コロナ禍 子どもは今もストレスが… 気持ちを楽にする方法は?

新型コロナウイルスの流行が子どもたちに及ぼす影響について国立成育医療研究センターのグループがアンケート調査を行ったところ、回答した子どもの50%以上が新型コロナの影響で先生や大人への話しかけやすさが減ったと答えるなど、悩みなどを相談しにくい状況が続いている可能性があることが分かりました。
こうした状況の中、子どもたちが考えた対処法とはどのようなものなのでしょうか?

この調査は国立成育医療研究センターのグループが新型コロナウイルスによる子どもたちへの影響について調べるため、高校生までの子どもやその保護者を対象にインターネットを通じて行ったもので、ことし3月末までのおよそ1か月半の間に合わせて3000人余りが回答しました。

このうち
▽新型コロナにより先生や大人への話しかけやすさが「とても減った」、「少し減った」と答えたのは合わせて51%と全体の半数以上に上り、子どもが悩みやストレスを相談しにくい状況が続いている可能性があるということです。

また、心の状態について複数回答で尋ねたところ
▽「コロナのことを考えると嫌だ」が42%
▽「すぐにイライラしてしまう」が37%
▽「最近集中できない」が32%などとなり
何らかのストレスを感じているとみられる子どもは全体の70%に上ったということです。
国立成育医療研究センターの半谷まゆみ医師は「長期にわたる影響がつもり、前よりもストレスが大きくなって心や体に変化が生じている子がいると推察される。少しのサインも見逃さず子どもが困っていたら一緒に解決する方向に持って行くことが大事だ」と話していました。

これまでの調査でわかったことは?

国立成育医療研究センターのアンケート調査は去年4月からこれまで5回にわたって行われていて、新型コロナが子どもたちの心や体に及ぼす影響を分析しています。これまでの調査結果の主な内容です。

1回目. ストレス感じる子は4分の3に

第1回目の調査が行われたのは初めての緊急事態宣言中の去年4月から5月末にかけてでした。7歳から17歳までの子どもや保護者を対象に、子どもたちの生活や健康について調査し、合わせておよそ8700人が回答しました。

子どもへのアンケートでは「コロナのことを考えると嫌な気持ちになる」とか「最近集中できない」など、何らかのストレスがあると回答した子どもは全体の4分の3に当たる75%に上りました。
また、ゲームやスマートフォン、テレビなどの画面を見る時間が1日4時間以上になったという子どもも、およそ3分の1に当たる31%に上りました。

生活リズムについても61%が起床時間がずれたと回答し、子どもたちの生活に影響が出ていることがわかりました。

2回目. コロナ感染 秘密にしたい

2回目の調査は休校期間が終わったあとの去年6月から7月下旬まで行われ、新型コロナウイルスに対する意識などについて調査を行い、およそ6800人から回答を得ました。
この中で自分や家族が感染した場合について質問したところいずれも複数回答で
▽「秘密にしたい」と回答した子どもは32%
▽「秘密にしたいと思う人が多いだろう」と回答した子どもが47%と
多くの子どもが感染を人に知られることに何らかの抵抗を感じていることが分かりました。

また、感染して治った子どもに対する意識については複数回答で
▽「あまり一緒には遊びたくない」と回答した子どもが22%
▽「遊びたくない人が多いだろう」と回答した子どもが40%となり
こうした子どもの意識が差別や偏見につながりやすいため注意が必要だとされました。

3回目. ストレス 夏休み明けも高いレベル

3回目は夏休み明けの去年9月から10月にかけて、子どものストレスなどについて調査が行われ、1万人余りが回答しました。

その結果「コロナのことを考えると嫌な気持ちになる」や「最近、集中できない」など、何らかのストレスを感じているとみられる回答をした子どもは73%に上り、緊急事態宣言が出されていた4月から5月にかけての同じ調査での75%からほとんど変わっていませんでした。
調査を行った半谷医師は「夏休みの短縮や秋の学校行事が中止される中で大人が思っている以上に子どもはストレスを感じていると思われる。保護者や先生は折に触れて子どもの話を聞くなど工夫が必要だ」と指摘していました。

