体操 内村航平 東京五輪内定 4大会連続出場へ 種目別鉄棒で

東京オリンピックの代表選考を兼ねた体操の全日本種目別選手権は群馬県高崎市で決勝が行われ、内村航平選手が6日の競技と、これまで行われた代表選考会の結果と合わせてオリンピックの代表に内定しました。
内村選手は4大会連続の出場で、東京オリンピックで種目別の鉄棒に出場します。

またこの大会の結果、谷川航選手と北園丈琉選手が、これまでの代表選考会の結果と合わせて東京オリンピックの代表に内定しました。
2人はともに初めてのオリンピック出場です。

東京オリンピックの体操男子の代表選考は、4月の全日本選手権、先月のNHK杯、そして全日本種目別選手権の3つの大会の成績をもとに行われます。

オリンピックで個人総合2連覇の内村選手は、東京オリンピックでは種目別の鉄棒で代表入りを目指してきました。

内村選手は5日の予選で15.766の高得点をマークし、6日の決勝に臨みました。
内村選手は、冒頭のH難度、「ブレットシュナイダー」を成功させた後、手放し技を次々と決めました。
しかし演技中盤に体をひねる技の後、鉄棒を回りきれないミスが出ました。
最後の着地はしっかりと止めて15.100の得点をあげました。

6日の決勝ではすでにオリンピックの代表に内定していた橋本大輝選手の15.133に及ばず2位だったものの、これまでの代表選考会の結果と合わせて東京オリンピックの代表に内定しました。
内村選手は、4大会連続のオリンピック出場で、東京大会で種目別の鉄棒に出場します。

またこの大会の結果谷川航選手と北園丈琉選手が、ともに初めてのオリンピック代表に内定しました。

男子団体の代表メンバーは、4人のうちNHK杯優勝の橋本大輝選手と2位の萱和磨選手の2人が決まっていて、残りの2人は、代表選考の3大会の成績で団体の得点にどれだけ貢献できるかで選ばれました。

6日の決勝で谷川選手は平行棒のみの出場で、途中、姿勢がやや乱れたものの持ち前の力強い演技で次々と技を決めて14.900の得点をマークしました。
谷川選手は、これまでの代表選考会でのゆかやつり輪、跳馬、それに平行棒などの得点と合わせてオリンピックの代表に内定しました。
谷川選手は、初めてのオリンピック代表です。

北園選手は、4月の全日本選手権でひじをけがしましたが、治療をしながら本来の演技を取り戻してきました。
6日はゆかとあん馬、平行棒で14点台後半の得点をマークしました。最後の鉄棒では、G難度の「カッシーナ」を決めるなど、すべての技を大きなミスなくやりきり、14.666をマークしました。
北園選手は、6日とこれまでの代表選考会の結果と合わせて東京オリンピックの代表に内定しました。
北園選手も初めてのオリンピック代表です。

内村“完璧”求めてつかんだ切符

内村選手は、種目別の鉄棒のみに専念して1年余り、完璧な演技を追い求めながら4回目のオリンピックの切符をつかみました。

内村選手は、長崎県出身の32歳。3歳で体操を始め、日本体育大学などで練習を積みました。優れた空中感覚を持ち味に力をつけ、19歳で北京オリンピックの代表に選ばれ、団体と個人総合で銀メダルを獲得しました。

その後、着地の正確さと6種目すべてで難度が高い技を美しくこなす世界最高のオールラウンダーに成長。個人総合ではロンドンオリンピックから2大会連続金メダル、世界選手権は6連覇と圧倒的な成績を残しました。
また団体でも日本の大黒柱としてロンドンオリンピックでは銀、リオデジャネイロオリンピックでは金メダルを獲得しました。
しかし、リオデジャネイロの後は慢性的な肩の痛みに苦しみ、体の負担なども考慮して「オリンピック出場の可能性が一番高いと感じた」と去年、種目別の鉄棒に専念して東京オリンピックの出場を目指すことを決めました。

