イスラエルとハマス 停戦から一夜明け 現地では落ち着きも

イスラエルとパレスチナのガザ地区を実効支配するイスラム原理主義組織ハマスとの間で停戦が成立し、現地では一夜が明けました。これまでのところ双方に攻撃の動きは見られず、停戦が維持されるのかが、今後の焦点となります。

イスラエルとハマスの間では今月10日以降、ロケット弾や空爆などによる激しい攻撃の応酬が続いてきましたが、20日、双方が停戦を受け入れました。

現地では、停戦から一夜が明けガザ地区では、野菜市場で大勢の人が買い物している様子や、街のとおりを車が行き交う様子が見られました。

また、イスラエル側では、ロケット弾の被害を受けてきた南部の都市でも市民が屋外で活動する様子がみられ、双方で落ち着きを取り戻しているように見えます。

停戦を仲介したエジプト政府は、双方に代表団を送り、状況を監視することにしていて今後、停戦が維持されるのかが焦点となります。

今回の攻撃の応酬では、ガザ地区で232人、イスラエルで12人が亡くなったほか、イスラエル各地で、ユダヤ系住民とアラブ系住民による衝突も相次ぎ、パレスチナ問題の根深さが浮き彫りとなりました。

また、空爆によりガザ地区では多くの人が住居を失ったほか、インフラ設備への被害も深刻で、停戦後の人道支援をいかに進めるかも課題となりそうです。

停戦 イスラエル市民は

イスラム原理主義組織ハマスとの停戦について、エルサレムのイスラエル市民からはさまざまな意見が聞かれました。

22歳の男性は「停戦によって、これ以上市民の犠牲者が出ないのでうれしい。ハマスには重い代償を払わせたと思っています。イスラエル軍は、市民の犠牲が出ないよう最大限の努力をしていた」と話していました。

また、68歳の男性は「停戦には賛成で続いて欲しいです。ハマスは非常に危険な勢力で、リーダーはガザ地区の外にいて人々が犠牲になるのを放置している」と話していました。

一方、エルサレムに住む女性は「私は停戦には反対です。ハマスはいずれイスラエルに攻撃をしてくるので、政府や軍は、作戦を最後まで続けるべきだと思います。ハマスはイスラエルの市民を危険にさらしている」と話していました。

停戦から一夜 ガザ地区の様子は

停戦から一夜が明けたガザ地区では、多くの車が行き交い、一部でこれまで通りの日常生活を取り戻しつつあります。

その一方、通りのそばの建物はイスラエルの攻撃で大きく崩れたままで、商店の前では散らかったがれきを掃除する人の姿がみられました。
25歳の男性は「停戦によって戦争への心配や悲しみがなくなったので、嬉しく思うべきですが、15人の家族を養ってきた自分の店をイスラエルの攻撃で失い、とても悲しいです」と話していました。

また、25歳の女性は「再び軍事衝突が起きるのではないかと思うととても怖いです。多くの人が家族を失う可能性が出てくるので、私たちの状況は今後も非常に厳しいものになるでしょう」と話していました。

対立の根源 1948年のイスラエル建国に

イスラエルとパレスチナの70年余りにわたる対立の根源は、1948年のイスラエルの建国にさかのぼります。

イスラエルは第2次世界大戦中のナチス・ドイツによる大量虐殺=ホロコーストを経験したユダヤ人が建国しました。

イスラエルの建国によってパレスチナ人は住む場所を追われて難民となったり、たび重なる戦争で占領下に置かれたりしました。

パレスチナはイスラエルによる占領に対し、大規模な抗議活動「インティファーダ」で抵抗し、一時は和平に向けた交渉も行われましたが、合意には至りませんでした。

その後も、イスラム原理主義組織ハマスなどによる自爆テロでイスラエルの市民が犠牲となり、イスラエルはハマスが実効支配するガザ地区を封鎖し、空爆などで対抗していて、和平実現への道は遠のいています。

