“主要繁華街 連休後に人出増加 警戒必要”都モニタリング会議

東京都の「モニタリング会議」で専門家は、都内では流行の主体が感染力が強い変異ウイルスに置き換わり、新規陽性者は依然として高い水準だと指摘しました。さらに、主要繁華街では、大型連休後に人出が増加しているとして、新規陽性者が短期間で再び増加に転じることへの警戒が必要だとしています。

会議のなかで専門家は、都内の感染状況と医療提供体制をいずれも4段階のうち最も高い警戒レベルで維持しました。

新規陽性者の7日間平均は、19日時点でおよそ704人で、840人だった1週間前、5月12日時点の84%に減少したものの、依然として高い水準だと指摘しました。

また、感染力が強い「N501Y」の変異があるウイルスに感染した人の割合は、5月9日までの1週間は75%となり、流行の主体が置き換わったと考えられるとしています。

さらに、主要繁華街では大型連休後に人出が増加しているとして、新規陽性者が短期間で再び増加に転じることへの警戒が必要だとしています。

また、インドで見つかった変異ウイルスに感染した人は、2人増えて8人となったことが報告され、専門家は、この変異ウイルスの感染状況を監視する体制を強化する必要があるとしています。

一方、それぞれ19日時点で、
▽入院患者は2361人
▽重症の患者は73人と、
いずれも前の週から減少しているものの、専門家は依然として高い値で、流行の主体が感染力の強い変異ウイルスに置き換わったことで、今後、医療提供体制のひっ迫が危惧されると指摘しました。

特に、重症の患者は、第3波のことし1月初旬に救急医療体制がひっ迫し、医療提供体制が危機に直面する直前の数値に近いとして、専門家は実効性の高い感染防止対策の徹底が必要だと訴えました。

繁華街の人出 連休明け増加

モニタリング会議で、東京都医学総合研究所社会健康医学研究センターの西田淳志センター長は、都内7つの繁華街の人出について、緊急事態宣言が出されて大型連休中は減少していたものの、連休明けの先週になって増加に転じていると報告しました。

◇5月9日からの1週間は前の週と比べて、
▽夜間が11.9%
▽昼間が7.6%、
それぞれ増加しています。

また、
◇去年4月からの1回目の緊急事態宣言時における最低値と比べると、
▽夜間は2.01倍
▽昼間は1.99倍となっています。

西田センター長は「変異ウイルスの影響で、人出の抑制が感染者数の減少につながるまでに、従来よりも時間がかかっている」と分析したうえで、人の流れが大きく戻り始めると、再び感染が拡大する可能性が十分にあり、徹底した抑制が重要だと指摘しました。

これについて、会議のあと、小池知事は記者団に対し「感染者数と人の流れはシンクロする傾向にある。非常に懸念するところだ」と述べました。

都内の感染状況と医療提供体制 分析結果

20日のモニタリング会議で示された都内の感染状況と医療提供体制についての分析結果です。

感染状況

新たな感染の確認は、19日時点の7日間平均が703.6人となり、1週間前5今月12日時点の840.3人と比べて、およそ136人減少しました。

増加比はおよそ84%です。

しかし、専門家は依然として高い水準で推移していると分析したうえで「仮に増加比がこれ以上低下せず、十分に新規陽性者が減少しないまま、人の流れや、人と人との接触機会が大幅に増加すれば、再び増加する可能性が高い」と指摘しました。

また、都内の検査で、感染力が強い「N501Y」の変異があるウイルスの割合は、5月9日までの1週間では74.9%で、専門家は「流行の主体が置き換わったと考えられる」と指摘しています。

一方、今月17日までの1週間に、新型コロナウイルスの感染が確認された人の
◇年代別の割合は、
▽20代が最も多く30.5%
次いで、
▽30代が18.1%
▽40代が14.7%
▽50代が11.9%
▽10代が6.9%
▽60代が6.3%
▽70代が4.2%
▽10歳未満が3.4%
▽80代が3.0%
▽90代以上が1.0%でした。

専門家は、10代から40代の割合が依然として高く、新規陽性者全体のおよそ7割を占める状況が続き、特に20代だけで30%を超えているとしています。

65歳以上の高齢者は、今週は590人、割合は11.1%で前の週と比べて、いずれもほぼ横ばいでした。

◇感染経路がわかっている人のうち、
▽同居する人からの感染が59.4%と最も多く、
次いで、
▽高齢者施設や病院、保育園や学校といった施設での感染が10.9%
▽職場が10.0%
▽会食が4.7%でした。

