アストラゼネカのワクチン 診断治療の手引を公開 関連学会

極めてまれに血栓が生じるリスクがあるとされるアストラゼネカの新型コロナウイルスのワクチンについて、関連学会が診断や治療の手引を公開しました。

先月、承認されたアストラゼネカのワクチンは、接種後、極めてまれに血栓が生じるリスクがあると指摘され、厚生労働省は当面、公的な接種に使わないとしたうえで、治療法や推奨する年齢などを慎重に検討しています。

こうした中、日本脳卒中学会と日本血栓止血学会が、厚生労働省の依頼を受けて、医療機関向けに診断や治療の手引を作成し、今月2日に公開しました。

手引では、現時点で確立した診断や治療の方法はないとしたうえで、血液検査や画像診断の結果、血小板の数の低下や、血栓が確認されれば、速やかに治療を開始するとしています。治療では検査結果に応じて「免疫グロブリン製剤」と呼ばれる薬を投与することを推奨し、専門家に相談したうえで、血液が固まるのを抑える薬の投与も検討するよう求めています。

一方で「ヘパリン」と呼ばれる薬の投与と、輸血は避けるとしています。

厚生労働省は、この手引を参考に今後、公的な接種での使用について検討を進める方針です。

日本脳卒中学会は「ほかの病気との見分けも必要で、確実な診断や治療が難しいが、接種が始まった際の参考にしてほしい」としています。

政府 各国や地域に供給する考え 国内での活用求める声も

アストラゼネカのワクチンについて、政府は国内で使用する時期のめどが立っていないことや、すべての国民分のワクチンが年内に確保できる見通しになったことから、ワクチンを分配する国際的な枠組みなどを通じて、3000万回分をめどに、各国や地域に供給する考えを示しています。

一方で、学術団体からは国内での活用を求める声が出ていて、このうちワクチンの開発や治験に携わる研究者でつくる「日本ワクチン学会」は、先月末に見解を公表しました。

それによりますと世界中でワクチンの接種が喫緊の課題となる中、すでに各国で使用され、国内でも承認されているワクチンを使用しないことは、国際的に理解を得られないなどと指摘しています。

また、国内でも生産が始まっていることや、ほかの承認されたワクチンより冷蔵での保管がしやすいことなどを利点として挙げ、年齢や性別、基礎疾患の有無などをもとに接種対象を選定するなどして、最大限に活用するよう求めています。