愛知県知事のリコール署名偽造容疑 団体の事務局長ら4人逮捕

愛知県の大村知事のリコール・解職請求に向けた署名の大半が有効と認められなかった問題で、警察は佐賀市内でアルバイトなどを使って署名を偽造したとして、署名活動を行った団体の59歳の事務局長ら4人を地方自治法違反の疑いで逮捕しました。

逮捕されたのは、署名活動を行った団体「愛知100万人リコールの会」事務局長の田中孝博容疑者(59)と、妻のなおみ容疑者(58)、息子の雅人容疑者(28)、それに団体事務局で経理などを担当していた渡邉美智代容疑者(54)の4人です。

警察によりますと、4人は愛知県の大村知事のリコール・解職請求に向けた署名活動終盤の去年10月下旬、佐賀市内で、アルバイトなどを使って署名簿に名前を書き写させ署名を偽造した地方自治法違反の疑いが持たれています。
警察は愛知県稲沢市内にある田中事務局長の実家などを捜索しました。

署名活動をめぐっては、提出されたおよそ43万5000人分の署名のうち83%が有効と認められず、警察は大量の署名が偽造された疑いがあるとして、筆跡を鑑定したり団体の関係者やアルバイトから事情を聞いたりして捜査を進めていました。

警察は田中事務局長を中心に署名の偽造が行われたとみて、指示系統やそれぞれの役割などの解明を進める方針です。

警察は捜査に支障があるとして、4人の認否を明らかにしていません。

田中事務局長は今月、NHKの取材に対し「署名集めを広告関連会社に依頼はしたがアルバイトに書き写させるという具体的な方法は広告関連会社が勝手に計画したものだ」と述べ、署名偽造へのみずからの関与を否定していました。

田中事務局長とは

田中事務局長は衆議院議員の秘書を務めたあと、愛知県議会議員を2期務めました。

おととし行われた愛知県議会議員選挙に日本維新の会の愛知県総支部から推薦を受け、減税日本から立候補しましたが落選しています。

日本維新の会に所属し、衆議院愛知5区の支部長を務めていましたが「政治活動を続ける状態ではない」として、ことし2月末に支部長の辞退届を提出し離党しました。

本人は、名古屋市の河村市長の紹介でリコール活動に参加したと説明していて「愛知100万人リコールの会」の事務局長として、署名運動の中心を担いました。

これまでの経緯

愛知県知事のリコール・解職請求のための署名が大量に偽造された今回の事件。経緯をまとめました。

署名集めのきっかけは、愛知県などがおととし8月に開いた、国際芸術祭「あいちトリエンナーレ」でした。

3年に1度開かれ、国内外の現代アートの作品が展示された国内最大規模の芸術祭です。

その芸術祭の一部で、「表現の不自由」をテーマにしたコーナーが設けられ、昭和天皇に関する映像や慰安婦をモチーフにした少女像などが展示されました。
「芸術祭の実行委員会の会長を務めた大村知事の責任を問いたい」と、美容整形外科「高須クリニック」の高須克弥院長が会長を務める団体が、去年8月から大村知事のリコールに向けた署名活動を始めました。

高須院長は「公費を使ってプロパガンダをやったということはけしからん」などと訴えました。
名古屋市の河村市長はこの活動を積極的に支援し、「名古屋と愛知県の主催で、名古屋市民がそれを認めて展示するのですか」などと訴えました。
一方、展示を認めたことについて大村知事は「公権力をもった方がこの内容はいい、この内容は悪いというのは憲法21条の検閲ととられても、しかたがないのではないでしょうか」と話しました。

団体は、2か月の署名期間を経ておよそ43万5000人分の署名を提出しました。

リコールに必要な署名の半分ほどでした。

しかし、この署名をめぐって「提出された署名に不正なものが多数ある」という指摘が寄せられました。

愛知県選挙管理委員会は、調査の結果、有効と認められない署名が83%を占め、大量の署名が偽造された疑いがあるとして警察に告発しました。

愛知県警は、地方自治法違反の疑いで保管されていた署名簿を差し押さえるなど本格的に捜査を始めました。

一方、高須院長や河村市長は、偽造へのみずからの関与を否定し、真相の究明が必要だと繰り返し強調してきました。

そして、逮捕された団体の田中孝博事務局長もみずからの関与を否定していました。

作業依頼された広告関連会社は

団体の田中孝博事務局長から署名に関連する作業を依頼された広告関連会社の関係者によりますと、去年10月、事務局長が「とにかく人を集めてくれないか」と会社の幹部に依頼してきたということです。

このため、下請け会社を通じてアルバイトを集めたということです。

作業内容は田中事務局長から指示され、佐賀市の施設で逮捕された田中事務局長の妻と息子が立ち会って署名の書き写しが行われたと証言しています。

また、田中事務局長からは、アルバイトが代筆を行うとか、業務の管理は発注者がするといった内容の「発注書」を受け取っていて、田中事務局長の名前が直筆で書かれ印鑑も押されていたということです。

広告関連会社は、田中事務局長が逮捕されたことについて「捜査に協力しているためコメントは差し控えます」としています。