地銀の経営統合などに交付金 新制度の法律 参院で可決・成立

地方銀行など地域金融機関の経営環境が厳しさを増す中、合併や経営統合に踏み切る地域金融機関に交付金を出す新たな制度を設けるための金融機能強化法の改正法が19日の参議院本会議で可決・成立しました。

この法律は、人口減少や新型コロナウイルスの影響などで、地域金融機関の経営環境が厳しさを増す中、再編を後押しするための新たな制度を設けることが柱となっています。

人口が減っている地域を主な営業基盤とする地域金融機関が、合併や経営統合に踏み切る場合、30億円程度を上限に交付金を出し、システム投資などの必要経費の一部を補助します。

制度の申請期間は5年後の2026年3月末までで、財源には預金保険機構が出資先の金融機関からの配当で得た利益剰余金が充てられます。

法律の施行はことし7月の予定です。

金融庁は、新たな制度をてこに地域金融機関の経営基盤の強化を促し、地元経済の下支えを図りたい考えで、今後は、地域金融機関の再編が具体的に進むかどうかが焦点になります。

新しい制度の活用を検討する地方銀行

地域金融機関の再編を巡っては、それぞれのシステムを統合する際に多額の経費がかかることが、高いハードルになっていると指摘されてきました。

金融庁としては、こうした負担を軽減し、地域金融機関の再編に向けた環境整備を進めたい考えで、制度の活用を実際に検討している地方銀行もあります。

このうち、「福井銀行」は今月14日、同じ福井県内の地銀の「福邦銀行」を子会社化することを正式に決定しました。

子会社化はことし10月の予定で、「福井銀行」は金融庁が設ける新制度を積極的に活用したいという姿勢を示しています。

また3年後の合併を目指すことで基本合意した青森市の「青森銀行」と「みちのく銀行」も、基幹システムの統合にあたって新制度の活用も視野に検討しており、今後、同様の動きが広がる可能性もあります。

銀行法改正法も可決・成立

一方、19日の参議院本会議では、銀行が本業以外でも収益をあげられるよう規制を見直す、銀行法の改正法も可決・成立しました。

具体的には、金融庁の認可を前提として、自社用に開発したITシステムやアプリを外部に販売できるようにするほか、銀行が持つ顧客のデータを活用した広告ビジネスなども行えるようにします。

また、新型コロナウイルスの感染拡大で財務状況が悪化した中小企業の経営改善に、銀行がより早い段階から着手できるよう事業再生に取り組む非上場の企業への出資規制を緩和します。

さらに地方経済の再生を後押しするため、地域の活性化を図る非上場の企業に対しては、銀行が100%出資できるようにします。

銀行法の改正法の施行は、ことし11月の予定です。

全国地方銀行協会会長「地域に役立つビジネス展開を」

銀行が本業以外でも収益をあげられるように規制を見直す銀行法の改正法などが成立したことについて、全国地方銀行協会の大矢恭好会長は、記者会見で「地域経済の価値を高めるために何ができるかを地方銀行はよく考えないといけない。特に求められているのは中小企業のデジタル分野の支援や脱炭素への取り組みで、地銀は、地域の企業のために役立つビジネスを展開をしていくことが大事だ」と述べました。