東京五輪参加の選手や指導者などへのワクチン接種 始まる

東京オリンピックに参加する選手や指導者など、およそ1600人を対象にした新型コロナウイルスのワクチン接種が、ナショナルトレーニングセンターで1日から本格的に始まりました。

東京オリンピック・パラリンピックに参加する各国や地域の選手団には、製薬大手のファイザーなどのワクチンが一般の接種とは別に無償で提供されます。

オリンピックの日本選手団については、JOC=日本オリンピック委員会が競技団体に聞き取りを行い、その結果、代表内定選手や内定の可能性がある選手、指導者、そして選手と接触する可能性のあるスタッフなど、およそ1600人が接種の対象となりました。

ワクチン接種は、海外遠征のため前倒しで行った一部の選手を除き、1日から本格的に始まりました。

一般の医療体制への影響を避けるため、多くの選手が拠点とする東京 北区のナショナルトレーニングセンターを会場に、各競技団体のチームドクターが中心となり、希望制で行われています。

1日に接種を受けたのは、6つの競技団体の選手などと選手団本部のスタッフ、合わせておよそ200人で、開幕直前の来月20日ころまでに接種を終える計画だということです。

一方、海外を拠点に活動し日本に住民票がない選手について、JOCは接種を受けるのは難しいという見解を示しました。

取材に応じた日本選手団の福井烈団長は「今回のワクチン接種は、国民の接種とは別の態勢で進めていて、影響を及ぼさないのが大前提だ。感染リスクを減らすことで日本社会の感染防止につながる取り組みだ」と述べ、接種への理解を求めました。

パラリンピックの選手などを対象にした接種は、今月中旬から始まる方向で調整されています。

ハンドボールの代表選手は

東京オリンピックに出場する選手へのワクチン接種が始まったことについて、ハンドボール男子代表の土井レミイ杏利キャプテンは「当初は接種を受けるつもりはなかったが、そのワクチンがお年寄りや先に打つべき人に『回ることはない』ということだった。もし断るメリットがないのであれば、ワクチンを接種することで、周りの人に感染をさせない予防もできるのではないかと発想を転換して、接種を受けることにした。ワクチンについては、いろいろな人がいろいろな意見を持っていて、何が正解かはわからない」と話しました。

また、東江雄斗選手は「拒否をしてもワクチンが国民の皆さんに行くわけではないということだった。そうであれば、いち選手としてワクチンを受けることで安心できるかもしれないので、受けられるならば受けようと思った」と話しました。

陸上の選手は

大阪市で陸上の大会に参加した、女子100メートルハードルの寺田明日香選手は「今は一般の人たちにもだいぶ接種が広がってきていると思うので、選手を含めていろいろな人に広まっていけばいいと思っている」と話しました。

女子走り幅跳びの秦澄美鈴選手は「ワクチンを打たないことで多くの人に迷惑をかけることもあると思うので、順番が回ってきたら打ちたい気持ちはある」と話していました。

男子やり投げのディーン元気選手は「接種の順番に関して問題になることもあるが、接種を受けられる人から受けていくことで、日本が安全になり、安心して暮らせる日が来ると思う。ワクチンはその大きなきっかけになると思うので、広まっていけばいいと思う」と話していました。

一方、選手の中にはワクチンに関する質問に回答を控える選手もいました。

辞退する選手も

東京オリンピックの代表に内定している選手の中には、ワクチンの接種で選手を優先することに疑問があるとして接種を辞退した人もいます。

過去にオリンピックの出場経験があり、東京オリンピック代表に内定している選手は、5月に競技団体にワクチンの接種を辞退する考えを伝えました。

この選手は、NHKの取材に対して「副反応が心配ということもあるが、最大の理由はアスリートに優先して接種させるという方針への疑問だ。医療従事者や高齢者の接種が進んでいない状態で、アスリートだけが接種を受けることに世間は反発するだろうし、それは理解できる。最近の政府や国際オリンピック委員会の言動や姿勢にも不信感がある。自分の分のワクチンを、より必要としている人へ提供してほしい」と話していました。