「アップリンク渋谷」閉館 コロナ禍影響 ミニシアターの代表格

いわゆる「ミニシアター」の代表格として独自に選んだ作品を上映してきた東京 渋谷の「アップリンク渋谷」が、コロナ禍の影響で20日閉館し、上映作品に出演した俳優らがファンとともに閉館を惜しみました。

平成7年に開業した「アップリンク渋谷」は、大手の映画配給会社が扱わない作品を独自に選んで上映する「ミニシアター」の代表格として26年にわたってファンに親しまれてきましたが、コロナ禍で資金繰りが厳しくなり、20日閉館しました。
最終日となった20日は14本の作品が上映され、このうちコロナ禍での映画撮影の舞台裏を追ったドキュメンタリー作品「裏ゾッキ」の上映後には、監督や出演した竹中直人さんなどによるトークショーが開かれました。

このなかで竹中さんは「きょう皆さんと共有した時間はずっと残っていくし、思い出なんかにしたくありません。またいつか渋谷のアップリンクで会えることを願っています」と語りました。

アップリンク渋谷は去年、およそ2か月にわたって休業したあともコロナ禍の影響が続き、先月ウェブサイトに掲載した「閉館のお知らせ」には、「昨年はぎりぎり生き延びることができましたが、ことしはさすがに限界を超える状態で、先が見えない状況」などと記していました。

10年以上通い続けていたという30代の女性は「いちばん通った映画館なので、閉館してしまうと聞いてショックでした。家と映画館の間のような場所で、ここのいちばん前の席で映画を見るのがいつも楽しみでした」と残念そうに話していました。

ミニシアターの現状は

ミニシアターの全国団体、「コミュニティシネマセンター」によりますと、「ミニシアター」は、全国におよそ130館あり、多くがコロナ禍で厳しい経営に直面しています。

今回の緊急事態宣言で東京都は、床面積が合わせて1000平方メートル以下の小規模な映画館に対して、独自に休業の協力を依頼しています。

都は中小企業が運営するミニシアターが協力に応じた場合、1日2万円を支給するとしていますが、コミュニティシネマセンターなどによりますと、多くのミニシアターが感染対策をとりながら営業を継続しているということで、「アップリンク渋谷」も20日まで営業を続けてきました。

これについて、ミニシアターなどを支援する団体「SAVEthe CINEMA」は、「協力金は、とても事業規模に合致しているとは言い難く、このままでは興行の継続が困難に陥ることは時間の問題」などとする声明を発表しています。

一方、苦境のミニシアターを支援する取り組みも広がり、映画監督が発起人となって去年立ち上げた「ミニシアター・エイド基金」では目標としていた1億円の3倍以上となる3億3000万円余りが集まり、全国のミニシアターに配られたということです。

また、文化庁は、映画館で特集上映などのイベントを開催する際の補助金の1次募集の申請を、今月24日まで受け付けています。