ワクチン大規模接種センター 東京と大阪で接種始まる

政府が東京と大阪に設置した新型コロナウイルスワクチンの大規模接種センターで、24日から接種が始まりました。政府は2か所を合わせて1日で最大1万5000人程度の接種が可能になるとしていて、センターの開設を接種の加速化につなげたい考えです。

政府の大規模接種センターは東京 大手町と大阪市北区に設置され、いずれも午前8時すぎにワクチンの接種が始まりました。

センターでは先週、承認されたばかりのアメリカのモデルナのワクチンが使われます。
東京の会場では24日から今月30日までは東京23区に住む高齢者が接種の対象になっていて、訪れた人は本人確認などの受け付けを済ませ医師の資格を持つ自衛隊員の問診を受けたあと、接種を受けるためのブースに入りました。
そして、名前や体調に問題がないことを看護師に伝え、接種を受けていました。

接種を受けた渋谷区の78歳の女性は「自治体の接種は予約の電話がなかなかつながらないので、こちらで接種することにしました。最初は自分で予約しようと思いましたがインターネットの操作は難しく娘が代わりに予約してくれました。接種できてとてもほっとしています」と話していました。

防衛省によりますと、センターではこれまでのところ大きなトラブルは起きておらず、24日の接種は午後8時すぎに終わったということです。

大規模接種センターには医師や看護師の資格を持つ自衛隊員が東京と大阪を合わせておよそ280人派遣されているほか、民間の看護師およそ200人の協力も得ています。

24日の接種を予約したのは東京で5000人、大阪で2500人で、政府は来週には1日に最大で東京で1万人程度、大阪で5000人程度の合わせて1万5000人程度の接種が可能になるとしています。

7月末までに高齢者の接種を完了するという目標の達成に向け、政府はセンターの開設を接種の加速化につなげたい考えです。

2回目接種の日程どう決まる?

政府の大規模接種センターでは、1回目の接種を終えた後、会場内で2回目の接種の日程が伝えられることになっています。

防衛省によりますと、その際、1回目の接種の28日後から38日後までの間で日程を提示しているということです。

大規模接種センターで使われるモデルナのワクチンは、1回目の接種のあと、通常、4週間空けて2回目の接種を受けることになっています。

厚生労働省によりますと、WHO=世界保健機関などは、1回目の接種から4週間を超えた場合でも、6週間後、つまり42日後までに2回目の接種を受けることを目安として示していて、防衛省としてはこの目安を踏まえ、2回目の日程を設定しているということです。

加藤官房長官「1日も早いワクチン接種に全力」

加藤官房長官は午前の記者会見で「初日の接種がスタートし現在のところ順調に進んでいると聞いている。1人でも多くの皆さんに1日も早くワクチンを接種していただけるよう、政府としても引き続き全力を挙げていきたい」と述べました。

そのうえで「限られたワクチン接種の機会を有効に活用していくためにも、二重予約はぜひとも避けていただきたい。二重予約の状況になった場合は速やかに不要となったほうをキャンセルしていただくよう重ねてお願いしたい」と呼びかけました。

また、記者団が大規模接種センターの運営によって自衛隊の災害への対応に影響がないか質問したのに対し、加藤官房長官は「大規模接種センターの運営期間中に自衛隊が災害派遣を行う場合にも運営が両立しうるような体制となっている。仮に大規模な自然災害などが発生した場合には、被害の状況に応じて救援任務の遂行に影響を与えないよう接種センターの運営体制についても適切に判断をしていく」と述べました。

東京都 小池知事「スケジュール できるだけ前倒しを」

東京都の小池知事は都庁で記者団に対し、政府が設けた大規模接種センターとJR東京駅をつなぐ無料の送迎バスが運行されると説明したうえで「会場まで10分ぐらいだが、5分から6分ごとぐらいにバスが出るのでよく地理がわからない人は使っていただきたい」と呼びかけました。

そして、小池知事はワクチン接種を進めるため、都として旧築地市場の跡地を活用して警察と消防の職員への接種を進める方針に関連し「区市町村が接種するパイを少しでも少なくして負荷を下げる。7月末までの高齢者への接種完了に向けてこれからも区市町村と連携をとりながら、いろいろな都の施設もうまく活用することによって、そのあとのスケジュールもできるだけ前倒しできるような状況をつくっていきたい」と述べました。

