インド変異ウイルスへ置き換わりも警戒 都モニタリング会議

東京都の「モニタリング会議」で専門家は、新規陽性者は高い値で推移していて、今後はインドで見つかった変異ウイルスへの置き換わりが急速に進むことも想定されると指摘しました。また人の流れが大幅に増えれば、新規陽性者が急激に増加する可能性が高いとして、対策のさらなる徹底を呼びかけました。

会議の中で専門家は都内の感染状況と医療提供体制を、いずれも4段階のうち最も高い警戒レベルで維持しました。

新規陽性者の7日間平均は26日時点でおよそ588人で、およそ704人だった1週間前・今月19日時点の84%に減少したものの、依然として高い値で推移していると説明しました。

また、都内では感染力が強い「N501Y」の変異があるウイルスが8割を超えて、流行の主体が置き換わったほか、インドで見つかった「L452R」の変異があるウイルスのクラスターも初めて確認されたことを報告しました。

そのうえで海外の状況を鑑みると、今後はインドで見つかった変異ウイルスへの置き換わりが急速に進むことも想定されると指摘しました。

そして人の流れや、人と人との接触機会が大幅に増えれば、新規陽性者が急激に増加する可能性が高いとして、感染拡大を徹底的に抑え込む必要があると呼びかけました。

一方、それぞれ26日時点で入院患者は2182人、重症の患者は70人で、専門家は第3波のピーク前の去年12月下旬とほぼ同じで、高い値だと指摘しました。

そのうえで、医療機関は病床がいまだ厳しい状況の中、ワクチン接種にも人材を充てていると説明しました。

そして流行の主体が変異ウイルスとなり、医療提供体制のひっ迫が危惧されるとして、厳重な警戒が必要だと呼びかけました。

「N501Y」変異ウイルス 検査での陽性率初の8割超

モニタリング会議では、今月16日までの1週間に都内で行われた変異ウイルスのスクリーニング検査で、感染力が強い「N501Y」の変異があるウイルスの陽性率が初めて80%を超えて81.5%まで上昇したことが報告されました。

前の週からは6.6ポイントの増加で、都内で流行の主体が「N501Y」の変異があるウイルスに置き換わっているとしています。

また、インドで見つかった「L452R」の変異があるウイルスに感染した人は、今月23日までの1週間で新たに6人確認され、都内での感染確認は合わせて19人になりました。

新たに感染が確認された6人のうちの5人は同じ場所に住み、その場所で感染が広がったとみられていて、都内で初めて確認されたクラスターです。

都の「専門家ボード」の座長を務める東北医科薬科大学の賀来満夫特任教授は「『L452R』の変異があるウイルスはまだ市中に広がっているとは言えない状況だが、『N501Y』の変異があるウイルスよりも感染力が強い可能性があり強い警戒が必要だ」と述べました。

専門家“人出増続くとリバウンド可能性大に”

モニタリング会議で、東京都医学総合研究所社会健康医学研究センターの西田淳志センター長は、都内7つの繁華街の人出は先週までの2週間でさらに増加していてこのまま増えると早い段階で感染の再拡大「リバウンド」が起きる可能性が高いと指摘しました。

西田センター長によりますと、都内7つの繁華街の人出は、先週までの2週間で、夜間がおよそ20%、昼間がおよそ17%、それぞれ増加したということです。

また、去年4月からの1回目の緊急事態宣言中の最も低い値と比べると、今月22日までの先週1週間の人出は夜間と昼間ともに2.25倍だということです。

西田センター長は「大型連休以降、人出の増加が続いていて、今週に入ってからもさらに増加している」と指摘したうえで、このまま増加傾向が続くと早い段階で感染の再拡大、「リバウンド」が起きる可能性が高いと、強い警戒感を示しました。

そのうえで、緊急事態宣言中であるという認識と緊張感を維持し、人出の増加を徹底して抑え込んでいく重要な局面だと指摘しました。

専門家「緩めず警戒して対応を」

モニタリング会議のあと都の「専門家ボード」の座長で東北医科薬科大学の賀来満夫特任教授は、感染確認が減っている今の状況がピークアウトと言えるかどうか問われると、「もう少し様子を見ないと分からない。人流が増えてきているので、ピークアウトしたように見えても実際にはしてなくて、再び増加するおそれがあるのでしっかりとデータを見ていかなければいけない。変異ウイルスの影響をしっかり考えていく必要がある」と述べました。

また、対策の措置を緩めることによる感染の影響については「N501Yをしのぐ勢いで今後、L452Rの変異があるウイルスが広がっていく可能性がある。個人個人の感染予防をより徹底するとともに、人流を抑制し、人との接触をできるだけ下げて総合的に対応していかないと、本当に感染が広がってしまうのではないか。緩めることなく警戒して対応することが必要だと思う」と述べました。

