絵本作家かこさとしさん デビュー前の未発表の紙芝居見つかる

「だるまちゃん」シリーズなどで知られる絵本作家で3年前に92歳で亡くなったかこさとしさんが、作家としてデビューする前に自身の戦時中の体験をもとに描いた未発表の紙芝居が自宅で見つかりました。発見した家族によりますと、かこさんが戦争を直接描いた作品はこれまで未確認だということで、「自分が体験した状況を伝えなければという思いがあった」と話しています。

かこさとしさんは、代表作の「だるまちゃん」シリーズなどユーモラスな作品から科学をテーマにした絵本まで、600点以上を発表し、幅広い世代に愛される絵本作家として活躍しましたが、3年前の5月、92歳で亡くなりました。
紙芝居は、かこさんの作品を管理している長女の鈴木万里さんが去年、かこさんの自宅で見つけました。

「秋」という題名がつけられ、昭和19年の秋の出来事がおよそ20枚にわたって画用紙に描かれていて、絵本作家になる前の昭和28年から32年にかけて制作されたことが記されていました。
治療してくれた医師が徴兵され、その後戦死したと知らされたり、旧日本軍の戦闘機が墜落する様子を防空ごうから目にしたりと、18歳の時の自身の体験が「私」という1人称でつづられ、戦争が続く秋の終わりと平和な春の訪れを願う切なる思いが書き記されています。
鈴木さんによりますと、かこさんが戦争を直接描いた作品はこれまで未確認だということで、鈴木さんは「詳しい戦争体験については家族にも語っていなかったので、本当にびっくりした。自分が体験した状況を伝えなければという思いがあったと思います。戦争体験を聞く機会が減る中、これからを生きる子どもたちに知っておいてもらいたい」と話していました。

今回見つかった作品は新たに絵本としてまとめられ、来月下旬に出版される予定です。

「自分が経験したことを伝えたい一心でまとめたと思う」

かこさとしさんは、少年のころ航空士官を志していましたが視力が悪くなって断念し、当時の東京帝国大学に入学した昭和20年に疎開先の三重県内で終戦を迎えました。

かこさんはNHKのインタビューなどで、絵本を描き続ける理由について、かつて軍人に憧れ戦争に加担しようとしたみずからの苦い経験から、未来を担う子どもたちには自分で考える力を養ってほしいと語っていました。

今回見つかった紙芝居は発表されないまま自宅に残されていましたが、紙芝居を制作したあと、およそ30年にわたって文章に手を入れていたことを示す原稿も見つかり、かこさんが出版を目指していたことがうかがえるということです。

長女の鈴木万里さんは、「とにかく目の前の子どもたちに自分の経験したことを伝えておきたいという一心で、時間をかけてまとめたんだと思います」と話しています。

その一方で、戦争を直接描いた作品がほかに確認されていないことについて、鈴木さんは「戦争はいろいろな面を知ってからでないと描けないと話していました。思いはあったけれどうまくまとめられず、そのことを非常に後悔していた」と指摘しています。