そして鉄棒の演技にH難度の大技で、2回宙返り2回ひねりの手放し技、「ブレットシュナイダー」を取り入れ、東京オリンピックの代表選考に臨みました。

代表選考会となった4月の全日本選手権と先月のNHK杯では圧倒的な演技で15点台のトップの得点をマークしました。

それでも内村選手は「練習ではもっといい演技ができているので、それが試合でできないといけない。自分が満足いく演技を求めていかなければいけないと思う」と満足せず、「一番目指しているものはやはり完璧な演技。人から“すごくよかった”と言われても自分が満足しないと僕は納得できない」と代表選考の結果ではなく、さらに高いレベルの演技を追い求めていました。

谷川航「目標は代表にではなくてオリンピックで金メダル」

谷川航選手は、千葉県出身の24歳。抜群の跳躍力と着地の正確さでゆかと跳馬を得意とし、高校3年生だった2014年に全日本種目別選手権のゆかで3位に入り、2年後の同じ大会では跳馬で優勝しました。

2017年に初めて世界選手権の代表となり、その後、3年連続で代表に選ばれています。4月の全日本選手権では、跳馬で世界最高難度となる大技で、前転とびからの2回宙返りに半分のひねりを加える「リ・セグァン2」を決め、ほかの種目も安定した演技で2位となりました。

先月のNHK杯では2位以内に入れば東京オリンピックの代表に内定しましたが、3位となって、代表内定は持ち越しとなっていました。

男子団体の代表に内定した谷川選手は「目標は代表に入ることではなくてオリンピック本番で金メダルをとることだが、初めてのオリンピック代表なのでうれしい気持ちとホッとした気持ちが強い。小学校で体操を始めた時からの夢でついに代表に入れたので、このチャンスをモノにして金メダルを取れるようにあと1か月、全力でやっていきたい」と真剣な表情で話していました。

代表選考会を振り返り「あん馬や鉄棒など、ミスがところどころあったのが反省点だ。オリンピックのかかる選考会で緊張感がとても高かった。その中で演技ができたことは成長だが、ミスをしなければ団体や個人でも金メダルの可能性が広がるのでミスをしないことを突き詰めていきたい」と話していました。

そして、個人の枠で代表の内定を決めた内村航平選手について「団体のメンバーではないが、オリンピック本番まで一緒に練習や強化合宿ができると思うし、選手村でも話をする機会があると思う。今回の団体のメンバーは、誰もオリンピックを経験したことがないので、アドバイスをもらえたら」と内村選手の経験に期待していました。

北園丈琉「金メダルを絶対 使命感感じている」

北園丈琉選手は、大阪出身の18歳。3歳の時に競技を始め、体操の強豪、大阪の清風高校で練習を積みました。
身長1メートル56センチと小柄ながら、力強い体幹を生かして手足の先まで伸びた美しい姿勢で6種目すべてで安定した演技ができるのが強みです。

2018年に行われたユースオリンピックでは、個人総合と種目別で合わせて5つの金メダルを獲得しました。そして去年の全日本選手権で2位に入るなど東京オリンピックの延期で代表争いに名乗りを上げました。

しかし、ことし4月の全日本選手権で、ひじをケガし、その後の代表選考に向けてコンディション面が心配されていました。

北園選手は、男子団体の代表に内定したことについて「出た種目のほとんどで自分のベストパフォーマンスが出せたので、素直にうれしいし、ほっとした。それとともに、金メダルを絶対に取らなくてはいけないという使命感を感じている」と話しました。

4月の全日本選手権では、予選でトップに立ちながら決勝の最後の種目の鉄棒で落下してひじをけがしたことを踏まえ「代表選考会は本当にいろいろとあり、すごい経験をしたなと思っている。けがをしてしまったが、諦めずにやってきてよかった。応援してくれた皆さんのおかげだと思うし、感謝しかありません」とときおり笑みを浮かべて話しました。

個人枠での代表内定を決めた内村航平選手については「代表内定をしたあと、“よかったな”と声をかけてもらいました。内村選手とオリンピックに行くのが夢であり目標だったので、一緒に行くことができてよかった」と笑顔を見せました。

