欧米 製薬会社2社のコロナワクチン 今夜承認の可否判断へ

欧米の製薬会社2社の新型コロナウイルスのワクチンについて厚生労働省の専門家部会が20日夜、日本での承認の可否を判断します。関係者によりますと、いずれも国内の治験で一定の有効性が認められたことなどから、承認が了承される公算が大きくなっています。一方、イギリスのアストラゼネカのワクチンは極めてまれに血栓が生じるリスクがあると指摘されていることから、厚生労働省が推奨年齢を限定する方向で検討を進めています。

承認について議論されるのは、アメリカのモデルナのワクチンとアストラゼネカがオックスフォード大学と共同で開発したワクチンの2種類です。

厚生労働省は20日午後6時から専門家でつくる部会を非公開で開き、承認するかどうか判断を求めることにしています。

関係者によりますと、いずれのワクチンもすでに海外で使用されていることに加え、国内の治験でもウイルスの働きを抑える中和抗体の増加が確認されていることなどから、承認が了承される公算が大きくなっています。

接種を認める年齢はいずれも海外と同様に18歳以上となる見込みです。
一方、アストラゼネカのワクチンについては、EU=ヨーロッパ連合の規制当局が接種後、極めてまれに血栓が生じるリスクがあると指摘し、若い年代のほうが症例の報告が多いという分析結果も公表しています。

このため厚生労働省が接種を推奨する年齢を一定の年代以上に限定する方向で検討を進めていて、後日、改めて判断する方針です。

承認が了承されれば21日にも田村厚生労働大臣が正式に承認する見通しで、政府が今月24日に東京と大阪に開設する大規模な接種会場でモデルナのワクチンが使用される予定です。

契約状況は

厚生労働省とモデルナとの契約では、ことし9月までに5000万回分、人数にして2500万人分の供給を受けることになっています。

このうち4000万回=2000万人分が来月までに供給され、厚生労働省はさらに来年初頭から5000万回=2500万人分の供給を受けることを前提に協議を進めています。
アストラゼネカとは年内に1億2000万回分、人数にして6000万人分の供給を受ける契約を交わしていて、国内の製造拠点から9000万回=4500万人分以上が供給される見通しです。

このほか、ファイザーと年内に1億9400万回=9700万人分の供給を受ける契約を結んでいます。

保管温度と期間は

モデルナのワクチンを保管できる期間は、海外ではマイナス20度前後で6か月間2度から8度の冷蔵状態で30日間とされています。

ファイザーのワクチンはマイナス75度前後で6か月間マイナス20度前後で14日間2度から8度で5日間とされていてファイザーから新たに提出されたデータをもとに、厚生労働省が2度から8度で保管できる期間を31日間に延長する方向で協議を進めています。

アストラゼネカのワクチンは2度から8度で6か月間保管できるとされ、ファイザーやモデルナのワクチンに比べて保管や管理がしやすくなっています。

接種の回数と間隔は

ワクチンの接種回数はいずれも2回です。

接種間隔はEUなど海外ではモデルナのワクチンが4週間、アストラゼネカが4週間から12週間とされています。ファイザーのワクチンの接種間隔は国内外とも21日となっています。

モデルナのワクチンとは

アメリカの製薬会社、モデルナが開発したワクチンは2020年12月以降、アメリカなどで接種が始まりました。

日本国内では製薬大手の武田薬品工業が追加の臨床試験を行い、承認されれば供給を担うことになっています。

このワクチンはすでに国内で接種が始まっているファイザー社製のワクチンと同じ「mRNAワクチン」と呼ばれるタイプです。

新型コロナウイルスのスパイクたんぱく質という部分の遺伝情報が含まれたmRNAをヒトの体に投与し、体の中でスパイクたんぱく質を作り出すことで免疫細胞が抗体を作れるようにします。

ファイザー社製のワクチンと同じく2回接種ですが、間隔は1週間長い4週間となっています。また、2度から8度で30日間保管が可能とされています。

海外で行われた臨床試験では、発症を防ぐ効果が94.1%と高い有効性を示したということです。

また、別の研究では臨床試験に参加した33人について2回目の接種から6か月たったあとでも十分な量の抗体が確認されたということです。

変異ウイルスへの効果については細胞を使った実験の結果が報告されていて
イギリスで確認された変異ウイルスに対しては大きな影響は無く、
また南アフリカで見つかった変異ウイルスとブラジルで広がった変異ウイルスに対しては抗体の量が減ったものの、会社によりますとワクチンとして必要なレベルは上回っていたということです。

副反応については、アメリカのCDC=疾病対策センターによりますと、接種した場所の痛みや腫れ、それに全身のけん怠感や頭痛、筋肉痛、寒気、発熱、それに吐き気などが報告されているということで通常は接種後数日で消えるということです。

また、ほとんどが軽症から中等度で日常生活に影響が出るほどの副反応は少数だったということです。

アストラゼネカのワクチンとは

イギリスの製薬大手アストラゼネカのワクチンは、オックスフォード大学と共同で開発されたもので、2021年1月からイギリスなどで接種が始まりました。

このワクチンはウイルスベクターワクチンという種類で、新型コロナウイルスのスパイクたんぱく質の遺伝子を組み込んだヒトには無害な別のウイルスを投与します。

すると、ヒトの細胞の中でスパイクたんぱく質が作り出され、それを目印にヒトの免疫細胞が抗体を作ります。

イギリスやブラジルなどで行われた臨床試験の結果をまとめた論文によりますと、発症を防ぐ効果は平均で70.4%だったということです。

変異ウイルスへの効果はイギリスで見つかった変異ウイルスに対しては変わらずブラジルで広がった変異ウイルスに対しては抗体の働きを示す値が下がるものの効果はあるとされました。

ただ南アフリカで見つかった変異ウイルスに対しては効果は見られなかったと報告されています。

副反応について、イギリス政府のウェブサイトでは臨床試験の中間分析として注射した場所の痛みやけん怠感、頭痛、筋肉痛、発熱などを挙げていて、ほとんどは数日以内に解消したとしています。

一方、実際に接種が始まったあとごくまれに血栓ができるケースが確認され、死亡例も報告されていて、原因は特定されていないもののワクチンとの関連性が指摘されました。

血栓は60歳未満の女性で報告されるケースが多く、血液を固める「血小板」が減少する症状が起こることもあったということです。

このためイギリスでは、政府の諮問委員会が40歳未満の人に対してはほかのワクチンの接種を勧めるなど年齢を限定している国もあります。

WHO=世界保健機関は4月16日の声明で、感染が続く国ではワクチンの接種のメリットはリスクをはるかに上回るとして、各国は感染状況やほかのワクチンを入手できるかなどの事情を考慮して判断するべきだとしています。