アジア系ヘイトの背景には

アジア系ヘイトの背景には
今回はアメリカで増えているアジア系住民に対する「ヘイトクライム」、人種などの差別や偏見に基づく犯罪について、その背景に迫ります。

アジア系への差別

暴力などの犯罪を犯す人はごく一部ですが、アジア系への「ヘイトクライム」とみられる事件は、アメリカの主要都市で2021年に入ってからの3か月間で、前年の同じ時期の2.6倍にのぼっています。
バイデン政権も事態を深刻に受け止め、対策を強めています。
実は歴史を振り返ると、アジア系への差別は過去にも問題になってきました。
例えば、こちらにあげた「ゴールドラッシュ」や、「第2次世界大戦」、「日米貿易摩擦」などの出来事が関係しています。

今回、専門家にその背景を聞き、どうすれば乗り越えることができるのか、考えたいと思います。

移民が排斥の対象に

アメリカの移民について研究している、同志社大学の和泉真澄教授です。
アジア系への差別についてこう指摘します。
和泉さん
「いろいろな形で社会、経済が苦しくなっていったり、というような状況が起こったときに、どこかに原因を、何かのせいにしたいと」
アジア系移民への排斥運動が最初に起きたのは19世紀後半。「ゴールドラッシュ」や大陸横断鉄道の建設のため、中国大陸から、多くの労働者が入りました。
しかし鉄道が完成するとほどなく、仕事を奪われるとして排斥運動が起き、中国人労働者の移住を禁じる法律もできました。
その後、日本人労働者も移住を禁じられました。

戦争が生む偏見

戦争も差別や偏見を生んできました。
第2次世界大戦では、およそ12万人の日系人が強制収容所に送られました。
和泉さん
「敵が入ってきたときに敵兵とアメリカに住んでいる日系の人たちとの区別がつかないからとか、偏見というかステレオタイプが全部あわさって、とにかく日系人は全員敵だというふうに決められてしまった」
和泉さんはその後も、アメリカがアジアでの戦争に関わった際に、アジア系への負のイメージが強まったと分析しています。
和泉さん
「冷戦と関連して朝鮮戦争、そのあとベトナム戦争。アジアとの国際関係というのが戦争がずっと続いていくという状態になりますので、アメリカの中にはアジアに対するさいぎ心であったりとかが続いたと言えると思います」

アジア系はいつまでも“外から来た人”

また、経済の対立にアジア系が巻き込まれることも。
和泉さんによると日米貿易摩擦が激しくなった1980年代、自動車産業の中心地デトロイトで、アジア系住民が殺害されました。日本人と間違えられたためだったと伝えられています。

アメリカでアジア系に対する差別的な意識が、一部で存在し続けているのはなぜなのでしょうか。
和泉さん
「アジア系に対して、何世代たっても“アメリカの外から来た人”に違いないという、一種の人種的なステレオタイプはあると思います。外から入ってきて安い賃金で働くということで状況を悪くするという議論も片方ではありますし、アメリカに溶け込みやすい優秀な技能を持っているから、脅威であるという議論も成り立ちます。アメリカは多文化、多様性と言っているんですけれども、白人優位の国というふうな構造になっていることは否めないと思います」

差別をなくすために

こうした人種差別や偏見にアメリカ政府はどう対応してきたのでしょうか。
1965年、移民法が改正されました。
差別的な制度が改められ、アジア各地からの移民が急増しました。
1988年には、戦時中に強制収容された日系人にアメリカ政府が公式に謝罪、補償金を支払いました。
コロナ禍で広がるアジア系への暴力に対して、バイデン大統領も取り組みを強めています。ヘイトクライムを防ぐための法案に署名する意向を示し、法案は早ければ、2021年5月中にも成立する見通しです。

さらにアジア系への支援は、政治的立場や人種を超えて広がっています。
オバマ元大統領やブッシュ元大統領など、歴代大統領も次のように発言しています。
オバマ元大統領
「アジア系アメリカ人たちは、最初からこの国を形づくってきた」
ブッシュ元大統領
「アジア系アメリカ人は、アメリカを織り成す文化に欠くことのできない存在である」
和泉さんは、特に若い世代の意識の変化が、差別をなくす新たな動きを生むのではないかと見ています。
和泉さん
「Black Lives Matter(黒人の命も大切だ)の運動の時に、いろいろな若者が、例えばアジア系もAsians For Black Livesといって、黒人の命を大切に思うアジア系として参加しました。そして今度は、Stop Asian Hate(ストップ・アジアン・ヘイト)の集会に黒人の若者が入ったりとかということは、デモの現場でも見られます。たとえどんな肌の色であろうと、同じ価値のある命として尊重できるという、そのような多様性教育がだんだんとできあがっていくと、差別解消につながっていくかと思います」
バイデン大統領がアジア系への暴力を非難した際の「沈黙は共犯である」ということばが印象的でしたが、和泉さんも注目していたように、若い世代が中心となって、白人も黒人も、さまざまな人種や立場を超えて、社会の不公正を変えようとしています。

アメリカは非白人の人口が増え続け、より多様な社会に向かっています。こうしたアメリカで起きている変化、遠い話でなく身近な問題として感じたいですね。
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