小池知事「今がこらえどころ 対策をしっかり」

会議のあと、東京都の小池知事は「宣言の延長をこれまでも何度か経験してきたが、今がこらえどころだ。皆さんの協力が水ほうに帰すことはあまりにももったいない。ワクチンの接種が始まったばかりであることを考えると、皆さんとともに感染対策をしっかりすること以外に方法はない」と述べました。

モニタリング会議 専門家の分析結果

27日のモニタリング会議で示された都内の感染状況と医療提供体制についての分析結果です。

感染状況

新たな感染の確認は、26日時点の7日間平均が587.7人となり、1週間前・今月19日時点の703.6人と比べておよそ115人減少、増加比はおよそ84%でした。

ただ、専門家は依然として高い水準で推移していると分析したうえで、「第3波のピーク前の去年末、クリスマスごろとほぼ同じ数で、感染力の高い変異ウイルスの影響を踏まえると、新規陽性者を徹底的に減らす必要がある」と指摘しました。

今月24日までの1週間に感染が確認された人の年代別の割合は、20代が最も多く29.9%、次いで30代が18.1%、40代が14.9%、50代が12.1%、10代が6.2%、60代が5.7%、70代が5.0%、10歳未満が3.8%、80代が3.2%、90代以上が1.1%でした。

専門家は、20代から40代を合わせると新規陽性者のおよそ63%を占めているほか、20代だけをみると先週に引き続きおよそ30%を占めていて、若い世代の感染が目立つ状況に危機感を示しました。

65歳以上の高齢者は、今週は502人、割合は11.6%で前の週と比べて割合はほぼ横ばいでした。

感染経路が分かっている人のうち、同居する人からの感染が55.3%と最も多く、次いで職場が14.4%、高齢者施設や病院、保育園や学校といった施設での感染が13.6%、会食が3.9%でした。

専門家は「連休の影響で減少した職場での感染と施設での感染の割合が再び上昇した。職場、施設、会食など多岐にわたる場面で感染例が発生していて、感染に気付かずにウイルスが持ち込まれているおそれがある」として警戒を呼びかけました。

また、施設内での感染事例では保育園や大学の運動部、寮などでのクラスターの発生も複数、報告されているということです。

今月24日までの1週間の新規陽性者4318人のうち、16.7%に当たる722人は無症状でした。

「感染の広がりを反映する指標」とされる、感染経路が分からない人の7日間平均は26日時点で355.7人で、前の週からおよそ72人減りました。

増加比も26日時点で83.1%と2ポイント低下しました。

ただ、専門家は「減少しているが感染経路が追えない潜在的な感染拡大が危惧される」と懸念を示しています。

年代別で感染経路が分からない人の割合を見ると、20代から50代で60%を超えていて、専門家は「保健所の積極的疫学調査による接触歴の把握が困難な状況が続いている。その結果、感染経路のわからない人とその割合も高い値で推移している可能性がある」と指摘しています。

医療提供体制

検査の「陽性率」は26日時点で5.5%となり、前の週・今月19日時点と比べて0.3ポイント低下し横ばいでした。

入院患者は、26日時点で2182人となり、2361人だった前の週の今月19日時点と比べて179人減少しましたが、専門家は「高い値で推移している」として厳重な警戒が必要だと指摘しています。

そのうえで、「流行の主体がN501Yの変異があるウイルスになり、医療提供体制のひっ迫が危惧される。さらに、インドで増加しているL452Rの変異があるウイルスの感染状況にも警戒する必要がある」と呼びかけています。

入院患者を年代別でみると、60代以下が全体のおよそ65%を占めています。

最も多いのは50代と70代でそれぞれおよそ17%です。

都の基準で集計した26日時点の重症患者は、今月19日時点より3人減って70人でした。

重症患者を年代別に見ると、
▽40代が6人、
▽50代が12人、
▽60代が20人、
▽70代が24人、
▽80代が7人、
▽90代が1人でした。

重症患者数に占める60代以下の割合は依然として高く、およそ61%に上っていて、専門家は「肥満や喫煙歴のある人は若年であっても重症化リスクが高い」として警戒を呼びかけました。

このほか、人工呼吸器やECMOの治療がまもなく必要になる可能性が高い状態の人は26日時点で283人で、先週の時点から5人増えました。

また、今月19日時点と26日時点を比べると、自宅で療養している人は508人減って1395人、都が確保したホテルなどで療養している人は124人減って1052人、医療機関に入院するか、ホテルや自宅で療養するか調整中の人は42人減って871人でした。

「療養が必要な人」全体の数は26日時点で5500人で853人減りましたが、専門家は「高い水準で推移している。実効性の高い感染拡大防止対策を徹底し、すべての療養者の増加を全力で抑える必要がある」としています。

また、今月24日までの1週間では、新型コロナウイルスに感染した59人が亡くなりました。

前の週より21人増えています。

59人のうち、56人が70代以上でした。