専門家は「職場、施設、会食など、多岐にわたる場面で感染例が発生していて、感染に気付かずにウイルスが持ち込まれているおそれがある」として警戒を呼びかけました。

また、施設内での感染事例では、保育園や大学の運動部、寮などでのクラスターの発生も複数、報告されているということです。

5月17日までの1週間の新規陽性者5303人のうち、16.5%にあたる874人は無症状でした。

「感染の広がりを反映する指標」とされる、感染経路がわからない人の7日間平均は、19日時点で428.3人で、前の週から75人減りました。

増加比も、19日時点で85.1%と低下しました。

ただ、専門家は「減少しているが感染経路が追えない潜在的な感染拡大が危惧される」と懸念を示しています。

◇年代別で感染経路がわからない人の割合を見ると、
▽30代では70%を超えていて、
▽20代と40代
それに、
▽50代でも60%を超えています。

専門家は「保健所の積極的疫学調査による接触歴の把握が困難な状況が続いている。その結果、感染経路のわからない人と、その割合も高い値で推移している可能性がある」と指摘しています。

「N501Y」の変異ウイルス 1か月で約45ポイント増

今月9日までの1週間で都内で行われた変異ウイルスのスクリーニング検査で感染力が強い「N501Y」の変異があるウイルスの陽性率は、74.9%でした。

1か月前は30.0%で、この1か月でおよそ45ポイント増加しました。

また、インドで見つかった変異ウイルスは今月16日までの1週間で都内で新たに2人確認され、合わせて8人になりました。

このうち4人は海外への渡航歴があるか、その濃厚接触者ですが、ほかの4人は海外への渡航歴はないということです。

都の「専門家ボード」の座長を務める東北医科薬科大学の賀来満夫特任教授は、「日本のなかでインド株がどれくらいの比重を占めていくのか、しっかりモニタリングしていく必要がある」と述べました。

医療提供体制

検査の「陽性率」は、19日時点で5.8%となり、前の週、5月12日時点と比べて1.3ポイント低下しました。

入院患者は、19日時点で2361人となり、2399人だった前の週の5月12日時点と比べて38人減少しましたが、専門家は「高い値で推移している」と指摘しました。

そのうえで「流行の主体がN501Yの変異があるウイルスになり、医療提供体制のひっ迫が危惧される。さらに、インドで増加しているL452Rの変異があるウイルスの感染状況にも注視する必要がある」と警戒を呼びかけています。

また、入院患者を多く受け入れている医療機関について「ワクチンの接種会場を設置している病院が多く、負担が増加している」と述べました。

都の基準で集計した19日時点の重症患者は、5月12日時点より13人減って73人でした。

◇重症患者を年代別に見ると、
▽30代が1人
▽40代が3人
▽50代が10人
▽60代が26人
▽70代が28人
▽80代が4人
▽90代が1人でした。

重症患者数に占める60代以下の割合は、およそ55%となっています。

専門家は「N501Yの変異があるウイルスは重症化率と死亡率は従来のウイルスより高いという報告がある」として、警戒を呼びかけました。

このほか、人工呼吸器やECMOの治療がまもなく必要になる可能性が高い状態の人は、19日時点で278人で、先週の時点から4人増えました。

◇このほか、5月12日時点と19日時点を比べると、
▽自宅で療養している人は、327人減って1903人
▽都が確保したホテルなどで療養している人は、6人減って1176人
▽医療機関に入院するか、ホテルや自宅で療養するか調整中の人は、500人減って913人でした。

「療養が必要な人」全体の数は19日時点で6353人で、871人減りましたが、専門家は「高い水準で推移している」としています。

また、5月17日までの1週間では、新型コロナウイルスに感染した38人が亡くなりました。

前の週より16人増えています。

亡くなった38人のうち、5人は40代と50代でした。

賀来特任教授「これまでの対応では抑えきれない可能性」

モニタリング会議のあと、都の「専門家ボード」の座長で東北医科薬科大学の賀来満夫特任教授は「N501Yに置き換わったということは、かなり伝ぱ力が高く、これまでの対応では抑えきれない可能性があるということだ。人流を抑制する社会的な感染防御と同時に、マスクを正しく着けるなど、個人の感染防御も当然、高めていかなければいけない。この2つの面をしっかりと都民にご理解いただきたい」と述べました。

また賀来特任教授は、記者団から今月末が期限の緊急事態宣言を延長するか解除するかの判断について聞かれると「非常に難しいところだ。N501Yやインドで広がる変異ウイルスの動向をしっかり見ていく必要がある。今、ようやく少し感染者数の減少傾向が出てきているが、今週、来週にわたって、しっかり見てから判断していくことになると思う」と述べました。