【詳報】ワクチン「むだない接種実現したい」その取り組みとは

一般の高齢者を対象にした新型コロナウイルスのワクチンの接種や予約が本格的に始まっていますが、電話やインターネットでの先着順の受け付けではアクセスが集中して予約が取れないといった苦情や、急な予約のキャンセルなどで余ったワクチンが廃棄されるなどの問題が各地で起こっています。
各自治体は、貴重なワクチンをできるだけ早く、多くの人たちに確実に接種してもらおうと、対策に知恵を絞っています。

急なキャンセルには “広報”で希望者募る 東京 墨田区

東京 墨田区では、一般の高齢者を対象にした新型コロナのワクチン接種が今月10日から始まりました。
区は、7月中を目標に希望する高齢者の接種を終わらせるため、個別接種を行う医療機関で予約の枠に空きが出たり、新たに枠が増えたりした際には、ツイッターやフェイスブックを使って速やかに知らせています。
これはワクチンに関する区民への情報提供体制を強化しようと、ことし4月に、広報担当の部署からワクチン担当の部署に異動してきた2人の職員の発案で始めました。
17日も、区内の医療機関で接種の枠に空きが出ているという情報が寄せられると、職員がただちにSNSに投稿して接種を希望する人を募っていました。

墨田区では、これまで行ってきた高齢者の集団接種で、およそ7割の人が予約をインターネットで行っていたことから、子どもや孫などの若い世代が多くの高齢者の予約をサポートしていると見ています。
このため、SNSの発信には一定の効果があると考えていて、今後も、発信を強化していく考えです。
さらに17日からは、区の防災用のメールを使った情報発信も始め、さまざまなツールを使ってむだのない接種を実現させたいとしています。
広報の部署から異動してきた、墨田区保健所の菅沼竜一主査は「予約の空き情報を発信することで、1度とった予約でも、変更してなるべく早く接種してもらえるように促しています。これからも多くの人に情報を届けていきたい」と話していました。

アクセス集中 “予約確保”への対策は

ワクチン接種の予約申し込みにあたっては、電話やインターネットなどで受け付けをする自治体が多く、アクセスが集中して予約がなかなか取れないといった苦情が相次いでいます。

抽選方式に切り替え 兵庫 加古川

今月8日から80歳以上のおよそ2万4000人を対象に、市内5か所の会場で新型コロナウイルスワクチンの集団接種を始めた兵庫県加古川市。
当初、予約は電話やインターネットで先着順で受け付けましたが、アクセスが集中し「なかなか予約が取れない」という苦情が相次いだことを受けて、18日から、抽選方式に切り替えました。
ネットで希望する日時と会場を選ぶか、日時などを市側に任せるかを選ぶ仕組みになっていて、最初の抽選には、およそ5300人の枠に対し、1万2000人余りの申し込みがありました。

午前10時に担当者がパソコン上で、開始のタグをクリックして抽選を行い、今後、「当選者」には予約決定通知書が送られるということです。

一方、今回外れた人については自動的に次の抽選に組み込まれることになっていて、加古川市では次回の抽選を今月28日に行うことにしています。
抽選に申し込んだ84歳の男性は「孫に頼んでインターネットで予約の希望を申し込みました。結果は気になりますし、当たっていればうれしいです」と話していました。
今後、抽選の対象になる68歳の男性は「テレビで見るように先着順で電話を何度もかけないといけないことを思えば、抽選はいい方法だと思います。焦らずにすむし、公平感もあると思う」と話していました。
加古川市地域医療課の多田功担当副課長は「希望の会場や曜日を聞いた上での抽選なのでキャンセルも少ないと思います。外れた方もいずれ当選しますので安心してお待ち頂きたいです」と話していました。

臨時のコールセンターで対応 神奈川 鎌倉

また、神奈川県鎌倉市では17日から、今年度65歳以上となる高齢者の新型コロナウイルスのワクチン接種の予約が始まりましたが、インターネットと通信アプリ「LINE」による予約は、2回に分けて行われたもののいずれも10分ほどで埋まり、コールセンターも終日つながりにくい状態が続きました。
このため、市役所に苦情や問合せが数百件寄せられたということで、市は臨時のコールセンターを設けて対応にあたっています。

