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現地記者に聞く ミャンマーは今どうなっているのか?

ミャンマーのクーデターからおよそ4か月。治安部隊による発砲などで、死亡した市民は子どもを含めると800人以上にのぼっています。現地は今、どうなっているのか?ミャンマーの最大都市ヤンゴンで取材を続けている飯沼智記者の報告です。

Q、現地のテレビでは何を放送しているの?

ニュース番組を持つ民間放送局のチャンネルはすべて見られなくなっています。英語でニュースを放送している国外の放送局も同じで、NHKの国際放送もカラーバーしか映りません。
一方、国営の放送局のほか、民間であっても映画やアニメなどの娯楽番組だけを放送しているチャンネルは見ることができます。ただ、国営放送局のニュースは、軍が設置した最高意思決定機関「国家統治評議会」の施政方針や主張が中心です。

軍に抗議する活動を続ける市民をテロリストと呼び、逮捕した人や指名手配した人の写真や情報を毎日伝えています。

Q、インターネットは使えるの?

インターネットは、モバイルデータ通信が基本的には使えません。

建物の外に出るとフェイスブックやツイッターなどのSNSは使えず、グーグルマップも使えません。事務所やホテルに戻って、WiFiが通じるエリアに入ると、使えるようになります。

なので、外出先から事務所にもどると、スマートフォンからは、それまでたまっていたメッセージやメールの着信を知らせる通知音がしばらく鳴り続けます。

Q、ヤンゴンの様子は?

中心部では、4月下旬ごろから、大通りを走る車の量が増えてきています。渋滞につかまることも多くなってきました。店を再開する動きも目立つようになっています。休日の商店街やショッピングモールはおおぜいの客でにぎわうようになり、日常が戻りつつあるように感じられます。
ただ、夜が近づいてくると街の様相は一変します。夜間外出禁止令の影響です。

ショッピングモールは従業員が家に帰るまでの時間を見なければならないので、早いところは午後5時ごろには閉まります。飲食店の多くも午後7時ごろには閉まります。夜間外出禁止令は5月4日に2時間短くする通達が出され、午後10時までの外出が可能になりました。

しかし、市民は検問を行う警察などから、いわれのない調べを受けることを警戒して、夜はできるだけ早く帰宅する生活を続けています。午後8時ごろには街は閑散としてきます。

Q、人々の暮らしや生活はどう変化したの?

夜間外出禁止令の影響で、人々は早く家に帰り、夕食は自宅で済ませます。夜風にすずみながら、屋台や軒先で人々が談笑するといったかつての光景はほとんど見られなくなりました。

現金の不足も深刻です。軍の統治に反対して職務を放棄する不服従運動にはおおぜいの銀行員も参加しているため、銀行が閉まり、ATMの稼働率も下がっています。

1回に引き出せる額は日本円で1万数千円ほどまでに制限がかけられています。人々は連日長蛇の列をつくってお金を引き出していますが、焼け石に水ですぐになくなってしまいます。
仕事や収入を失う人も多く出ています。特に建設作業の現場で日雇いの仕事をしている人や、路上でモノを売って僅かな収入を得ている貧困層に対する打撃が大きくなっています。

ただ、ミャンマーでは助け合いの文化が根づいていて、各地の市民団体が困窮する人たちに食料支援を行っています。食料調達の資金は海外に暮らすミャンマー人たちから提供されたお金も使われていて、ヤンゴン市内のある市民団体は8割をそうした海外からのお金で賄っていると話していました。

Q、デモや抗議活動はどうなったの?

クーデターの発生から間もない時期に行われていたような大規模なデモは行われなくなっています。しかし、こっそりと集まった若者たちが突然通りなどを占拠してデモを行い、軍や警察が駆けつける前に解散するというゲリラ的な抗議活動は続いています。

街頭での活動のほかにも、税金の支払いを拒否したり、軍系企業の製品やサービスをボイコットしたり、といった抗議運動が幅広く行われています。軍や警察からいっぽう的な暴力を受け続ける状況に耐えかね、市民が武器を手に取る動きも出てきています。
ヤンゴンを含めて各地で爆発が相次いでいて、軍だけに限らず、市民側の関与が疑われているものもあります。中には、兵士や警察官が実際に被害を負ったケースもあります。

狩猟がさかんな地域では、猟銃で軍に反撃する市民グループも現れています。

Q、日本の企業、働く人は?

資材が届かず建設作業を進められない、原材料が届かず生産活動が止まっている、などなど、クーデター以降、著しい影響を受けているようです。

日本人駐在員は、安全も考慮して、一時的に帰国する人が多くなっています。一方で、現地スタッフだけでは事務運営が回らないものもあり、ミャンマーに再び戻って来るという人も出てきています。

企業活動が正常に再開できるような状況はいつ来るのか、見通しが立たない中で、皆さん苦悩しています。

Q、ミャンマーの人たちはどんな不安が?

警察に連行される若者たち
いつ、軍や警察に何らかの疑いをかけられ、身柄拘束などの弾圧を受けるか分からないとして、不安な日々を送っています。軍の統治に不満を持っていても、それを表だって口にすることはできません。近くに軍や警察がいなくても、密告者がどこにいるか分からないとして、市民が互いに疑心暗鬼になっている状況も生まれています。

また、抗議活動に熱心な人などが、夜間に家を襲撃され、身柄を拘束されることが多くなっていることから、市民たちは夜間、自宅にいる際も、気が休まらないといいます。

さらに、かつての軍事政権時代のような暗く貧しい日々に戻ってしまうのではないかという不安も募っています。

しかし多くの人たちは、国内状況の急速な悪化に焦りを感じつつも、軍による容赦のない弾圧を前に、どうしていいか分からないといった悩みに陥っています。

Q、ミャンマーの人たちは日本には何を期待?

圧倒的に大きい経済的な影響力を背景に、軍に対してもっと強力な圧力をかけてほしいと願っています。

具体的には、ODA=政府開発援助の見直し、軍とつながりのある企業との事業の停止などを順次、実行に移していくことで、軍が耳を傾けざるをえない状況に追い込んでほしいというのです。

こちらで取材をしていると、多くのミャンマー人から「日本にはがっかりしている。もっとできることがあるはずなのに」「ミャンマー人の間では日本に対する印象が悪くなっている」「何をやっているのか全く分からない」と言った話を聞くこともあります。
アジア総局記者
飯沼 智
バンコクを拠点に
ミャンマーを取材
クーデター発生後も現地入りして
取材を続けている

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