札幌の病院 病床ひっ迫など危機的な事態 若い世代の入院相次ぐ

16日、緊急事態宣言が出された北海道では、連日、300人を超える新たな感染者が報告されていて、札幌市にある病院では、若い世代の入院が相次ぎ、病床がひっ迫するなど、これまでにない危機的な事態に直面していることがわかりました。

NHKが今月はじめから取材した札幌市にある「KKR札幌医療センター」では、20代から50代の若い世代の入院が相次いでいて、高齢者が大多数を占めたこれまでの感染拡大とは異なる事態だとしています。

これらの患者の中には、重症化して人工呼吸器を備えたICU=集中治療室での治療を必要とする人もいて、一般の病床だけでなく、ICUの病床もひっ迫する事態となっています。

さらに、発熱などの症状が3週間続く患者もいるなど、入院が長期化する傾向があり、センターでは、「1人当たりの入院期間が4日ほど延びている」としたうえで、病床ひっ迫の要因の1つになっているとしています。

この背景について、センターは、北海道で感染が拡大している変異ウイルスがあるとみていて、このまま感染拡大が続けば、「救える命も救えなくなるほど、病床がひっ迫する」との危機感を募らせています。

「KKR札幌医療センター」でコロナ対策の指揮を執る福家聡医師は、「なんとかやりくりして、急病でかつ重症の患者をなるべく滞りなく受け入れるように日々体制を整えているが、その中でも救急車などの要望に応えられないというケースも出てきている。医療崩壊ということばがあるが、札幌市の医療が回らなくなる事態がもしかしたらもう目の前に迫ってきているのかもしれない」と話しています。

新規感染者数が過去最多をたびたび更新 背景に変異株

北海道内では今月に入り、1日当たりの新たな感染者が過去最多をたびたび更新する形で報告されていて、背景には、変異ウイルスの感染拡大があると指摘されています。

道内はこれまでに感染拡大の「波」を3つ、経験していて、1日当たりの新たな感染者は、「第3波」のピークだった去年11月20日の304人が最多でした。

ところが、今月2日にこれを超える326人の感染が確認されると、今月8日には403人、さらにその翌日の9日には、506人となり、「第3波」を大きく超えるようになります。

そして、大型連休が明けた今月13日には、712人の感染が確認され、その後も500人を超える感染者が報告されました。

なかでも特に札幌市での感染拡大が顕著で、今月9日に327人と300人を初めて超えると、今月13日には、499人の感染が明らかになるなど、道内全体の6割以上を占める日が相次いでいます。

「第3波」よりも感染者が大きく増えている背景について、専門家は、変異ウイルスの感染拡大が一因にあると指摘しています。

北海道では、イギリスで最初に確認された変異ウイルスの感染が広がっていて、道などによりますと、今月6日から12日の1週間に道内で新たに感染が確認された患者の85%から、この変異ウイルスが検出されています。

国立感染症研究所・感染症危機管理研究センターの齋藤智也センター長は、「変異ウイルスは感染力などが高いため、感染者の数が急速に増加してしまう。感染拡大を抑えるには、これまで以上の強い措置が求められる」と指摘しています。

病床の使用率 札幌市では97%とほぼ満床の状態

北海道内の医療提供体制はすでにひっ迫していて、特に札幌市では、病床の使用率が97%と、ほぼ満床の状態となっています。

まず道全体でみると、16日の時点で使用されている病床は、957床で、道は最大で1809床を用意する方針を明らかにしていることから、これをもとにした使用率は、52.9%となります。

しかし、ホテルなどの施設で療養している感染者が、436人、こうした施設に入って療養してもらうために日程を調整しているのは、2419人、自宅などで療養しているのは1501人となっていて、感染者の増加に病床などの準備がなかなか追いつかない状況が続いています。

特に深刻なのが札幌市で、16日の時点で、重症者は26人、入院患者の総数は398人となっていて、すぐに使える病床、410床に対し、使用率が97%とすでにほぼ満床の状態になっています。

このため札幌市では、一部の患者を市外の医療機関に搬送していて、市によりますと、その数も、3月には1件だったものが4月には17件、今月は11日時点で18件と増えています。

さらに札幌市は、入院での治療を必要としながら、すぐには入院できない感染者を一時的に治療するための待機施設、「入院待機ステーション」の運用を17日から始めるとしています。