アパート階段崩落 女性死亡 ほかの物件でも ずさんな工事か

先月、東京 八王子市のアパートで階段の一部が崩れ落ちて住人の女性が死亡した事故で、工事を行った神奈川県の建設会社のもとで働いたことがあるという職人の男性がNHKの取材に応じ、ほかの複数の物件でもずさんな工事が行われていた実態を証言しました。

先月17日、八王子市のアパートで階段の一部が崩れ落ちて住人の58歳の女性が死亡した事故では、踊り場に木材が使われ、階段との接続部分が腐食していたことが分かっています。

工事を行ったのは神奈川県相模原市の建設会社「則武地所」で、この会社のもとで複数のアパートなどの建設に携わったことがあるという職人の男性がNHKの取材に応じました。

男性によりますと、則武地所が手がけたアパートでは会社の幹部が階段の工事を行っていて、今回、事故が起きた八王子市のアパートのように踊り場に木材が使われるケースが多かったということです。

また、階段の踏み板が人が乗ると曲がるほど薄かったり、接続部分の溶接が不十分だったりと、一見して危険だと分かる状態のものばかりだったとしています。

男性は「階段は踏み板の形がそろっていないような雑な作りで、『これで大丈夫なのか』『落ちるんじゃないのか』と現場の人たちはみんな話していた。怖いので、階段ではなく作業用の足場で上り下りしていたほどだ。則武地所の幹部からは『アパートは入居者にとっては自分の財産ではないので、多少仕上がりが悪くてもクレームは来ない』と言われたこともある」と話しています。

さらに、八王子市のアパートのほかにも、階段の一部が落ちるなどして社員が現場で対応にあたったケースが複数あるということです。

今回の事故について、男性は「ついに起きてしまったというのが正直なところだ。今思えば、私たち職人の側から『おかしい』と告発することもできたかもしれない。しかし、当時はやり方に納得できない職人は辞めていき、結果的に目をつぶることになってしまった」と話していました。

国土交通省が他のアパートに現地調査 腐食も確認

国土交通省は16日、「則武地所」が工事を行ったほかのアパートについて、専門家とともに緊急の現地調査を行いました。

国土交通省によりますと、この建設会社が手がけたアパートは東京都と神奈川県にほかにも合わせて166あるということです。

国土交通省はこのうち、八王子市と神奈川県厚木市から階段の劣化などの報告があった6つの物件について現地調査を行ったもので、調査の結果、いずれの物件でも外付けの階段に木材が使われ、数か所で接続部分などが腐食していることが確認されたということです。

中にはただちに修理が必要なケースもあったということで、国土交通省は今後、自治体を通じてオーナーに対応を求めることにしています。

国土交通省建築物防災対策室の今村敬室長は「外見はきれいでも、内部をしっかり見ないと安全かどうか判断しきれないので、オーナーには早急に詳しい調査などを行ってほしい」と話していました。

現地調査した物件の住民は…

国土交通省が今回、現地調査を行った物件のうち、八王子市の3階建てのアパートに住む18歳の女性によりますと、築5年にもかかわらず階段のさびが目立ち、5日ほど前には接続部分に使われていたとみられる釘がさびた状態で踏み板の上に落ちていたということです。

女性は「1か月ほど前に入居しましたが、見た目は新しいのに階段がさびていたりするのでおかしいなと思っていました。まさか事故が起きたアパートと建設会社が同じだとは思わなかったので怖いです。早く修理してもらい、みんなが安心して暮らせるようにしてほしい」と話していました。

また、八王子市の別の3階建てのアパートに住む20歳の女子大学生によりますと、遅くとも1か月ほど前から2階につながる階段の踏み板の一部に亀裂が入り、沈み込んでいる状態だということです。

階段には「危険ですので踏まないようにしてください」という貼り紙とともにコーンが設置されていますが、修理が行われる様子はないということで、女子大学生は「大家や管理会社などから連絡は一切ありません。階段は毎日使わなければ生活できないので困っています」と話していました。