鉄道の運賃「時間帯や曜日で変わる」かも 新たな計画閣議決定

政府は、鉄道の運賃に時間帯や曜日で料金を変える「ダイナミックプライシング」の導入を検討するなど、今後の公共交通政策の方向性をまとめた計画を28日、閣議決定しました。

閣議決定された「第2次交通政策基本計画」は、今後5年間の公共交通が目指す方向性をまとめたものです。

それによりますと、▼大都市の鉄道の混雑を緩和するため、鉄道の運賃に時間帯や曜日などで料金を変える「ダイナミックプライシング」の導入を検討します。

▼タクシーについては、誰もが使いやすいようにして利用を促進するため、定期券や回数券のような「一括定額運賃」や、利用者が相乗りして1人当たりの料金を下げる仕組みを進めるとしています。

また▼駅のエレベーターやエスカレーターを増やすなどバリアフリーを進める費用を鉄道の運賃に上乗せして、幅広い利用者に負担してもらう制度の導入を目指します。

このほか▼地域の複数のバス会社が重複する区間の運行を減らして効率を高める「共同経営」を特例として認めるなど、厳しい経営環境にある地域の公共交通機関の支援に力を入れるとしています。

こうした制度や取り組みによって、新型コロナウイルスの感染拡大をきっかけとする社会や利用者のニーズの変化にあわせた公共交通機関の対応を促していくことにしています。

国土交通省は年内に実証実験行い「使い勝手」など検証へ

時間帯や曜日などによって運賃が変わる「ダイナミックプライシング」が鉄道やタクシーで導入されれば、私たちの暮らしにも大きな影響を及ぼす可能性があります。

鉄道の場合は、都市部の同じ区間でも、通勤時間帯の運賃を高く、それ以外の時間帯を安くすれば、混雑の緩和や、テレワークなど多様な働き方を加速させる効果が期待されます。

鉄道会社にとっても、ピーク時の需要に対応するために保有してきた車両を減らせるなど、コストを削減できるメリットがあります。

一方で、通勤時間帯の変更やテレワークが難しい企業や利用者にとっては、運賃の負担が増えるおそれもあります。

「ダイナミックプライシング」はJR東日本やJR西日本が導入を検討していますが、ICカードや自動改札などのシステムの改修や、国による運賃の認可に時間がかかるため、導入は早くても数年先になる見通しです。
一方タクシーでは、雨の日や終電後など利用者の需要が高い状況では運賃を上げ、晴れの日や平日の日中などは割安にすることが検討されています。

利用者は、スマートフォンなどで予約をする際に、事前に運賃を確認できるようにすることを検討します。

ただ、▼高齢者が通院などで利用する際に、負担が増えたり、▼地震や台風などの災害時に大幅に料金が上がるおそれもあります。

このため、国土交通省は年内に運賃の変動幅を定めるなどして実証実験を行って、利用者の使い勝手や負担、事業者の売り上げの変化などを検証することにしています。

赤羽国交相「全体の行動変容と一体でなければ効果発揮できず」

鉄道の運賃に「ダイナミックプライシング」の導入を検討することについて、赤羽国土交通大臣は閣議のあとの記者会見で「ピーク時間帯の利用者を分散させて、混雑緩和を図ることが期待される一方で、時差出勤やテレワークの推進など社会全体の行動変容と一体でなければ効果はなかなか発揮できず限定的になるのではないか」と述べました。

そのうえで「ピーク時間帯しか利用できない人たちへの配慮をどうするかといった課題が残されている。多くの利用者に多大な影響を及ぼす観点から、導入の可否も含めて利用者目線に立って十分に検討を行っていく必要がある」と述べ、利用者への影響を多面的に考慮しながら検討を進める考えを強調しました。

駅のバリアフリー化に向けた費用の「運賃上乗せ」の検討も

今回閣議決定された「第2次交通政策基本計画」では、ダイナミックプライシング以外にもさまざまな交通課題について検討することになっています。

このうち駅のバリアフリー化については新たな制度の導入を目指すとしています。

エレベーターやエスカレーターなどの駅のバリアフリーの設備は、設置に多額の費用がかかることから、新たな制度では利用者の多い都市部の鉄道については、その費用を鉄道運賃に上乗せする「薄く広い負担」が検討されています。

地方鉄道については、国の補助金を重点的に配分して、設置のペースを早めるとしています。

上乗せ分がバリアフリー設備の設置に使われているかを国が確認する仕組みや、▼複数の鉄道会社にまたがる相互直通の列車を利用した場合の考え方など、具体的な方法や開始時期についてこれから検討を進めるということです。
国土交通省は、2025年度までに▼1日の利用者が3000人以上のすべての駅で段差の解消を進めるほか、▼転落を防ぐホームドアをこれまでの2倍の速さで設置を進めるなどの目標を定めていて、新たな制度で達成を目指すことにしています。

幅広い移動手段の普及促進へ「電動キックボード」を例示も

このほか新たな計画では幅広い世代に多様な移動手段の普及を促進するとして、欧米諸国の都市部で利用が広がっている電動キックボードが例示されています。

電動キックボードは、現在、運転免許が必要で車道しか通行できませんが、利便性や安全性を検証するため自転車専用レーンでの走行実験が各地で行われているほか、警察庁の検討会では、時速15キロ以下の速度しか出ないものは、運転免許は不要として、自転車専用レーンなども走れるようにすべきだとしていて警察庁は新たなルール作りを進める方針です。

国土交通省は、今後▽電動キックボードが走行する空間の確保や▽駐車スペースの整備などのまちづくりと一体となった安全性を確保する基本的な考え方について検討することにしています。