“感染者数 明確に減少に転じていない” 厚労省の専門家会合

新型コロナウイルス対策について助言する厚生労働省の専門家会合が開かれ、現在の感染状況について感染力が強い変異ウイルスの影響で人の流れが減ってから感染者数が減少するまで以前より長い時間がかかっていて、現時点では感染者数が明確に減少に転じていないと分析しました。
また、インドで広がる変異ウイルスについて日本国内で広がっているイギリスで最初に見つかった変異ウイルスより、さらに感染力が強い可能性も示唆されているとして、監視体制の強化などの対策が必要だとしています。

19日の専門家会合では
▽緊急事態宣言が出されてから3週間余りが経過した東京や大阪などでの感染や医療体制の状況のほか
▽このほかにも感染が急速に拡大している地域の状況などについて分析が行われました。

この中で、専門家会合は全国の感染状況について地域差が大きく見られるものの、現時点で感染者数が明確に減少しておらず重症者や亡くなる人の数は増加傾向が続いていると分析しました。

地域別に見ると、緊急事態宣言が出ている大阪府や兵庫県では新規感染者数の減少傾向が見られるものの非常に高い水準が続いているほか、大阪府では大型連休後に中心部や繁華街の人出が日中も夜間も増加に転じていて今後の動向に注意が必要だとしています。

また、一般医療を制限せざるをえない厳しい状況が続き、必要な医療を受けられる体制を守るために感染者数を減少させることが求められるとしています。

首都圏については東京都で感染者数はほぼ横ばい、埼玉県、千葉県、神奈川県で横ばいから微増となっていて、新たな感染者数のピークアウト=頭打ちには至っていないとしたうえで、人出も増加に転じているところがあり注意が必要だとしています。

さらに今週から緊急事態宣言の対象に追加された地域のうち
▽北海道では感染者の増加が今後も続く可能性があるほか、病院や福祉施設でのクラスターが発生するなど医療提供体制の厳しい状況が続いているとしています。

▽岡山県と広島県については、感染者数の増加が続き病床使用率も高くなっていて、今後も感染の拡大が続く可能性があるとしています。

緊急事態宣言が出されている地域以外では、沖縄県についてまん延防止等重点措置の適用から5週間がたったにもかかわらず、大型連休以降若い世代を中心に感染者数が増加し、県外から訪れた人の感染例も見られるとしたうえで重症者の増加や医療のひっ迫が懸念されるとしています。

専門家会合は今の感染拡大について、感染力の強い変異ウイルスが主流になっているため人の流れが減ってから感染者数が減少するまで以前より長い時間がかかっていて、これまでの対策では感染を大きく下げることにつながっていないのが現状だと指摘しました。

そして、いったん拡大するとそのスピードは以前より早く、医療提供体制への負荷も大きくなることから、必要な対策を速やかに実施すべきだとしています。

また、インドで広がる変異ウイルスについて、日本国内で広がっているイギリスで最初に見つかった変異ウイルスよりさらに感染力が強い可能性も示唆されているとして、全国的な監視体制を強化するとともに、感染経路を調べるなどして国内での感染拡大を可能なかぎり抑える迅速な対応が必要だと指摘しました。

“宣言”解除 専門家「今月末に可能かの判断は非常に難しい」

会合のあとの記者会見で脇田隆字座長は、緊急事態宣言の解除に向けた条件について問われ「感染状況が改善され新規感染者数が減少しても医療のひっ迫が長く続くことはこれまでも経験している。緊急事態宣言の解除の基準としてはステージ3に入るということとステージ2にむかっていくことだが、新規感染者数が下げ止まった状況になってもできるだけ長くその状況を継続させることが大事だ」と述べました。

そのうえで「関西では新規感染者数の減少傾向が見られてきたが、滞留人口の減少から新規感染者数の減少まで5週間以上かかっていることを考えると減少傾向が続くことをしっかり見ていく必要があり、今月末に解除が可能かどうかの判断は非常に難しい状況だ。東京については新規感染者数がほぼ横ばいで、対策で感染を抑える力と感染力が強い変異ウイルスの力がきっ抗している状況で、今後拡大していくのか減少していくのか推移を確認していきたい」と話しています。

インドの変異ウイルス 専門家「異なるフェーズで対策も」

インドで広がる変異ウイルスについて、専門家会合は海外で置き換わりが進んでいるという報告もあり、日本国内で広がっているイギリスで最初に見つかった変異ウイルスよりさらに感染力が強い可能性も示唆されていると指摘しています。

これについて脇田隆字座長は「今、イギリスで見つかった変異ウイルスにほぼ置き換わった状況でも、従来の対策では感染者数を簡単に減少させることができなくなってきている。会合の中ではインドで広がる変異ウイルスがそれよりさらに感染力が強いということになると、これまでと異なるフェーズで感染対策を考えなければならなくなるという議論があった」と説明しました。

その一方で脇田座長は「ただ、この変異ウイルスについては日本でも世界でも十分なデータがなく状況をよく見ていく必要がある」と話しています。