ヤングケアラー 早期発見し支援につなげる体制強化を 報告書案

家族の介護などに追われる子どもたち、いわゆる「ヤングケアラー」について、国のプロジェクトチームが、学校や地域などで早期に発見して支援につなげる体制を強化することなどを報告書案にまとめたことが分かりました。

家庭で、両親や祖父母、きょうだいの介護や世話などをしている子どもたちは「ヤングケアラー」と呼ばれ、国の調査では中学2年生のおよそ17人に1人、全日制の高校2年生のおよそ24人に1人が「世話をする家族がいる」と回答しています。

厚生労働省と文部科学省は、ことし3月に合同でプロジェクトチームを設置し、支援策を盛り込んだ報告書の案をまとめました。

それによりますと、ヤングケアラーを早期に発見して支援につなげるため、教育委員会の担当者だけでなく、医療機関のソーシャルワーカーやケアマネージャー、児童委員、それに子ども食堂のスタッフなど地域や民間も対象にした研修を行います。

また、相談体制を強化するため、子ども時代に家族を介護した経験のある人が対面やSNSなどで相談に応じる事業やソーシャルワーカーやカウンセラーを学校に配置する自治体への支援も検討するということです。

このほか、一部の福祉機関などが、ヤングケアラーを大人と同等の「介護力」と見なしているという指摘を受け、自治体や関係団体に対し、子どもによる介護を前提とせずに在宅サービスの利用を十分に検討することなどを周知するなどとしています。

プロジェクトチームは、17日午後の会合で報告書を取りまとめたうえで具体的な制度づくりに取りかかることにしています。

ヤングケアラー先進国 イギリスに見る支援の実態

ヤングケアラーへの支援をめぐっては、イギリスが世界的な“先進地”として注目されていて、1990年ころから調査や対策が行われてきました。

また、ヤングケアラーということばもイギリスが発祥とされています。

ヤングケアラー研究の第一人者、ケンブリッジ大学のソール・ベッカー教授によりますと、イギリスでは1990年前半にヤングケアラーの存在が社会的に知られるようになり、1996年にははじめてイギリス政府による実態調査が行われたということです。

その後、2014年には「子どもと家族に関する法律」が定められ「他の人のためにケアを提供している、または提供しようとしている18歳未満の者」としてヤングケアラーが明確に定義されたほか、地方自治体に対して、ヤングケアラーに具体的に必要な支援を査定するアセスメントを行うことを義務づけました。

また、支援を必要としているヤングケアラーに対する具体的な支援は、地元自治体から助成金などを受けたチャリティー団体が担う仕組みになっていて、こうした団体はイギリス国内で、少なくとも300あるとされています。

このうち、イギリス中部シェフィールドにある支援団体では、ヤングケアラーが集まって、家族の介護に関する悩みや不安を共有する場を毎週、設けているほか、担当者が定期的に相談に乗ったり、家庭を訪問したりして適切な公共サービスにつなぐ取り組みを行っています。

さらに、支援が必要なヤングケアラーを見つけ出すために、地域の学校や警察、それに医療機関などが定期的に集まり、子どもに関する情報共有を行う場を設けたり、学校と連携して、教職員やソーシャルワーカーに対して子どもの異変を見抜く研修を行ったりしていて、毎年、新たに200人のヤングケアラーを支援につなげているということです。

支援団体の代表をつとめるサラ・ゴーウェンさんは「親が突然、介護が必要になるなどして、新たにヤングケアラーになる子どもは増えているため、支援につなげられていないヤングケアラーを見つけ出す努力を続けなければならない。子どもへの負担や責任が大きくなりすぎることが問題で早く支援につなげないと将来に悪影響を及ぼしかねない」と話しています。

またゴーウェンさんは「ヤングケアラーは担っている負担が適切ではない場合があり、介護の物理的な負担を減らす取り組みと、心のケアの両方の支援が求められている」と述べ、一人一人の状況に応じた支援が必要だと指摘しています。

日本の実情にあった支援制度を

ケンブリッジ大学のソール・ベッカー教授は、1993年に発表した学術論文でヤングケアラーについて、支援が必要な存在であることを世界に先駆けて明らかにし、これまでに各国の支援に向けた政策提言をしてきたヤングケアラー研究の第一人者です。

ベッカー教授は「どの国にもヤングケアラーは存在する」と指摘したうえで、オーストラリアや北欧などでも支援の動きが進んでいる一方、支援制度がある国は依然として一部に限られているという見方を示しました。

ヤングケアラーへの支援について模索が始まった日本に対してベッカー教授は「実態調査を複数回行い、日本のヤングケアラーがどのような状況にあり、彼らの発達や教育にどのような影響があるのか把握することが先決だ」と述べたうえで、行政や民間団体などの関係機関が集まる場を設け、日本の実情に合った支援制度を考えていく必要があると指摘しています。

また、「ヤングケアラーのネガティブな側面ばかりが取り上げられがちだが、優れたスキルを身につけているというポジティブな側面もあることが調査でわかっている」と述べ、子どもたちの優れた側面にも目を向け、人々の意識を変えていくことも重要だと指摘しています。