菅首相会見「来月中には一般接種を開始」

菅総理大臣は、9都道府県の緊急事態宣言を延長すると決めたことを受けて、今夜、記者会見し、来月中には、高齢者への接種の見通しがついた市町村から、基礎疾患がある人を含め、広く一般の人への接種を始める考えを強調しました。また、東京オリンピック・パラリンピックについて、安全・安心な大会の実現に改めて意欲を示しました。

菅総理大臣は、記者会見で「先ほど、新型コロナ対策本部を開催し、北海道、東京都、愛知県、京都府、大阪府、兵庫県、岡山県、広島県、福岡県について、緊急事態宣言を延長し、来月20日までとすること。また、埼玉県、千葉県、神奈川県、岐阜県、三重県について、『まん延防止等重点措置』の期間を延長して、同じく来月20日までとすることを決定した」と述べました。

「警戒すべきは変異株の影響」「水際対策を徹底」

菅総理大臣は「警戒すべきは変異株の影響だ。いわゆる英国株の割合は全国で8割を超え、いわゆるインド株については、海外渡航歴のない方からも確認されている。強い感染力を持つとされる変異株への置き換わりが進む中で、実施される対策が感染者数の減少につながるまで以前より長い時間を必要としている」と述べました。

その上で「変異株への監視を強化する。インド、パキスタン、およびネパールからの入国者に対しては、これまで入国後6日間としてきた待機措置を強化し、本日から入国後10日間に延長するなど、水際対策を徹底する」と述べました。

「依然、予断許さず」

また「全国の新規感染者数は全体として、減少に転じる一方、依然として増加傾向にある地域もあり、予断を許さない状況だ」と指摘しました。

そのうえで「関西では、感染者数の減少が続いているが大阪と兵庫を中心に病床はひっ迫し、非常に厳しい状況にある。首都圏では、感染者数は横ばいから減少傾向にあるが、東京では依然として『ステージ4』の水準にとどまっている。その他の宣言地域でも高い水準にある。また、全国の重症者数や死亡者数は、高止まりの状況が続いている。こうした状況の中で、来月20日までの延長を判断した」と述べました。

「感染防止とワクチン接種という『二正面作戦』」

さらに菅総理大臣は「今月末を緊急事態宣言の期限としてみなさまにご協力をいただき、対策を進めてきたが、この結果、新規感染者数が減少したとはいえ、宣言を解除する段階にまでには至っておらず、ワクチン接種を加速化することと合わせて、今しばらく感染を抑えるための対策を徹底する必要がある」と述べました。

その上で「たび重なる延長は、大変心苦しいかぎりだが、これからの3週間は、感染防止とワクチン接種という『二正面作戦』の成果を出すための、極めて大事な期間と考えている。みなさまのご理解とご協力を心よりお願いを申し上げる」と述べました。

また「感染を封じ込めながら、ワクチン接種を加速するという、これまでにない、新たな挑戦に立ち向かい、一日も早く安全・安心の日常を取り戻すために、内閣の総力を挙げて取り組んでいく。私たちの力を結集すれば、必ずウイルスに勝つことができる。私自身その先頭に立ってやり遂げていく。改めて、みなさま方のご理解とご協力をお願いする」と述べました。

「引き続き飲食店の時間短縮を」

また「感染防止の具体策だが、引き続きそれぞれの自治体と協力し、飲食店の時間短縮やお酒やカラオケの提供の停止などを改めて強くお願いする。かねてより飲食やお酒を伴う会合などでの感染リスクを下げることが対策の急所と指摘されてきた。長きにわたり、ご協力をいただいているみなさまに心から感謝を申し上げ、そのご労苦のほどを深くお察しする」と述べました。

「会食時もマスクの着用を」

またマスクの着用について「福井県では、4月の陽性者の98%の感染経路を特定し、その85%がマスクなしの会話が原因であると分析されている。飲食店などにおいても、会話をする際には、マスクを着用することが徹底され、極めて低いレベルに感染が抑えられている」と指摘しました。

その上で「会食時も含め、会話の際にはマスクの着用という基本的な対策が有効だ。改めて、マスク、手洗い、『3密』の回避という基本的対策の徹底をお願いする。たとえ変異株であっても、対策に変わりはない」と述べました。

ワクチン「来月末までに1億回分供給」

また、ワクチンについて「十分な量のワクチンはすでに確保している。来月末までに1億回分が供給され、9月までには、さらに1億回分を上回るワクチンが確保できる予定だ」と述べました。

ワクチン「来月中には一般接種を開始」

さらに「全国の現場では『打ち手の方々がまだ足りない』との声や、『接種費用には上乗せ支援が必要』などの意見が聞かれる。医師や看護師に加えて、新たに歯科医師に接種を行っていただいている。さらに、救急救命士と臨床検査技師が接種を行うことができるように、また薬剤師が診断にご協力いただけるよう取り組んでいる。国としてはしっかりと財政支援を行う」と述べました。

