建設アスベスト集団訴訟 最高裁判決受け原告団らに菅首相謝罪

アスベストの健康被害を訴えた集団訴訟で、国の賠償責任を認める最高裁判所の判決を受けて、菅総理大臣は原告団らと面会し「内閣総理大臣として、責任を痛感し、心よりおわびを申し上げる」と謝罪しました。

建設現場での建材のアスベストを吸い込んで、肺がんや中皮腫などの病気になったとして、元作業員らが健康被害を訴えた集団訴訟で、最高裁判所は17日、国と建材メーカーの賠償責任を認める判決を言い渡しました。
これを受けて菅総理大臣は18日、総理大臣官邸で原告団や弁護団らとおよそ30分間面会しました。

この中で、菅総理大臣は「健康被害を訴えられた方々の長きにわたるご負担や苦しみ、そして、最愛のご家族を失った悲しみについて、察するにあまりあり、ことばもない。内閣総理大臣として責任を痛感し、真摯(しんし)に反省して、政府を代表して皆さんに心よりおわびを申し上げる」と謝罪しました。

そのうえで「最高裁判所の判決や、与党の取りまとめを踏まえ、皆さんの考えを十分に尊重させていただいて、早急に和解に向けた基本合意を締結したい」と述べ、与党側がまとめた救済策に沿って、原告に和解金などを支払う方針を示すとともに、訴訟に参加していない被害者に対する給付金制度の実現に取り組む考えを示しました。
これに対し、原告の1人で、夫と息子を中皮腫で亡くした大坂春子さんは「2人と一緒に現場で作業していた私の肺にもアスベストの影があり、不安で不安でたまらない。不安を胸に裁判を戦ってきたが、これで夫と息子に『国に勝ったよ、責任が認められたよ』と報告できると思うと涙が出た。裁判をせずにすべての被害者が救済される制度を作ってほしいと心から願っている」と述べました。

田村厚労相も謝罪

アスベストの健康被害を訴えた集団訴訟で、国の賠償責任を認める最高裁判所の判決を受けて、田村厚生労働大臣は、閣議のあと記者団に対し「最高裁の判決を重く受け止め、国に責任があると認められた原告の方々に対して深くおわび申し上げる」と謝罪しました。

そのうえで「与党の作業チームで、係争中の原告との早期和解や、提訴していない被害者に対する補償などを取りまとめたと承知している。早期和解に向けて、しっかり対応していきたい」と述べ、自民・公明両党がまとめた救済策に沿って、原告に和解金などを支払う考えを示しました。

公明 山口代表「全面的な解決に向け推進」

公明党の山口代表は記者会見で「被害者や遺族の長い間にわたる苦労や悲しみに改めて思いを致すところで、解決に結び付く判決が出たことを歓迎したい。給付金制度を創設するため、与党で法制化作業を進め、できれば今国会での成立を目指したい。全面的な解決に結び付いていくことを与党として推進していきたい」と述べました。

原告「夫や息子に報告できる」「企業も補償を」

原告の1人で、夫と息子を中皮腫で亡くした大坂春子さんは、菅総理大臣との面会のあと、記者団に対し「きのうまでは、まだまだ許せない気持ちが強かったが、丁寧なことばで謝ってもらい、夫や息子に『きちんと国に勝てたので、安心して眠ってね』とちゃんと報告できる」と述べました。

そのうえで、19日に78歳の誕生日を迎える大坂さんは「今までは『けりがつくまでは、迎えに来ないでね』と言ってきたが、『気楽に生きるかな』という感じになった。本当に長かったが、自分自身、けじめをつけられる思いだ」と涙ながらに話しました。

同じく原告の1人の、大園キヨさんは「菅総理大臣に謝ってもらい、国には前向きにやってもらえることを期待しているが、企業は、まだこっちを向いてくれない。国も企業も共同責任であり、それを認めてほしいが、企業はのらりくらりだ。企業にも少しは分かってもらい、補償してもらいたい」と述べました。

弁護団「被害者救済を」

建設現場でのアスベストの健康被害を裁判で訴えていた元作業員と遺族、それに弁護団が18日、菅総理大臣と面会し、謝罪を受けました。

このあと弁護団や支援者が東京 千代田区で集会を開き、弁護団長の小野寺利孝弁護士は「全国の原告や被害者を代表して、総理の謝罪のことばを受け取った」と報告しました。

そのうえで、小野寺弁護士は、菅総理に対して、数万人に及ぶ被害者がいて今後も増え続けるという事実を踏まえ、関係省庁を強く指導して救済に向けて取り組んでいくことや、建材メーカーにも共同して責任を負わせる新たな施策を検討するよう要請したことを明らかにしました。
また、総理と面会した電気工事の元作業員の宮島和男さん(91)は「判決が出るまでの13年間という年月は非常に長かったが、総理から謝罪のことばを聞くことができて、うれしく思う気持ちとともに、これまでに亡くなった多くの原告のことを思い、涙が出る思いもあった。国はこれから、和解や補償に向けた取り組みをしっかりと進めてほしい」と話していました。

救済策の内容は

今回の救済策では、全国の裁判所で、別の集団訴訟の審理が続いていることを踏まえて、国が原告に対し、和解金を支払うとしています。

和解金の額は、症状に応じて、550万円から、死亡した場合には最大で1300万円となります。

また、和解金に加え、長期間にわたる訴訟の負担などを考慮して、解決金を支払うとしています。

さらに、訴訟を起こしていない被害者に対しても、和解金と同額の給付金を支給するとしていて、与党の作業チームは、財源として、国が拠出する形で新たな基金を創設するための関連法案を、今の国会に議員立法で提出したいとしています。

一方、基金をめぐっては、原告側が、建材メーカー側にも拠出するよう提案してきましたが、裁判所が認めた責任の程度がメーカーごとに異なるなどとして見送られました。

このため、与党の作業チームは、引き続き、建材メーカーの負担のあり方などについて検討するとしています。