ミャンマー 経済悪化で困窮者増加 市民団体が食料支援も…

ことし2月のクーデターから3か月余りたったミャンマーでは、混乱が続く中で経済の悪化が顕著で、仕事や収入を失って困窮する人が増えています。
現地では、こうした人たちに食料を支援する動きが続いていますが、支援団体は市民の団結を恐れる軍を警戒しながら活動しています。

ミャンマーでは軍による市民への弾圧が続いていて、現地の人権団体によりますとクーデター以降これまでに790人が死亡しました。

軍はまた、市民の抗議活動を抑え込むためインターネット通信の制限や夜間の外出禁止令を続けています。

この影響で経済活動が低迷し、仕事や収入を失う人が増えていて、UNDP=国連開発計画は、来年初めまでには貧困率が人口の半分近くにまで上昇するおそれがあると指摘しています。

各地の支援団体は困窮している人たちに食料の提供を続けていて、このうちヤンゴン郊外で活動する団体は、スラム街などのおよそ2000世帯にコメや食用油、タマゴ、野菜、粉ミルクなどを配っています。

土木工事現場などで日雇いの仕事をしている30歳の男性は「クーデター後、仕事を安定的に得られず、生活は厳しい。この状況を支えてくれる支援団体には感謝している」と話していました。

食料を調達する資金の8割は、海外に住むミャンマー人からの寄付金で賄っているということです。

ただ、こうした活動はクーデターへの抗議や「不服従運動」を続ける市民の団結につながるとして軍の弾圧の対象とされるおそれがあり、支援団体によりますと、実際にヤンゴン市内でも支援者が身柄を拘束される事例が出ているということです。

このため団体では、目立たない場所に食料を保管していて、生活困窮者のもとに運ぶ際も治安部隊に遭遇することがないよう細心の注意を払って経路やタイミングを決めているということです。

団体の代表は「軍の指導者たちはこうした支援活動がもたらす結果を恐れている。彼らは人々が助け合っているのを見たくない」と話していて、今後も警戒しながら活動を続けていくとしています。

生活や経済にも影響

軍が設置した最高意思決定機関「国家統治評議会」は、クーデターに対する市民の抗議活動が拡大して以降、全土で夜間外出禁止やインターネットの通信制限などの措置をとりました。

その後、経済活動の再開を促そうと、先月末ごろから、こうした措置を段階的に緩和しています。

ただ中心部では、いまだにシャッターを閉じている店が多く残っています。

また、多くの銀行の店舗は「不服従運動」の影響などで閉まったままで、ATMで引き出せる現金の量にも限度があるため、ATMの利用を待つ人々の列はさらに長くなりつつあります。

アジア開発銀行は、ミャンマーのことし9月末までの1年間の経済成長率がマイナス9.8%に落ち込むという見通しを示しています。

「余ったものをください」物々交換も

ミャンマーではほとんどの銀行が閉まり、ATMで引き出せる現金は1回につき日本円で1万4000円ほどまでに制限されていることから、市民は深刻な現金不足に陥っています。

また経済活動の低迷により、仕事を失い現金収入を絶たれた人も大勢出ています。

こうしたことを背景に、各地で物々交換を行う市場が開かれるようになっています。

ヤンゴン市内の住宅地で市民団体が不定期に開いている市場では「余ったものをください。そして必要なものを持って行ってください」と書かれた看板を掲げた台車の上に野菜や魚などが並べられ、集まった住民たちは自宅にあった食材を置いていくかわりに必要な食べ物を持って帰っていました。

日本人も支援

困窮する人たちへの支援には現地に在住する日本人たちも参加してきました。

ヤンゴンでフードデリバリーなどのビジネスを行っていた高田健太さんは、クーデターから3週間ほど後、ミャンマーに関わりを持つ日本人などに寄付を呼びかけ、50トン近くのコメを調達しました。

そして貧困層が多く暮らす地区まで数回に分けて運び、1世帯に4キロずつ配りました。

コメを受け取った65歳の日雇い労働者の男性は「必要な食べ物をいただいて本当に本当に助かります。提供してくれた日本人たちに私たちの感謝の気持ちを伝えてください」と話していました。

高田さんは「クーデターが起きてわれわれ日本人が政治的な発言をするのは非常に危険ですし、われわれが変えられることもなかなかないという状況のなか、貧困層の支援というのは個人の力でもできると思いました」と話していました。

高田さんは、クーデターで事業環境が悪化したため撤退を決め、先月上旬に帰国しましたが、現在もヤンゴンにとどまる仲間とともに貧困層を支援する活動を続けています。

向こう半年間で340万人が飢えに苦しむおそれ

WFP=世界食糧計画は、ミャンマーでは新型コロナウイルスの影響に加えて、クーデター後の経済の悪化でヤンゴンなどの都市部を中心に、向こう半年間で340万人が飢えに苦しむおそれがあるという試算を発表しています。

WFPミャンマー事務所のスティーブン・アンダーソン代表は、NHKの取材に対して「ミャンマーの人々は非常に強い助け合いの文化を持っている。しかし以前は提供されていた社会的な保護が今は体系的には提供されなくなっている」と述べて、外部からの支援が必要だと指摘しました。

そのうえで「WFPの支援の規模を拡大し今後半年間維持するために、国際社会の支援の広がりが必要だ」と呼びかけています。