東京会場に1番乗りの男性「早く打ちたいという気持ちと期待」

午前6時20分すぎに東京会場に1番乗りで到着した東京 品川区の柴田健次さん(65)は「『早く打ちたい』という気持ちと『いよいよ打てる』という期待があって、朝4時くらいに目が覚めてしまいました。大規模接種センターは人が多く集まるのが不安ですが、東京では65歳という年齢では早く接種できないので、ここでは接種できる利点がよかったです。2回目の接種を終えたら東京を見て回ったり趣味の飛行機の写真を撮ったりして充実させたい」と話していました。

また、柴田さんは地図で会場を探しながら来たということで「会場の場所はわかりづらかったですが、会場の茶色い建物はテレビで見たことがあり人も多く集まっていたのでここだと思いました」と話していました。

柴田さんは接種を終えて「『早く打ちたいな』と思っていたのが現実になったのはうれしいです」と話していました。

一方で、接種までの流れについて「接種券番号のバーコードの読み取りがなかなかできず手作業で対応されていて全体的に時間は長くかかったと思います。また、2回目の接種は4週間後だと思っていましたが、5週間後と言われがっかりしました」と話していました。

午前7時ごろから高齢者が次々と会場に

東京 大手町の大規模接種センターでは、接種開始前の午前7時ごろから高齢者が次々と会場を訪れました。
接種会場の周辺には複数のスタッフがプラカードを持ち道案内を行っていました。

夫婦で訪れた品川区の67歳の男性は「事前の案内もあったのでスムーズに到着できました。ワクチンを打つこと自体に特に不安はありません」と話していました。
目黒区の65歳の男性は「会場の場所を事前に調べていたし案内もたくさんあったので迷わずに来ることができました。できるだけ早くワクチン接種をしたいと思っていたが家族全員の協力で予約が取れたのでよかったです」と話していました。
予約時間の1時間ほど前に会場に到着したという世田谷区の80歳の男性は「ふだん来ない場所で不安でしたが、意外とスムーズに来ることができました。早く着きすぎてしまったのでどこかで時間を過ごしたいと思います」と話していました。

また東京 大手町の大規模接種センターでは東京駅と結ぶ専用のシャトルバスも運行されています。バスは午前8時ごろから午後8時ごろまで、おおむね5分おきに運行され、接種の対象者は無料で利用できます。
シャトルバスを利用した目黒区の70歳の女性は「大手町はなかなか来ることがない場所なので、駅で迷ったりするのが嫌だと思っていましたが、バスがあって本当によかったです」と話していました。

体の不自由な高齢者も

東京 大手町の大規模接種会場では車いすに乗った人や家族に付き添われてやってくる人の姿も見られました。

つえがなければ歩行できない89歳の母親に付き添って会場を訪れた墨田区の女性は、「入り口が狭かったり、でこぼこした場所があったりして、バリアフリーが十分だとは思いませんでした。受付の窓口から接種場所まで歩かなくてはならない距離も長く高齢の母には大変でした」と話していました。

接種終えた人は

北区の69歳の女性は「自治体の接種も考えましたが『1日でも早く予約が取れるほうを』と思い、こちらでの接種を予約しました。やっと順番が回ってきてよかったです。海外ではかなり接種が進んでいるようなので、もう少し早く接種できればよかったと思います」と話していました。

渋谷区の78歳の女性は「自治体の接種は予約の電話がなかなかつながらないので、こちらで接種することにしました。最初は自分で予約しようと思いましたがインターネットの操作は難しく娘が代わりに予約してくれました。事前に下見をしていたので迷わずに来ることができましたし、会場の中も混乱はなく、スムーズに接種できてよかったです。ワクチンが接種できてとてもほっとしています」と話していました。

江戸川区の75歳の男性は「自治体の接種は今月分はすでにいっぱいで予約できなかったのですが、大規模接種センターはすぐに予約することができました。駅を降りると案内の人がたくさんいたので道に迷うこともなく、会場の中もスムーズで、無事に接種できてほっとしました」と話していました。

モデルナのワクチンで混乱回避

政府は、24日から東京と大阪に開設する大規模接種センターや宮城、群馬、愛知の各県がそれぞれ独自に設ける大規模接種の会場ではモデルナのワクチンを使用し、今後、都道府県や政令指定都市が大規模接種会場を設ける場合なども同様の対応をとるとしています。

一方、各市区町村が実施している接種の会場では引き続きファイザーのワクチンを使用する方針です。

政府はワクチンの1回目と2回目の接種の間隔がモデルナは4週間、ファイザーは3週間で異なることから、混乱が生じるのを避けるための対応だと説明しています。

ワクチン余れば民間の看護師に

防衛省は、キャンセルなどでワクチンが余った場合、東京、大阪のいずれも、会場で接種関連の業務にあたる民間の看護師や会場の案内や受け付けを行う委託先の民間企業のスタッフに優先的に接種する方針です。