そして、ことし3月に卒業した大阪の清風高校は、アテネオリンピックの金メダリスト、米田功さんなど多くの体操選手が卒業したことを踏まえ「中学生のころから、学校に飾られている偉大なオリンピアンの先輩たちのパネルを見て、自分も先輩たちみたいになりたいと思って練習をしてきた。本当によかった」と話していました。

米倉英信「今後の大きな試合や人生に強みになる」

米倉英信選手は、内村航平選手との争いで代表を逃し「あと一歩で負けてしまった。この3か月の間、気の抜けない時間を過ごした。オリンピックの権利を取ることはできなかったけど、今後の大きな試合や人生に強みになる。トップ争いができて誇らしく思う」と振り返りました。

また、内村選手が満足のいく演技を出せないまま内定を勝ち取ったことを謝ってきたことを明かし「演技のあと、“すみませんでした”と言われたが、内村選手だったら絶対に金メダルをとってくると思う。僕は、今月のワールドカップで代表になれるように頑張ろうと切り替わった」とオリンピックの代表がかかる今月のワールドカップに向けて気持ちをあらたにしていました。

杉野正尭「悔しい思い」

東京オリンピックの代表を逃した杉野正尭選手は「本当に悔しい思いだ。鉄棒はこん身のできだったが、それでも一歩届かなかった。自分のなかではいつも通りだと思っていたが、そうではなかった。平常心を保とうと思いすぎた結果、あん馬で旋回が小さくなって落下につながってしまった」と厳しい表情で6日の演技を振り返りました。

最後の種目の鉄棒で着地を決めたあと、涙を流したことについて「代表を争っていた北園丈琉選手の演技を見て完璧をねらわないといけないと思っていた。手放し技をすべて成功させて、乗っかっていたものすべてから解き放たれて、気付いたら涙が出ていた」と振り返りました。

そして、今後に向けて「0.1も取りこぼせないような試合運びをしていかないといけないと感じたし、もっと強くなって代表を勝ち取りたい。次のステップに向かって一から体操を見直して強くなっていきたい」と再起を誓っていました。

日本体操協会 水鳥 男子強化本部長「このメンバーで金メダルを」

日本体操協会の水鳥寿思男子強化本部長は「長い戦いだったが、やっと代表選手を決定することができてほっとしている。これ以上ないくらい歴史に残る代表選考会だったと感じているし、それぐらい高いレベルだった。今回、代表に入れなかった選手も代表の選手と同じくらいメダルを狙える選手だ。それを今大会で感じることができた。選手の頑張りもうれしかったし、このメンバーで金メダルを取りたいという気持ちが高まった」とこれまでの代表選考会を総括しました。

団体のメンバー4人については「日本が一番、胸を張って送り出せる4人だ。率直に金メダルを狙えるメンバー」と評価したうえで、今大会で内定した谷川航選手について、「得意の跳馬、平行棒、つり輪で日本の選手が取れないところのレベルまで取ることができる選手だ。そのスペシャリストとしての貢献に加えて、個人総合の力もあるのでオールマイティに活躍できる。精度を高めれば日本の要として活躍してくれると思う」と話しました。

北園丈琉選手については、全日本選手権の決勝でひじにけがを負ったことを踏まえ「ここまで戻ってくるとは誰も想像できなかった。ケガで調整が大変な中、これだけ安定してできることは、先に決まった2人と劣らない同じレベルかそれ以上の力があると思う」とたたえました。

個人枠で代表に内定した内村航平選手については「内村選手の鉄棒をオリンピックで世界の人に見てもらいたかったので代表に決まってすごくうれしい。4月からの代表選考でこれだけの演技をやっていながら、ここまで追い込まれると想像していなかった。それくらい、代表を争った米倉英信選手がすばらしかった。この苦しい戦いを勝ち取ったのでさらに強くなってオリンピックで金メダルを取る可能性がより高まったと思う」と話しました。

さらに、内村選手が団体メンバーに与える影響について「メンバーが誰もオリンピックを経験していないので、選手の中には怖さもあると思う。内村選手の一つ一つの声掛けが選手に安心感を与えてくれる。彼が“大丈夫”と言うだけで、選手は大丈夫だと思う。団体にいなくても中心選手として活躍してくれる。彼を中心に戦ってきたい」と期待を寄せました。