1型糖尿病障害基礎年金打ち切りで訴え 1人除き退ける 大阪地裁

免疫の異常などで血糖値を下げるインシュリンを体内で作れなくなる「1型糖尿病」の患者9人が、症状の改善がないのに障害基礎年金の支給を打ち切られたのは不当だと国を訴えた裁判で、大阪地方裁判所は、1人を除いて訴えを退けました。

この裁判は、大阪や奈良などに住む「1型糖尿病」の患者9人が起こしていたものです。

「1型糖尿病」は、免疫の異常などで、すい臓の細胞が壊れ、体内で血糖値を下げるインシュリンが作れなくなる病気です。

原告らは5年前、長年受給していた障害基礎年金の支給を打ち切られたことから国を訴える裁判を起こし、おととし全員の勝訴が確定しました。

ところが、その判決の1か月後、国が改めて行った審査で再び不支給と決めたため、2回目の裁判を起こし「症状に改善がないのに打ち切るのはおかしい」と主張していました。

17日の判決で、大阪地方裁判所の森鍵一裁判長は「患者の状態が改善したかどうかではなく、あくまで審査の時点で支給対象の障害の等級に該当しなければ、年金を打ち切ることは許される」と指摘しました。

そのうえで、患者の状態については「独力での日常生活が極めて困難で、働いて収入を得ることができないかどうかを判断基準とすべきだ」と述べ、原告のうち1人については支給の打ち切りを違法と判断しましたが、残り8人については訴えを退けました。

原告弁護団長「不当な判決」

原告の患者9人のうち8人の訴えを退けた判決について、原告弁護団長の川下清弁護士は「予想していなかった判決で戸惑っている。支給を停止した5年前の診断書の記載のみで判断していて、症状が改善していなくても支給の打ち切りを認める不当な判決だ」と話していました。

原告のうち、訴えを認められなかった滝谷香さんは「私も主人も1型糖尿病なので、将来のことが不安になりました。2人とも医療費がかかるので、私たちの命をどう考えているのか疑問に思いました」と話していました。

厚労省「国の主張がおおむね認められた」

判決について厚生労働省は「国の主張がおおむね認められたと受け止めている」とコメントしています。

これまでの経緯

1型糖尿病の患者が障害基礎年金を受給するには、重い順に1級から3級に分類される障害のうち、2級以上に認定される必要があります。

原告らは最も長い人で16年間、2級と認定されていましたが、平成28年に突然「3級に該当する」として支給を打ち切られました。

その際の国からの通知書には「障害の状態が年金を受け取れる程度でなくなったため」とだけ書かれ、理由は一切示されていませんでした。

患者らは、症状が改善していないのに理由を明らかにせず打ち切るのは不当だとして、翌年、平成29年に裁判を起こしました。

裁判で国側は「支給額の変更通知は年間700万件に上り、個別に説明するのは困難だ」と反論しましたが、大阪地方裁判所は、おととし4月の判決で「年金の打ち切りは重大な不利益処分で、理由がわかるようにすべきなのに通知は結論のみの簡素なもので違法だ」として、年金の支給を打ち切った国の決定を取り消しました。

国は、この判決自体は受け入れ、原告の勝訴が確定しましたが、その1か月後に改めて審査を行い、原告らに支給を打ち切る決定をしました。

その際の通知書には、診断書の引用が若干加えられただけで、症状が改善していないのに支給を打ち切った理由は記載されていませんでした。

こうした国の対応を受け、原告らはおととし7月、再び裁判を起こしました。

2回目の裁判で国側は「支給を停止するかどうかの判断に、過去との比較は要件ではない。審査した時点の症状、日常生活能力などの事情を考慮した」と主張していました。

「1型糖尿病」とは

「1型糖尿病」は、免疫の異常などで、すい臓の細胞が壊れ、体内で血糖値を下げるインシュリンが作れなくなる病気です。

過食や運動不足などの生活習慣が要因となって主に成人してから発症する「2型糖尿病」と異なり、自己免疫疾患の「1型糖尿病」は多くの場合、未成年で発症します。

根本的な治療法はなく、患者は1日に複数回、インシュリンの注射が必要ですが、成人の患者には医療費の助成なく、訴えを起こした患者らは障害基礎年金を医療費に充ててきました。