昨年度のGDP -4.6% リーマンショック超える最大の下落

内閣府が18日発表した昨年度・2020年度のGDP=国内総生産は、新型コロナウイルスの影響で実質の伸び率がマイナス4.6%となり、比較可能な1995年度以降で最大の下落となりました。合わせて発表したことし1月から3月までのGDPは、前の3か月と比べた実質の伸び率が、年率に換算してマイナス5.1%と、3期ぶりのマイナスとなりました。

内閣府が発表したGDPの速報値によりますと、昨年度の年間のGDPは、物価の変動を除いた実質の伸び率が前の年度と比べてマイナス4.6%となりました。

新型コロナウイルスの影響で、個人消費や輸出、それに企業の設備投資が大きく落ち込んだことが要因で、リーマンショックが起きた2008年度のマイナス3.6%を超えて、比較可能な1995年度以降で最大の下落となりました。
また、合わせて発表した昨年度最後の四半期にあたることし1月から3月までの実質GDPの伸び率は、前の3か月と比べて、マイナス1.3%でした。これが1年間続いた場合の年率に換算するとマイナス5.1%で、3期ぶりのマイナスとなりました。
項目別にみますと、GDPの半分以上を占める「個人消費」は、1月に出された緊急事態宣言の影響で、飲食や宿泊関連が落ち込み、マイナス1.4%となりました。

「輸出」は、世界的な半導体不足の影響もあって自動車が伸び悩み、プラス2.3%と、前の期のプラス11.7%から大幅に鈍化しました。

「企業の設備投資」はマイナス1.4%と、2期ぶりのマイナスとなりました。

内閣府は、足もとのことし4月から6月までのGDPについて、企業の生産や輸出は堅調に推移しているが、肝心の個人消費が3回目の緊急事態宣言などでどれだけの影響を受けるかが焦点になるとみています。

昨年度のGDP 四半期ごとにみてみると

昨年度・2020年度のGDPの伸び率を四半期ごとに振り返りますと、1度目の緊急事態宣言が出た去年4月から6月までは、年率換算で前の期と比べてマイナス28.6%と歴史的な急落となりました。

その後は、感染が落ち着いたことやGo Toキャンペーンの効果などもあって、いずれも年率換算で7月から9月はプラス22.9%と大幅な伸びとなり、10月から12月もプラス11.6%と、回復が続きました。

しかし、感染の再拡大を受けて、ことしに入って2度目の緊急事態宣言が出され、18日発表された1月から3月までは年率換算でマイナス5.1%と3期ぶりのマイナスとなり、回復の動きに急ブレーキがかかりました。

この結果、昨年度を通してみるとマイナス4.6%と、政府の見通しのマイナス5.2%ほどではないものの、大幅な落ち込みとなりました。今後も急速な回復は見通せない状況です。

3度目の緊急事態宣言の影響で、ことし4月から6月までのGDPは伸び悩みが確実とみられ、エコノミストの間では、2期連続のマイナスに陥るという見方もあります。

政府は、来年の春までにGDPの規模をコロナ前の水準に戻すとしていますが、実現に向けては、希望者へのワクチンの接種を早期に進めて、感染拡大を抑え込めるかがカギとなります。

国や地域で経済の回復ペースに違いも

世界のGDPの推移をみると、感染拡大の状況などで経済の回復ペースには違いがみられます。

アメリカ ワクチン接種や大型の経済対策の効果も

前の3か月と比べたことし1月から3月までの実質GDPの伸び率をみますと、アメリカは年率換算でプラス6.4%と、3期連続のプラスとなりました。ワクチンの接種が広がり、経済活動が戻っていることに加え、大型の経済対策の効果も現れました。

中国 企業の生産活動など拡大

中国は、年率換算ではありませんが、プラス0.6%と、4期連続のプラスとなりました。世界的な巣ごもり需要の高まりで、電子機器などの輸出が好調だったほか、企業の生産活動や不動産開発投資の拡大が続きました。

ユーロ圏 変異ウイルスで経済活動など厳しく制限

一方、ヨーロッパは、日本と同じように回復への動きが足踏み状態にあります。
ドイツやフランスなどユーロ圏19か国は、年率換算でマイナス2.5%と、2期連続のマイナスとなりました。変異したウイルスによって感染拡大が再び深刻になり、各国で経済活動や外出が厳しく制限されたことが響きました。

麻生副総理「個人消費がドーンと落ちている」

麻生副総理兼財務大臣は、閣議のあとの記者会見で「外出自粛もあったため、個人消費がドーンと落ちている。これがいちばん大きかった。ただ先行きは、支援策としていろいろなことをしているため持ち直しの動きは出てくるだろう」との認識を示しました。

また、世界経済について麻生大臣は「国や企業などで回復にばらつきはあると思うが、ワクチンの効果もあって持ち直していくことは間違いないと思っている。引き続き、ワクチンの接種などをやっていかないといけない。先行きを心配しているわけではない」と述べました。

西村経済再生相「感染対応で当然の数字だ」

昨年度のGDP=国内総生産が、比較可能な1995年度以降で最大の下落となったことについて、西村経済再生担当大臣は、閣議のあとの会見で「昨年度は4月と5月に緊急事態宣言で意図的に経済を止めたので、感染を抑えるためのやむを得ない対応で、ある意味、当然の数字だと受け止めている」と述べました。

今後の見通しについては「3度目の緊急事態宣言で大型連休中は厳しい措置をお願いしたので、当然、一定の落ち込みは覚悟しないといけない。そうした中で、海外経済の回復に伴う輸出、企業のデジタル化への投資意欲など前向きな動きを全力で後押ししたい」と述べました。

一方で、西村大臣は「厳しい影響を受ける方々には目配りをしなければいけない。事業、雇用、生活を守っていくという基本的な方針で、予備費の活用も考えていく」と述べました。