そして「できることは全てやる。1日100万回を目指して、日々の接種回数を増やし、まずは希望する高齢者の接種にメドをつける。そして来月中には、予約状況などを踏まえ、高齢者への接種の見通しがついた市町村から、基礎疾患がある方々も含め、広く一般にも接種を開始する。あわせて、みなさんの職場や大学でも接種を進めていく」と述べました。

ワクチン「協力の輪の広がりを実感」

また「医療従事者を対象とした接種に加え、ほぼ全国の市町村で高齢者への接種が開始され、接種回数は、1日に40万回から50万回となり、これまでに1100万回を超える接種が行われた」と述べました。

その上で「関係者のみなさんの協力の結果、全国の大多数の市区町村で、7月末までに高齢者の接種を終える予定となっている。全国の自治体や医療関係者に心から感謝申し上げる。1日も早く接種を進めて、新型コロナに打ち勝つ、そうした協力の輪が全国に広がりを見せていることを実感している」と述べました。

ワクチン「6月中旬以降、1日100万回の体制」

「諸外国の例を見ても、ワクチンが感染防止の切り札だ。政府としては、ワクチン接種に全力をあげているところで、接種の際の打ち手がいないという目詰まりの部分については、政府で、地方自治体のみなさんにも手伝いをさせてもらっている」と述べました。

その上で、1日あたりの接種回数について「現在は40万回から50万回だが、6月中旬以降は、打ち手も含めて、100万回に対応できるような体制ができてくると思う。このコロナとの戦いに私自身が先頭に立って、国民がかつての日常を取り戻すことができるように全力で取り組んでいきたい」と述べました。

ワクチン「高齢者の2回接種はプラス」

菅総理大臣は、記者会見で、ワクチン接種について「海外は1回目を早く打っていて、イギリスは1回目を5割の国民が打ったらものすごく効果が出て、今、マスクなしとなっている。日本は、まずは高齢者の方にしっかり2回打ちたい。これは分科会の尾身会長をはじめ専門家のみなさんからお話を伺った上で行っている。高齢者のみなさんが2回打つことのプラスは、かなり多くあるということは申し上げたい」と述べました。

ワクチン接種証明「加藤官房長官のもと検討」

菅総理大臣は、記者会見で、ワクチン接種を終えたことを示す証明書について「諸外国でさまざまな議論や動きがあることは、当然、承知している。導入には、感染予防効果や効果が持続する期間などに関する科学的評価のほかに、接種を受けない方への不当な差別につながらないようにすることなど、さまざまな論点がある」と指摘しました。

その上で「加藤官房長官のもと全体の調整を行う体制を、今、整えており、引き続き、国内外の議論や各国の状況を収集しながら検討を進めていきたい」と述べました。

支援策「収束まで着実に実施」

また支援策について「多くの方々がワクチンを接種し、感染が収束に向かい、飲食や宿泊がかつてのにぎわいを取り戻すまでの間、支援策を着実に実施していく。また、みなさまの切実な声に、引き続き、耳を傾けていく。今回の宣言の延長を踏まえ、雇用調整助成金については、7月も特別措置を継続することとし、雇用を守っていく。日本政策金融公庫などによる、実質、無利子・無担保融資については当面、年末まで延長することとし、事業者の資金繰りの支援に万全を期していく」と述べました。

宣言解除後の対応「その時点で判断したい」

また、記者団が、緊急事態宣言を解除する際に「まん延防止等重点措置」に移行する可能性があるか質問したのに対し「まずは宣言の対象地域において、飲食店でのお酒やカラオケの提供の停止やテレワークの促進などの対策を引き続き、徹底していきたい。その後の対応については、感染状況などを踏まえた上で、その時点で判断したい」と述べました。

五輪「来日人数の削減を徹底」

また「東京オリンピック・パラリンピックについて、多くの方々から不安や懸念の声があることは承知しており、そうした声をしっかり受け止めて関係者と協力しながら安全、安心の大会に向けて取り組みを進めている」と述べました。

その上で「具体策としてはまずは、来日人数削減の徹底で、当初、18万人の計画が7万8000人と半分以下に絞られており、さらに合理化を進める。また、大会に参加する選手や関係者には徹底した検査とワクチンの接種が行われ、宿泊先を制限し、移動は専用車両に限定する。一般の国民と交わることがないようにし、悪質な違反には資格剥奪を含め、徹底した行動管理を行う」と述べました。

そして「テスト大会も実施され、万全の感染防止に努めている。引き続きIOC=国際オリンピック委員会、IPC=国際パラリンピック委員会、大会組織委員会、東京都が調整を進め、国としてもしっかりと協力して国民の命を守っていく」と述べました。

五輪「国民の命と健康を守るのは政府の責務」

また、記者団が「IOC=国際オリンピック委員会のコーツ調整委員長は、『緊急事態宣言下でもオリンピックを開催できる』と明言したが、開催国の総理大臣として開催できると考えるか」と質問したのに対し、「国民の命と健康を守るのは、当然、政府の責務だ。まず当面は、緊急事態宣言を解除できるようにしたい」と述べました。

その上で「組織委員会、東京都と、水際対策をはじめ、国民の安全を守る立場から、しっかり協力をして進めていきたい」と述べました。