過去には「停戦破り」も

イスラエルとハマスの軍事衝突を巡っては、過去に、停戦したあとも合意が破られ、犠牲者がさらに増えたケースもあります。

2014年7月のイスラエル軍によるガザ地区への地上侵攻では、8月1日になって、イスラエルとハマスが72時間の停戦に応じました。

しかし、まもなくしてガザ地区南部で激しい銃撃戦が起きたため停戦は維持されませんでした。

その10日後の11日には、再び72時間の停戦で双方が合意しましたが、停戦期限の2時間前になってイスラエル軍は「ガザ地区からロケット弾が発射された」と発表し、やはり停戦は守られなかったとしています。

結局、期限を定めない本格的な停戦に至ったのは、戦闘開始から50日がたってからでした。

また、2012年の軍事衝突では11月に停戦に至ったあと、よくとし3月になってガザ地区からロケット弾が発射されたほか、5月にはイスラエル軍の空爆でガザ地区のハマスとは別の武装勢力のメンバーが殺害されました。

米バイデン大統領 外交による成果だとアピール

バイデン大統領は20日、停戦への合意を受けてホワイトハウスで演説し「関係国と高官レベルで文字通り休まず集中的な協議を続けてきた。対立を終えるために外交努力を尽くした関係者に感謝する」と述べて、外交による成果だとアピールしました。

バイデン政権は今回、国連の安全保障理事会で緊張の緩和に向けた声明を議論する際、その内容を巡って反対の立場をとり続けました。

一方で「水面下での集中的な外交を続ける」という姿勢を繰り返し強調し、ホワイトハウスはバイデン大統領とイスラエルのネタニヤフ首相の6回にわたる電話会談をはじめ大統領や政府高官による関係国との電話会談などはこの1週間余りで80回に上ったとしています。

しかし犠牲者が増えるなか国内では与党・民主党内の左派からイスラエルにより厳しい態度を取るよう求める声があがっていたほか、イスラエルへの影響力を疑問視する見方も出ていて、バイデン政権への圧力が強まっていました。

一方、バイデン政権の一連の対応を巡って専門家は国際協調を重視する姿勢を示しながら、アメリカとして中東和平問題に関与する難しさを浮き彫りにしたと指摘しています。

オバマ政権でイスラエルとパレスチナの中東和平交渉の再開に取り組んだマーティン・インディク氏はNHKの取材に対し「バイデン大統領は国連のような国際組織が重要だと印象づけたかった。しかし今回の対立によってアメリカは国連の場で同盟関係にあるイスラエルと過半数を占める反イスラエルの国々との間での選択を迫られてしまった」と分析しています。

また、バイデン政権が外交課題として中国や気候変動、イランの核問題を優先させていることを念頭にインディク氏は「政権内で中東和平問題の優先順位は低かった。だが今回の衝突を受けて、この問題に向き合わざるを得なくなる。ただ問題の解決ではなく、衝突に発展しないよう問題を管理していくレベルでの関与になるだろう」と述べました。

バイデン大統領は今後、国連などと協力してガザ地区の復興を後押しする考えを示していますが、今回の大規模な戦闘の根幹であるイスラエルとパレスチナの対立の解消に向けた和平交渉の仲介などどこまで積極的に関与するかは不透明で、バイデン政権が今後、より踏み込んだ対応をとるのかにも関心が集まっています。

中国外務省報道官「ガザ地区の再建に積極的に参加する」

今回の停戦について中国外務省の趙立堅報道官は21日の記者会見で「停戦を歓迎し、エジプトと国連などの調停に向けた努力を称賛する」と述べました。

そのうえで「中国はパレスチナに対し、100万ドル、日本円で1億円余りの緊急人道支援を行うとともに、パレスチナ側の必要に応じて物資の支援なども行い、ガザ地区の再建に積極的に参加する」と表明しました。

一方で、アメリカが水面下で外交努力をしてきたという姿勢を強調していることについては「アメリカは真の多国間主義を実践し、国際社会の大多数のメンバーとともに国連安全保障理事会が問題の早期解決のためにしかるべき役割を果たすことを支持するよう望む」と述べ、安保理として一致した対応を示すことに唯一、反対の立場をとり続けたアメリカをけん制しました。