オリンピック事前合宿で初来日へ ソフト・豪代表 感染対策は?

東京オリンピックの事前合宿のためソフトボールのオーストラリア代表が日本に向けて出発しました。チームは6月1日、ホストタウンの群馬県太田市に入る予定で、新型コロナウイルスの感染拡大で東京大会の延期が決まって以降、海外のチームが事前合宿のために来日するのは初めてです。

ソフトボールのオーストラリア代表は東京オリンピックに向け、1日から大会直前の7月17日までホストタウンの太田市で事前合宿を行います。

ホストタウンの事務局を務める内閣官房などによりますと、新型コロナの感染拡大で東京大会の延期が決まって以降、海外のチームが事前合宿のために来日するのは初めてです。

5月31日は選手14人と関係者がシドニーの空港に集まり、家族などの見送りを受け経由地のシンガポールに向けて出発しました。

オーストラリアの競技団体や太田市によりますと、選手たちは感染対策として全員が5月にワクチンの接種を2回受けたほか、日本では宿泊先と野球場の往復以外は外出を自粛し、PCR検査を毎日受けるということです。

出発前、取材に応じた選手の1人は「通常とは異なる大会になるのでしっかり準備したい。日本の人たち、そして私たち自身の安全のためすべてのルールを守りたい。目標は金メダルです」と話していました。

チームを見送ったオーストラリア選手団のチェスターマン団長は「この1年余りは選手たちにとって非常に厳しい時間だったが、待ち望んでいた瞬間がようやく現実のものとなった。選手は自分たちの行動に大きな責任が伴うことを理解している」と述べました。

チームにはシンガポールでほかの選手も合流し合わせておよそ30人が1日、成田空港に到着する予定です。

オーストラリア代表は過去4大会で銀メダル1回、銅メダル3回を獲得した強豪で、7月21日に福島市の県営あづま球場で行われる開幕戦で日本と対戦します。

「意義は半分以上なくなった…」子どもとの交流はオンラインで

事前合宿を行う群馬県太田市は学校の部活動などでソフトボールが盛んで、オーストラリア代表はこれまで世界選手権など国際大会の前にキャンプ地として滞在し、選手たちが市内の小学校を訪問するなど交流を続けてきました。

こうしたことがきっかけで太田市は3年前、東京オリンピック・パラリンピックのホストタウンとなりました。

受け入れを前に太田市の清水聖義市長は31日の会見で「選手が気持ちよくプレーできるように準備していきたい。日本が金メダル、オーストラリアが銀メダルをとれればいい」と述べました。

そして、当初計画していた地元の子どもたちとの交流はオンラインでの実施を検討しているとして「意義は半分以上なくなってしまったが、今後のつながりを続けるためにも最大限努力していきたい」と述べました。

一方、オーストラリア代表の選手やスタッフ全員が来日前にワクチンの接種を済ませているのに対し、選手たちが滞在するホテルの関係者などが接種していないことについて清水市長は「関係者にワクチンを接種したほうがいい」と述べ、自治体が事前合宿を受け入れる際の課題で早めの接種を検討すべきだと指摘しました。

選手たちの感染対策は

選手やスタッフおよそ30人は1か月半にわたって市内の野球場を拠点に練習するということですが、感染対策はどのようになっているのでしょうか?

(太田市とオーストラリアの競技団体によると)
▽選手・スタッフ全員が来日前にワクチン接種済み
▽滞在期間中、毎日PCR検査を実施
▽野球場は原則、関係者以外の立ち入りを制限
▽選手たちは宿泊先のホテルと野球場の往復以外は外出を自粛
▽日用品などは希望があれば市の職員が調達
▽歓迎のセレモニーは行わない

ホテルの感染対策は

宿泊するホテルでも感染対策など受け入れの準備が進められています。

▽選手・スタッフはホテルの8階と9階を貸し切って宿泊
▽3階のフロアを共有スペースとして使用 一般の宿泊客がいるほかのフロアには立ち入らない
▽3階のフロアには食事とミーティング、ウエイトトレーニングなどの器具を置く部屋をそれぞれ用意
▽ホテルへの出入りは裏口を使用
▽エレベーターは一般の宿泊客が乗っている場合には利用しない
▽選手たちの滞在期間中はホテル従業員も毎日、PCR検査を実施

ホテルの葛生直樹マネージャーは「感染対策を徹底し、スタッフも感染しない、選手たちにも感染させないよう準備を進めていきたい。選手の皆さんには安心してホテルで過ごしてもらえればと思います」と話していました。

自治体で中止相次ぐ…

東京オリンピック・パラリンピックでは海外選手の事前合宿や交流を行うホストタウン事業に全国528の自治体が登録しているほか、そのほかにも事前合宿を個別に予定している自治体もあります。

しかし、NHKが全国の都道府県などに取材したところ海外選手の事前合宿や交流の受け入れについて5月17日の時点で全国54の自治体で中止され、その後も増え続けています。

受け入れ中止 多くは相手国側からの申し出

海外選手の事前合宿などの受け入れを中止した自治体の多くは相手の国や地域からの申し出によるものでした。その主な内容です。

▽ロシアの体操チーム
新潟県加茂市でことし7月に事前合宿を行う予定でしたが、移動や宿泊の際の感染を懸念してぎりぎりまで国内で調整し直接東京に入ると4月に市に連絡しました。

▽アメリカの陸上チーム
千葉県の成田市、佐倉市、印西市で予定していた事前合宿を選手の安全面への懸念から中止を決めました。

▽ベトナム
・長崎県の長崎市、諫早市、大村市
・東京・国分寺市
・北海道釧路市で
事前合宿を予定していましたが「世界的な感染状況を重く見て合宿は行わない」などと、自治体側に取りやめを連絡しています。
一方、それ以外では感染拡大が収束する見通しが立たないことや、ワクチンの集団接種の会場に使用することなどから、自治体側から中止を申し出たり両者で協議したりしたケースでした。

専門家は

東京女子体育大学 笹生心太准教授(スポーツ社会学が専門)
・事前合宿の中止が大会に与える影響について
「オリンピックの基本理念は国際交流を通じて世界平和に貢献することで、ホストタウンはいちばん真ん中の事業だった。コロナ禍が起きたせいで直接の交流ができなくなったのはかなりのマイナスだ」
・競技について
「大会前の調整は選手にとって大きなインパクトがあり、それがダメになるなら不利が大きすぎる。日本に近く時差の少ない国が有利になることが起きうるので競技の平等性に問題が生じる。世界最高の競技を見せることができないと思われて大会への期待感がさらにしぼむ事態も十分ありうる」

加藤官房長官「対策をしっかりと講じていただく」

加藤官房長官は31日午後の記者会見で「太田市では感染症対策のための選手受け入れマニュアルを作成しており、受け入れる選手などについては用務先を限定するなどの行動管理を行うとともに受け入れ自治体の関係者にも一定の行動管理や健康管理、検査をするなど感染症対策をしっかりと講じていただくこととしている。オーストラリアのチームは初戦で日本チームと対戦すると承知していて、太田市でしっかりと調整を行い最高のパフォーマンスを発揮していただきたい」と述べました。