝の宮里藍さんや宮里美香選手が、全米女子プロ選手権や全英女子オープンで2位や3位に入る活躍をみせました。
そして、樋口さん以来42年ぶりに海外メジャーの壁を破ったのが、おととしの全英女子オープンを制した渋野日向子選手でした。

また、渋野選手と同学年で「黄金世代」の1人、畑岡奈紗選手も、全米女子プロ選手権で2018年に2位、去年も3位に食い込みました。

日本選手が全米女子オープンを制覇するのは初めてで、19歳の笹生選手は、アメリカツアー初優勝を海外メジャーで挙げる快挙を成し遂げました。

男子では松山英樹選手がことし4月に「マスターズ・トーナメント」で優勝し、日本の男子選手として初めて海外メジャー大会を制覇していました。

“憧れ”のローリー・マキロイ選手も祝福

笹生選手の優勝を受けて、笹生選手が憧れの選手と公言している、イギリスのローリー・マキロイ選手も祝福のメッセージをおくりました。

男子のメジャー大会で4勝をあげているマキロイ選手は、大会期間中も自身のインスタグラムで、笹生選手に対して「最後までやりきってトロフィーを勝ち取れ」などと励ましのメッセージを送っていて、笹生選手の優勝が決まった直後に、自身のツイッターで「これで誰もが優花のスイングを動画で見るようになる。おめでとう」とつづり、優勝を祝福していました。

尾崎将司選手宅で練習「頑張ってきた成果」

笹生選手が練習場として自宅を訪れることがある“ジャンボ尾崎”こと尾崎将司選手は「今回の優勝は何くそ精神のたまものだと思う。努力しかないことをいちばん理解し、頑張ってきた成果でもある。本当におめでとう。また、敗れた畑岡選手にも最大の賛辞を送りたい。すばらしい2位であったと思う」とコメントし、プレーオフを争った2人をたたえました。

樋口久子さん「日本ゴルフ界に大きな刺激」

1977年の全米女子プロ選手権で日本の女子ゴルフ選手として初めて海外メジャーを制した樋口久子さんは「優勝おめでとうございます。日本ツアーで活躍している笹生選手が、メジャー大会である全米女子オープンで勝ってくれたことは感激のひとことです。新しいスター誕生は日本の選手にも日本のゴルフ界にとっても大きな刺激となることでしょう。今後も日本はもとより世界での活躍を大いに期待しています」というコメントを出しました。

日本女子プロゴルフ協会 小林会長「感激の極み」

日本女子プロゴルフ協会の小林浩美会長は「笹生選手と畑岡選手の2人での優勝争いの日がくるとは、本当に感激の極みです。日本のみならず世界の女子ゴルフ選手はこの大会を勝つことが悲願で、畑岡選手もメジャー大会優勝をつかむ日は近いに違いありません。たくさんの日本選手がメジャー大会の優勝を重ねていくことを願っています」というコメントを出しました。

高校時代に練習に訪れていた三重県志摩市からも祝福の声

笹生優花選手が高校時代、練習に訪れていた三重県志摩市では快挙を祝う声が聞かれました。

笹生選手は、志摩市に本校がある通信制高校のアスリートゴルフコースに在籍していました。

志摩市は、笹生選手を市ゆかりのスポーツ選手としておととし市役所への訪問を受けたときの写真とともにホームページで紹介しています。

橋爪政吉市長は「誠におめでとうございます。『世界一になる』という夢を語られ、見事実現されました。今後、ますますご活躍されることを期待しています」というコメントを出しました。

また笹生選手は毎年、在籍する高校の授業の一環などでほかの生徒たちとともに志摩市内のゴルフ場を訪れ練習に励みました。

笹生選手たちを受け入れてきた近鉄賢島カンツリークラブの前田稔支配人は「世界の舞台での優勝はうちのコースとしても誇らしく大変ありがたいと感じています。今後も活躍されることを祈っています」と話していました。

フィリピン メディアが優勝を大きく伝える

日本とフィリピン両方の国籍を持つ19歳の笹生選手の優勝を、フィリピンのメディアも大きく伝えています。

このうちテレビ局のABS-CBNは「笹生選手は海外メジャー大会で優勝した初めてのフィリピン人として歴史を作った」と伝えています。

また、同じく地元のテレビ局のCNNフィリピンは「旋風を巻き起こした19歳がプレーオフを制し、タイトルを勝ち取った」と初優勝をたたえています。

このほか、ツイッター上では「おめでとう」とか「笹生選手はフィリピンの誇りだ」など祝福のメッセージが投稿されています。