変異ウイルス “治療薬には効果 早期投与が重要” 専門家

国内で広がっている感染力が高い変異した新型コロナウイルスで重症化したケースでは、重症化に至るまでのスピードが通常のウイルスより速いとされています。これについて新型コロナウイルスの治療に詳しい愛知医科大学の森島恒雄客員教授は「変異ウイルスは、ウイルスの突起が変異をしていて、人の細胞にくっつきやすいため肺の中に入ると多くの肺の細胞に感染してしまう可能性が高く、重症化しやすい。多くの細胞に感染する過程でサイトカインストームと呼ばれる過剰な免疫の反応で炎症が起きて、症状が悪化していく」と話しています。

そのうえで国内で認められている抗ウイルス薬の「レムデシビル」、炎症を抑える「デキサメタゾン」と「バリシチニブ」の3つの治療薬について、「変異ウイルスは細胞の中で増殖する過程は従来のウイルスと変わらないとみられている。レムデシビルは細胞の中でウイルスが増殖するのを防ぎ、また、ほかの2つの治療薬については免疫の異常な反応を抑え調節する薬なので、変異ウイルスの治療でも効果があると考えられる」としています。

ただ、変異ウイルスへの感染では重症化するスピードが速いとして「ウイルスの増殖を抑えるレムデシビルをできるだけ早いタイミングで使っていくことが特に大事になってくる。また、いっぺんにたくさんの細胞が感染し、非常に激しいサイトカインストームが起きてしまうため、デキサメタゾン単独の使用では抑えにくくなっているとも言われていて、バリシチニブと組み合わせて免疫の暴走を抑える治療を行うことも重要だ」と話しています。

さらに森島客員教授は、インドで広がる変異ウイルスについてはまだ分からないことが多いとしながら、治療薬には効果があると見られるものの、細胞への結合のしやすさを考慮して、イギリスで見つかった変異ウイルスに対してと同様の考え方で治療を行う必要があるのではないかと指摘しました。