山縣亮太 100m9秒95の日本新 ついに“風”も味方に

男子100メートルの日本新記録をマークした山縣亮太選手。
そのタイム、9秒95は2019年の世界選手権の決勝で5位に相当します。
レース時の風速は、参考記録にならないギリギリの“追い風2メートル”。困難な状況にあっても努力を続けてきた男が、ついに“風”を味方につけました。

「10秒の壁」と「風」

長年「10秒の壁」を越えられずに来た山縣選手。
実はこれまで100メートルの結果を大きく左右する、「風」にあまり恵まれずにきました。

風向きは常に一定ではないため、追い風がタイムに与える影響を正確に測ることは難しいですが、過去には平地で無風の条件のもと10秒00で走った場合に、追い風が1メートルの時は無風の時よりも0秒085速くなるとする推計が出されたこともあります。
山縣選手がこれまでの自己ベストである10秒00をマークしたのは2回。
1回目は2017年の実業団の大会でした。
このとき、追い風が吹いたもののわずか0.2メートルでした。

2回目の10秒00は、よくとしのジャカルタアジア大会です。決勝では2位の選手も同じ10秒00だったため、このときは1000分の1秒単位のタイムが発表され公式のタイムは9秒997でした。
このときも追い風が吹きましたが、0.8メートルにとどまりました。

「風」に恵まれず

オリンピックシーズンのことしは参加標準記録の10秒05の突破を目指して、これまでに4大会に出場していましたが、ここでも「風」には恵まれませんでした。

10秒14で優勝した4月の「織田記念」では、直前のレースでは好条件のもと好記録が相次いでいました。
男子110メートルハードルでは追い風1.7メートル、女子100メートルハードルも追い風1.6メートルで、いずれも日本新記録が誕生、山縣選手にとって参加標準記録を突破する絶好の機会と見られていました。
しかし、山縣選手のレースになると追い風は弱まり0.1メートルに。
結果は10秒14と、参加標準記録に100分の9秒届きませんでした。
その6日後、水戸市でのレースは強い向かい風となりました。
予選は山縣選手自身、「経験がない」という向かい風8.3メートルで10秒95、決勝も向かい風4.7メートルで10秒71に終わりました。

山縣選手は「風」について「あまり気にしない性格だがそろそろ気になってきた」と笑いながら話しつつ、なんとかみずからを取り巻く「風向き」が変わることを期待している様子でもありました。

東京五輪への“追い風”

オリンピックの代表選考となる日本選手権前最後のレースとして臨んだ6日の大会では予選は追い風1.7メートル、決勝は参考記録にならないギリギリの2メートルちょうどの追い風が吹く、これまでにない好条件のなかでのレースとなりました。

相次ぐケガなどによる困難な状況を前にしてもたゆまぬ努力を続けてきた山縣選手はついに味方した「風」を背中から受けて10秒の壁を突破、3回目にオリンピックに向けたまさに「追い風」になりました。