モデルナ アストラゼネカ ワクチンの効果は?副反応は?

欧米の製薬会社モデルナとアストラゼネカの新型コロナウイルスのワクチンについて、20日夜、厚生労働省の専門家部会が承認することを了承しました。21日にも田村厚生労働大臣が正式に承認する見通しです。
それぞれのワクチンの効果や副反応などを、すでに国内で接種が行われているファイザーのワクチンとともに表にまとめました。

発症を防ぐ効果

モデルナ
94.1%(海外で行われた臨床試験)

アストラゼネカ
70.4%(イギリスやブラジルなどで行われた臨床試験の結果をまとめた論文の平均)

ファイザー ※5月11日時点
95%(臨床試験の結果をまとめた論文)

変異ウイルスへの効果

モデルナ
▽イギリスの変異ウイルス
 →大きな影響は無し
▽南アフリカの変異ウイルス
 →抗体の量が減ったもののワクチンとして必要なレベルは上回る
▽ブラジルの変異ウイルス
 →抗体の量が減ったもののワクチンとして必要なレベルは上回る

アストラゼネカ
▽イギリスの変異ウイルス
 →変わらず
▽ブラジルの変異ウイルス
 →抗体の働きを示す値が下がるものの効果はある
▽南アフリカの変異ウイルス
 →効果は見られなかった

ファイザー ※5月11日時点
▽イギリスの変異ウイルス
 →高い有効性
▽ブラジルの変異ウイルス
 →ほぼ変わらず
▽南アフリカの変異ウイルス
 →効果は低かったものの十分

副反応など

モデルナ
接種した場所の痛みや腫れ、全身のけん怠感や頭痛、筋肉痛、寒気、発熱、吐き気など。通常は数日で消える

アストラゼネカ
接種した場所の痛みやけん怠感、頭痛、筋肉痛、発熱など。ほとんどは数日以内に解消
ごくまれに血栓ができるケースが確認され、死亡例も報告。原因は特定されていないもののワクチンとの関連性が指摘される

ファイザー ※5月11日時点
▼けん怠感:1回目の接種後23.2%、2回目の接種後は69.6%、
▼頭痛:1回目の接種後は21.2%、2回目の接種後は53.7%、
▼37度5分以上の発熱:1回目の接種後は3.3%、2回目の接種後は38.4%
(2021年4月30日に専門部会で示された厚労省研究班資料より)

契約状況

モデルナ
ことし9月までに5000万回分=2500万人分

アストラゼネカ
年内に1億2000万回分=6000万人分

ファイザー
年内に1億9400万回=9700万人分

保管温度と期間

モデルナ
海外では▽マイナス20度前後で6か月間、▽2度から8度の冷蔵状態で30日間

アストラゼネカ
2度から8度で6か月間保管

ファイザー
▽マイナス75度前後で6か月間、▽マイナス20度前後で14日間、▽2度から8度で5日間

接種回数と間隔

モデルナ
回数:2回
間隔:海外では4週間

アストラゼネカ
回数:2回
間隔:海外では4週間から12週間

ファイザー
回数:2回
間隔:国内外とも21日

アストラゼネカワクチン 血栓とは

アストラゼネカのワクチンを接種したあと、ヨーロッパ各国で、極めてまれに血栓ができる副反応が確認され、亡くなったケースも報告されていますが、EMA=ヨーロッパ医薬品庁は安全で効果的なワクチンで、接種によって発症や重症化を防ぐメリットは副反応のリスクを上回るとしています。

このワクチンは、接種したあと血栓ができたケースが報告されていて、4月7日に公表されたEMAの調査結果では、「血栓は非常にまれな副反応としてリストに加えられるべきだ」として、ワクチンと血栓の間に関連性がありうるという認識が示されました。

それによりますと、血栓は60歳未満の女性で接種から2週間以内の報告されるケースが多く、脳や腹部の静脈などで起き、血小板の減少を伴うこともあるなどとしています。

イギリスの規制当局は、5月5日までにイギリス国内でこのワクチンを1回接種した人が2330万人、2回接種した人は750万人いてこのうち、血小板の減少を伴う血栓症になったのが262人、そして51人が死亡したと報告しています。

血栓が起きる頻度は接種100万回あたり、10.9回だとしています。

このワクチンの海外での添付文書には、接種後に血小板の減少を伴う血栓が極めてまれに確認されていて、死亡例もあることが記載されています。

血栓が起きる割合は高齢者よりも若い世代で高いとされ、イギリス政府の諮問委員会は予防的な措置として40歳未満には別のワクチンの接種を勧めるとしていて、ほかにも年齢制限を設けた国や接種を中止した国も出ています。

血栓ができる原因は特定されていませんが、各国の研究グループから血を固める「血小板」の働きを高める抗体が増えていることが報告されていて、血を固まりにくくするヘパリンという薬を投与したあとに、血小板が減り、逆に血栓ができてしまう「ヘパリン起因性血小板減少症」と似ていると指摘されています。

WHO=世界保健機関は4月16日の声明で、感染が続く国ではワクチンを接種するメリットはリスクをはるかに上回るとした上で、各国は感染状況やほかのワクチンを入手できるかといった事情を考慮して判断すべきだとしています。

専門医「アストラゼネカ どんな年代に接種するかなど検討を」

承認の可否が判断されるモデルナとアストラゼネカ、2社のワクチンについて、国立国際医療研究センターの忽那賢志 医師は、多くの患者の治療を行ってきた経験から、発症や重症化、それに感染そのものを防ぐためにワクチン接種が進むことを期待していて、接種の選択肢が増えるとして歓迎しています。

このうち、モデルナのワクチンについて忽那医師は「現在接種が行われているファイザーのワクチンと同じ『メッセンジャーRNAワクチン』で、ほぼ同等の効果がある。保管の条件はファイザーのワクチンほど厳しくないため使い勝手がよく、接種率の向上に重要な役割を担うと思う」と話しています。

また、アストラゼネカのワクチンについては「発症予防効果は70%ほどで重症化の予防効果もあるので、単体のワクチンとして考えた場合、非常に有効性の高いワクチンであることは間違いない。選択肢が増えるのは歓迎すべきことだ」と話しています。

その一方で、ヨーロッパで主に若い女性で極めてまれに血栓ができる副反応が報告されていることについて、忽那医師は「頻度は決して高くないが、海外では亡くなった人も報告されていて、深刻な副反応ではあると思う。他のワクチンも十分に在庫が確保されている中で、どういう人に接種するか、承認する時点で接種についての考え方を吟味しておく必要がある」と指摘しています。

そのうえで「アストラゼネカのワクチンはアナフィラキシーは少なく、どのワクチンにも一長一短がある。国は副反応の情報を含めて、正しい情報を包み隠さず出したうえで、接種するワクチンを選択できた方がよいと思う」と話しています。