18日も午前9時から相次いで電話がかかってきて職員およそ20人が、来月17日に次回の予約が行われることなどを案内していました。
鎌倉市新型コロナウイルスワクチン接種担当の菊池隆担当課長は「予約が取りづらい状況になり大変、申し訳ないです。ワクチンは高齢者のみなさんに必ず受けていただけるので、焦らずに予約してもらいたい」と話しています。

接種迅速化に歯科医師を活用 神奈川 大和

新型コロナウイルスのワクチン接種を少しでも早く進めようと、神奈川県大和市では18日、研修を受けた歯科医師が住民への接種を行いました。

大和市は市立病院に勤務する歯科医師の小澤知倫さんに接種を担ってもらうことを決め、これまでに必要な研修を受けてもらいました。

小澤さんは18日、保健福祉センターで行われた85歳以上を対象とした集団接種で、検温や予診を終えたお年寄りたちに実際にワクチンを接種しました。

担当した14人に対して1人1人、体調を確認してアルコール消毒を行ったあと、安定した手さばきで腕への筋肉注射による接種を進めていました。

厚生労働省は担い手の確保が難しい場合、歯科医師によるワクチンの接種を特例で認めていて、日本歯科医師会によりますと、歯科医師による住民への接種は全国で初めてとみられるということです。

接種を受けた87歳の女性は「最初は怖くて緊張しましたが、痛みもなくすんなり終わってよかったです」と話していました。
小澤さんは今後も大和市の行うワクチンの集団接種に参加することにしていて、「ふだん行っていない筋肉注射だったので、緊張感はありましたが、トラブルなく接種できてよかったです。歯科医師も接種を担えることに意義を感じています」と話していました。

企業で“ワクチン休暇” 導入の動きも

新型コロナウイルスのワクチン接種について、接種を受ける時間を勤務時間として認めるなど、従業員やその家族が接種を受けやすくする“ワクチン休暇”の制度を導入する企業が出てきています。
IT大手ヤフーは、接種を受ける時間を勤務時間として認めたり、副反応などで体調がすぐれない場合に、特別休暇を取得できる制度を、今月12日から導入しました。

さらに、この会社では、家族が接種を受ける際の付き添いや、家族に副反応が出た場合の看病についても、年次休暇とは別の「積み立て休暇」の取得事由として認めることにしました。

この会社の「積み立て休暇」は、自身が病気になったり、家族の介護をしたりする際に取得できるものです。
この日は、80代の両親の接種に付き添う女性社員がオンラインで上司に休暇の取得を申し出ていました。
ヤフーによりますと、社員からはこうした制度を歓迎する声が寄せられているということです。

休暇の取得を申し出た鈴木麻未さんは「親が高齢なので、こうした制度はありがたいです。副反応も不安ですし、同じ悩みを抱える同僚もいるのでこうした悩みに会社が動いてくれると、接種を受けやすくなると思います」と話していました。
この制度を担当するグッドコンディション推進室の市川久浩室長は、「社員の安心安全を守ることがいい仕事につながると思っているので、接種を希望する人やその家族を最大限サポートしたいと考えている。今後も新型コロナに関するさまざまな課題について、素早く対応していきたい」と話していました。
このほか、三菱電機はワクチン接種を希望する従業員は、従来の有給休暇とは別に平日に半日や1日の有給休暇を取得できるようにし、副反応が出た際でも休めるようにしています。
明治安田生命と住友生命も、ワクチンを接種したり副反応が出たりした場合に休暇を取得できるようにしました。
メルカリなども社員が勤務時間にワクチンを接種することを認め、副反応が出たり、家族の接種の付き添いが必要になったりした場合には休暇を取得できるようにしています。

“休暇”の導入検討 経団連に河野大臣が要請

ワクチン休暇をめぐっては、河野規制改革担当大臣が今月13日、経団連に対し、導入の検討を要請していて、企業の間では休暇制度を見直すことで働く人が接種しやすい環境を整える動きが広がっています。