民間の看護師と民間企業のスタッフは、東京、大阪の会場で合わせてそれぞれ200人が配置され、東京会場には、民間の看護師が110人、民間企業のスタッフが130人、大阪会場には、民間の看護師が90人、民間企業のスタッフ70人が、毎日、配置されるということです。

また、医師や看護師の資格を持つ「医官」や「看護官」と呼ばれる自衛隊員は、すでに接種を終えているケースが多いものの、会場運営にあたる自衛隊員は、ほとんど接種が進んでいないことから、ワクチンが余った場合は、こうした隊員への接種にも充てたいとしています。

防衛省では、可能なかぎりワクチンが余らないよう計画的に接種を進めつつ、余った場合でも、ワクチンがむだにならないように対応するとしています。

東京 大規模接種センターとは

政府が設置する新型コロナウイルスワクチンの大規模接種センターのうち、東京の会場は、大手町にある合同庁舎3号館に設置されました。

会場に到着すると、接種を受ける人はまず屋外にあるプレハブの建物で検温と受け付けを済ませ、庁舎の中に入ります。

ワクチンを接種する場所は合同庁舎の2階、4階と7階、それに10階に設けられていて、それぞれの階で接種に伴う一連の流れが完結するようになっています。

このうち2階は、重い基礎疾患があるなど接種が可能かどうかの判断に時間がかかる人や車いすで生活している人などより配慮が必要な人のための場所で、全体として接種がスムーズに進むようフロアが分けられています。

エレベーターで各階に到着すると最初に行われるのが「予診票」の確認です。

名前や生年月日、連絡先のほか初めての接種かどうかや体の具合が悪いところはないかが漏れなく書かれているか確認されます。

このあと、それぞれのブースに入って医師による問診を受けます。

問診を行うのは医師の資格を持つ自衛隊員「医官」で、体調などを聴き取ったうえでワクチンを接種しても問題ないかが判断されます。

問題ないと判断されれば接種のためのブースに移動し、ここでワクチンが接種されます。

接種を行うのは看護師や准看護師の資格を持つ自衛隊員や民間の看護師です。

接種を終えるとブースから出て移動し、接種券と一緒になっている「接種済証」に製薬会社の名前や製造番号などが書かれたシールが貼られるほか、接種した場所や日付が記入されます。

また、2回目の接種の日程もこの場で決まることになっています。

このあと、さらに移動して副反応が出ないかの「経過観察」が行われます。

15分程度様子を見て、問題がなければ一連の接種が終わります。

防衛省は一連の接種で1人当たりにかかる時間は30分ほどと見込んでいます。

また、4つのフロアをあわせると「問診」のブースは36個、「接種」のブースは35個設置されているということで、防衛省はスタッフが作業に習熟しスムーズに進むようになれば東京会場だけで1日で最大、1万人程度の接種が可能になると見込んでいます。

このほか、センターでは接種を受ける人の動線はすべて一方通行になっているほか、エレベーターホールには間仕切りが設けられ、これから接種を受ける人と接種を終えた人が接触しないようにしていて、センター内での感染を防ぐための対策も講じられています。

予約受付の地域拡大

大規模接種センターでの接種の予約は24日から対象地域を拡大して受け付けられています。

予約できるのは接種券を持つ65歳以上の高齢者で、24日から今月30日までの間は東京都と大阪府のいずれも全域に住む人を対象に今月31日から来月6日までの分が予約できます。

来週には対象地域はさらに拡大され、今月31日から来月6日までの間は東京、埼玉、千葉、神奈川の1都3県と大阪、京都、兵庫の2府1県に住む人が、来月7日から13日までの分が予約できます。

このあとの期間については、住民票がなくてもこれらの地域に住んでいる高齢者については予約が可能になります。

接種券のほか住所が書かれた郵便物などを示してもらい、居住実態を確認することを検討しているということです。

また、防衛省は今後、高齢者だけでなく基礎疾患がある人や高齢者施設で働く職員などで自治体から接種券が送られてきた人も接種の対象にすることにしていて、詳細が決まりしだい発表するとしています。

予約の受け付けはインターネットに限られていて、防衛省は操作に不慣れな高齢者の問い合わせなどに応じるため電話の専用窓口を開設しています。

電話番号は東京会場は、0570-056-730、大阪会場は、0570-080-770で、土日祝日も含めて午前7時から午後9時まで受け付けています。

予約方法のほか会場への経路などの問い合わせにも応じるということです。