西武園ゆうえんち コロナ禍で再出発の舞台裏

西武園ゆうえんち コロナ禍で再出発の舞台裏
開業70年を超える埼玉県所沢市の「西武園ゆうえんち」が、5月19日にリニューアルオープンしました。改装のテーマは、懐かしさと“おせっかい”が売りの「昭和レトロ」です。感染対策との両立という難題を抱えながらの再出発の舞台裏に迫りました。(経済部記者 加藤ニール)

昭和にタイムスリップ!

入場ゲートをくぐると、真っ先に目に飛び込んでくるのが、リニューアルの核として作られた「夕日の丘商店街」。

昔ながらの八百屋や魚屋、駄菓子屋など30の店が建ち並び、店主たちの威勢のいいかけ声が飛び交います。ラムネやポン菓子、揚げパンを買いながら、紙芝居などのパフォーマンスを楽しめるエリアは、懐かしい昭和の時代の活気に満ちあふれています。

“老朽化”を逆手に!

改装のテーマを“昭和レトロ”に設定したきっかけは、マイナスをプラスに変える逆転の発想でした。

昭和56年導入の「バイキング」に、昭和57年導入の「観覧車」。たこの足に乗って揺られる「オクトパス・アドベンチャー」も、40年近くの歴史を持つ風格たっぷりのビンテージものです。

これらのアトラクションが導入された昭和60年代、来場者は年間190万人に達しましたが、近年は資金面の問題で新しいアトラクションを導入できず、来場者数は4分の1近くにまで落ち込んでいました。

ライバルの遊園地が最新のアトラクションを打ち出す中、西武園ゆうえんちには、いつしか”古い”というイメージがついていたといいます。

リニューアルの中心メンバーの1人、平成生まれの高橋茜さん(28)は、この古いイメージを逆手にとれないかと行き着いた結果が“昭和レトロ”の戦略だといいます。
高橋さん
「来場者に調査をすると、“古い”というイメージを持つ人が多かった。新たに設ける商店街で、昭和の世界を体験してもらうことで、そのほかのアトラクションも含めた園全体の見え方が変わり、温かみを感じてもらえるようにと考えた」

昭和を知らない子どもたちに

ターゲットには、昭和を知る中高年だけでなく、昭和を知らない若い世代も含まれます。

その仕掛けの1つが、遊園地内での支払いの仕組み。急速に普及したキャッシュレスかと思いきや、さにあらず。
導入したのは、遊園地の中だけで使える独自の“紙幣”です。園内の「交換所」で、手持ちの日本円を「西武園紙幣」に両替してもらう仕組みです。

これによって、例えばコロッケは1つ「30園」。物価も昭和の感覚に近づけます。

スマホ決済が日常で、財布はあまり持ち歩かない若い世代にとっては、紙幣での買い物も新鮮な体験になりえると考えました。

濃密さと感染対策の両立

リニューアルの戦略が固まっていく中、突如持ち上がった難題が新型コロナでした。

“昭和レトロ”が目指す接客での濃密なコミュニケーションと、感染対策をいかに両立させるか。オープンを前に、4月末から15日間にわたって行われた運営テストでは、試行錯誤が繰り返されました。

対策の1つは「来場者の分散」。
派手な音をたてるポン菓子作り、バナナのたたき売りに紙芝居。さまざまなパフォーマンスを同時多発的に行うことで来場者の密集を防ぐ作戦です。

もう1つの対策が「心の距離を近づける接し方」。
商店街の店主たちは、一定の距離を保ちながら、来場者一人一人の服装や属性にあわせて全く違うことばをかけて、ふれあいを楽しんでもらおうというねらいです。

運営テストでは思わぬ事態も起こりました。

閉園間際の駄菓子屋に、お土産を買い求める人が密集してしまったのです。急きょ、向かいの雑貨屋さんでも駄菓子を販売することで密集を解消させていました。
高橋さん
「新型コロナの影響で、物理的な距離をとらなければならない中だからこそ、来場者との心はつながっていられるように、そんな場所になっていければいいなと思います」

制約が解除できる日は…

遊園地やテーマパークにとって、新型コロナの影響は深刻で、長野県の「チロルの森」は去年11月に閉園。
福岡県の「かしいかえん」も12月に営業をやめることになりました。

リニューアルした西武園ゆうえんちも、1日の入場者を5000人以下に絞ってのスタートを余儀なくされましたが、スタッフとのやり取りを楽しむ来場者の笑顔が強く印象に残りました。

コロナによる制約が解除できる日がいつ訪れるのか、まだ見通しは立ちませんが、その中でも来場者に楽しんでもらおうという模索を今後も追っていきたいと思います。
経済部記者
加藤ニール
平成22年入局
静岡局、大阪局を経て
現在、国土交通省担当