ビジネス特集

コロナ禍でプラごみ増えていませんか?

新型コロナウイルスをきっかけに世界的に利用が増えている、料理の宅配サービス。便利なサービスですが、プラスチック容器のごみの増加につながっているという指摘もあります。このプラスチック容器のごみを減らそうと、官民を挙げて取り組んでいるのがフランスです。(ヨーロッパ総局・小島晋記者)

プラごみ削減へ、憲章

ことし2月、フランス政府は、料理の大手宅配サービスや関連企業など、19社との間で、プラスチックごみの削減に向けて協力するという憲章に調印しました。

具体的には、企業は来年1月1日までに使い捨てプラスチックごみを半減させ、再来年の1月1日までには70%以上削減させることなどを目指すとしています。
フランス政府の試算では、2019年時点で、料理の宅配サービスで少なくとも年間6億個にのぼる使い捨てプラスチック容器が利用されました。

さらに、新型コロナウイルスの影響で飲食店が客を入れて営業することができなくなりました。このためフランス政府は、宅配サービスが増え、プラスチックごみはいっそう増えているとみています。その危機感が、料理の宅配サービスと協力を結ぶことにつながりました。

“リサイクル”可能な容器で

協力した企業のひとつ、料理宅配サービスの大手に話を聞きました。フランス国内で、およそ2万店の飲食店と契約を結び、宅配を請け負っています。新型コロナウイルスの危機をきっかけに顧客は倍近く増えたといいます。

「プラスチックごみが増えて大変ですね」と尋ねると、意外にも「そんなことはない」と否定されました。
その理由として見せてくれたのが顧客の飲食店に紹介しているという容器の販売サイトです。取り扱っているのはプラスチック容器ではなく、サトウキビなどを原料にしたリサイクル可能な容器や紙製の容器。

どのような容器を用意するのか、決めるのは飲食店側ですが、宅配サービス会社としても、リサイクル可能な容器の利用を勧めることで、プラスチックごみの削減につなげてきたという説明です。さらに、プラスチック容器の再使用、いわゆる「リユース」にも今後取り組んでいく予定だといいます。

“リユース”による削減も

「リユース」はどのように進められるのか。
すでに取り組みを始めている別の会社を取材しました。

この会社が手がけているのは、契約先の企業に食事を届ける宅配型の社食サービス。冷蔵庫のような自動販売機を契約先に設置し、そこに食事を届けます。

メニューには、「ラザニア」や「牛肉のビール煮込み」といったヨーロッパ風のものもみられます。利用者はスマートフォンをかざして自販機を開き、食事を取り出して支払いを済ませる仕組みです。
“美食の国”フランスでは、社食は重要な福利厚生です。

感染拡大の影響で多くの企業が在宅で働くようになり、出社する人の数は大幅に減りましたが、それでも、宅配型の社食サービスは伸びているといいます。食堂を経営する負担を避け、宅配サービスに切り替える企業が多いためです。

CEOは、食堂に比べて社員どうしの接触を減らせるというのもメリットだと受け止められていると話していました。
この会社では、容器の「リユース」を進めるため、耐久性のあるプラスチック容器への切り替えを図っています。

これまで使ってきたのはたい肥化できる紙製の容器で、環境への負荷は少なかったといいます。ただ、容器を覆う透明のカバーは見栄えの面などからプラスチックを利用していました。

これらの容器全体を、最大で100回は繰り返し使えるプラスチック容器に替えます。使ったあと、回収し、洗浄してまた使うという流れです。

返さなかったら600円!

新しい容器を使った「リユース」を、顧客の企業で2週間にわたって試験的に実施しました。

「リユース」を軌道に乗せるには、容器の返却率を高める必要があります。そこで、容器の底にQRコードをはりつけ、利用者には、食べ終わったあと機械で読み取ってから返却してもらうことにしました。容器を返却したかどうかを記録し、返却しなかった場合には5ユーロ、日本円で600円あまりを容器代として支払ってもらうのです。
実際に体験した人からは「簡単で環境にも良いから歓迎だ」といった声が上がっていました。

容器をすべて「リユース」のプラスチックに替えると年間20トンのプラスチックの削減につながるといいます。
ただ、「リユース」するとしても、最終的にプラスチックのごみが残るのではないか、という疑問がわきます。

この課題を解決しようと、フランスでは「リユース」に使える植物由来のプラスチック容器の開発を進めるスタートアップ企業もあります。

価格は普通の使い捨てプラスチック容器の10倍。それでも、繰り返し使うことでコストは回収できるといいます。これなら最終的な環境への負担も抑えられそうです。

定着するか、リユース

宅配型の社食サービスでは、企業の中に容器の回収場所を設けることで、返却率を高めることができます。

一方、個々の家庭への宅配サービスに導入する場合、店側が容器を回収するために再度、家庭を訪れるか、客側が注文した飲食店や特定の回収場所に出向いて返却するといったことが必要になります。先述のスタートアップ企業は、事前に容器代を負担してもらい、返却した場合にその分を返すという仕組みも検討しています。

「リユース」が進めば、洗ってまた使うという循環を地域の中で完結できるようになりますが、利用者側も一定の手間や負担を受け入れる必要がありそうです。

個人の権利や自由を尊重することの多いフランスで、使い捨てから、利用者側の協力も欠かせない繰り返し使う文化への転換が進んでいくか、これからも見ていきたいと思います。
ヨーロッパ総局記者
小島晋
2000年入局
国際部・ブリュッセル支局などを経て現在は気候変動の問題などを担当

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