4回目. 中等度以上のうつの症状も

去年11月から12月にかけて行われた4回目の調査では、子どもたちの心の健康や悩みについて4600人余りが回答しました。

調査では小学4年生以上を対象に子どものうつの症状を調べる尺度を使って
▽気分の落ち込みや
▽物事への興味など
過去7日間の心の状態を質問しました。
その結果
▽小学生の15%
▽中学生の24%
それに
▽高校生の30%に
中等度以上のうつの症状がみられたということです。

うつ症状の原因については検証できなかったということですが、調査を通じて新型コロナウイルスへの不安の声が寄せられているということで、グループでは新型コロナウイルスによる学校や生活の変化が影響している可能性があるとしています。

5回の調査を分析

「コロナ考えると嫌だ」 横ばい

5回にわたって行われてきた調査。
心の状態について尋ねた質問で「コロナのことを考えると嫌だ」と答えた子どもは
▽1回目の調査では39%
▽2回目の調査では41%
▽3回目の調査では42%
そして
▽今回の調査でも42%と
ほぼ横ばいで推移しています。

「すぐにイライラしてしまう」 1年前より高い

また「すぐにイライラしてしまう」と答えた子どもは
▽1回目が34%
▽2回目が28%
▽3回目が30%
そして
▽今回は37%と
1年前より高くなっています。

「自分や家族を傷つけてしまう」 今回の調査で上昇

「自分や家族を傷つけてしまう」と答えた子どもも
▽1回目が10%
▽2回目が9%
▽3回目が7%だったのに対し
▽今回の調査では20%と上がっていました。

こうした何らかのストレスを感じている子どもの割合は調査では継続して全体の70%を超えていました。

なお、これらの調査では1回ごとに対象となる子どもは異なっているということです。

半谷医師は「1回目の調査から子どもたちのストレスの状態は改善していない傾向だ。コロナの影響が思った以上に長引き積もってきた負担が心や体の健康に響いてきている可能性がある。コロナ自体の収束を個人レベルでどうにかするのは難しいが、制限を和らげて子どもをのびのびとさせてあげることは家庭や学校でできるのではないか」と話しています。

子どもが考えた! 気持ちを楽にする工夫って?

グループではアンケートに参加した子どもたちからストレスを感じたときの対処法についても聞き取り「こどもが考えた気持ちを楽にする23のくふう」としてまとめ、公表しています。

「だれかに話す 聞いてもらう」「声に出す」

このうちの1つが「だれかに話す 聞いてもらう」です。
子どもたちから寄せられた意見では
▽「友達にぐちる」(高校1年生 男子)
▽「家族に聞いてもらう」(小学5年生 女子)
などがありました。

「声に出す」という方法もあります。
子どもたちからは
▽「クッションに向かってさけぶ」(中学1年生 女子)
▽「動画を撮って、言いたいことを全部言う」(小学5年生 女子)
などの意見がありました。

「書き出す」「だきしめる あまえる」

「書き出す」という方法も提案されています。
子どもたちからは
▽「もやもやしていることを全部紙に書く」(小学3年生 女子)
▽「日記に書く」(小学4年生 男子)
などの意見がありました。

「だきしめる あまえる」ことも提案されています。
子どもたちからは
▽「ママとパパにぎゅーしてもらう」(小学1年生 男子)
▽「好きなぬいぐるみをだっこする」(小学1年生 男子)
などの意見がありました。

「泣く わらう」

そして「泣く わらう」という方法、子どもたちからは
▽「安心できるところで泣く」(小学2年生 女子)
▽「マンガやテレビでひたすら笑う」(小学2年生 男子)
などの意見がありました。
このほか「動画を見る」「運動する 体を動かす」「外出する 場所をかえる」「考える」「考えない」など、子どもたちが考えたさまざまな方法が挙げられています。

「こどもが考えた気持ちを楽にする23のくふう」は、国立成育医療研究センターのウェブサイトに掲載されています。