技能実習生受け入れの公益法人 特定企業に約6億円の優先発注か

外国人技能実習生の国内最大の受け入れ団体である公益財団法人「アイム・ジャパン=国際人材育成機構」が、前の会長の知人が経営する会社に優先的に物品を発注するなど、特定の企業への利益供与を禁じた公益法人認定法に違反する取り引きを行っていた疑いがあることが第三者委員会の調査で分かりました。
取り引き額は合わせて6億円近くに上るということで、公益法人を監督する内閣府は「重大な疑義を抱かざるをえない」として調査に乗り出しました。
前会長はNHKの取材に対し「特定の業者に利益を与えたという認識は全くない」と主張しています。

第三者委員会の調査報告書 入手

東京 中央区の公益財団法人「アイム・ジャパン=国際人材育成機構」は、1991年に設立された外国人技能実習生の国内最大の受け入れ団体で、全国のおよそ2000の会員企業から集める実習生の指導費が主な財源となっています。

NHKは、外部の弁護士で作る第三者委員会が去年まとめた調査報告書を入手しました。
それによりますと、アイム・ジャパンは前の会長で旧労働省OBの柳澤共榮氏(77)の知人女性が経営する会社やこの知人が紹介した会社に対し、おととしまでのおよそ9年間にわたり優先的に物品や業務を発注していたということです。
具体的には、一般競争入札を原則とする内部規程に反してすべて随意契約にしたり、担当部署を通さず一部の幹部だけで決裁を済ませたりしていたほか、業者から見積もりをとる際、前会長が知人の会社を加えるよう職員に指示したこともあったということです。

取り引き額は9年間で約6億円

発注したのはパソコンやジャンパー、観葉植物などさまざまで、取り引き額は9年間で合わせて5億9000万円余りに上っています。

調査報告書によりますと、前会長はこの知人とふだんから食事やゴルフに出かけるなど、親しい関係にあったということです。

前会長はおととし12月、体調不良を理由に退任しましたが、第三者委員会はこうした取り引きについて「絶大な権力を持つ前会長の指示ないし意向によるものだった」として、特定の企業などに特別な利益を与える行為を禁じた公益法人認定法に違反すると指摘しています。

これを受けて、公益法人を監督する内閣府は「重大な疑義を抱かざるをえない」として、実態を把握するための調査に乗り出しました。

前会長はNHKの取材に対し「個々の契約については担当理事に任せていた。優先的な発注を指示したことはなく、特定の業者に利益を与えたという認識は全くない」と主張しています。

一方、アイム・ジャパンは調査報告書について「おおむね誤認はない」としたうえで、「指摘を踏まえ、前会長の知人が経営する会社などとの取り引きを解消し、監査体制の充実を図るなどの改善策を実施している」とコメントしています。

アイム・ジャパンとは

「アイム・ジャパン=国際人材育成機構」は、1991年に設立された外国人技能実習生の国内最大の受け入れ団体で、10年前に公益財団法人に移行しました。

ホームページなどによりますと職員は300人余りで、海外を含めて合わせて20の拠点があります。
常勤の理事は会長を含めて7人で、この中には外国人技能実習制度を所管する厚生労働省と法務省のOBも含まれています。

アイム・ジャパンはインドネシアやベトナムなどアジアの5か国の政府と協定を結び、日本で唯一、各国の政府から直接派遣された実習生を受け入れているということです。
実習生はおよそ5か月にわたり日本語などの研修を受けたうえで、全国のおよそ2000の会員企業に配属されます。これまでに受け入れた実習生は合わせて6万人を超え、現在はおよそ1万人が日本に滞在しているということです。

財源は会員企業から集める実習生の指導費などで、決算報告によりますと、2019年度の収益は39億4000万円余り、一般企業の純利益にあたる「一般正味財産増減額」は2億1000万円余りに上っています。

公益財団法人は税制上の優遇措置があり、公益目的の事業については非課税となっています。

柳澤前会長とは

柳澤共榮 前会長は旧労働省の出身で、1993年にアイム・ジャパンに入り、理事長などを歴任したあと、公益財団法人に移行した2011年からおととし12月までのおよそ9年にわたってトップの会長を務めました。
調査報告書によりますと、旧労働省に在籍していた当時の人脈を生かすとともに、海外政府の要人と直接交渉するなどしてその手腕を発揮し、業務全般を取りしきっていたということです。

柳澤前会長「特定の業者に特別な利益与えた認識全くない」

調査報告書の内容について、柳澤前会長はNHKの取材に対し「特定の業者に特別な利益を与えたという認識は全くない」と主張しています。

このうち、知人が経営する会社などに優先的に物品や業務を発注していたという指摘について、前会長は「結果として随意契約が多かったのは事実だ」としたうえで「いずれも内部規程の例外にあてはまるケースで、問題はないと考えている。また、個々の契約については担当理事に任せており、優先的に発注するよう指示したことはない。知人の会社の見積もり価格が安かったため、結果的に発注が多くなっただけではないか」と説明しています。

一方、アイム・ジャパンは取材に対し、調査報告書について「おおむね誤認はない」としたうえで、一連の取り引きが公益法人認定法に違反するという指摘については「公正性を欠き、取り引きの規模が大きかったことも事実だが、前会長の知人が経営する会社がどの程度の利益を上げていたのかは確認できず、『特別な利益』にあたるとの認識には至っていなかった」としています。

そのうえで「報告書の指摘を踏まえ、去年4月以降、この会社などとの取り引きをすべて解消した。コンプライアンス体制を整備し、監査体制の充実を図るなどの改善策を実施している」とコメントしています。

優先発注 前会長の知人女性経営の会社などに

第三者委員会の調査報告書によりますと、アイム・ジャパンが物品などを優先的に発注していたのは、都内にある合わせて5つの株式会社や公益財団法人です。

このうち3つは前会長の50代の知人女性が社長や代表理事を務め、残りの2つはこの知人がアイム・ジャパンに紹介したということです。

取り引き額が最も多いのは、知人が社長を務める職業紹介サービスや飲料水の販売などを行う株式会社で、9年間で合わせて4億6000万円余りに上っています。

調査報告書によりますと、前会長は知人とふだんから食事やゴルフに出かけていたほか、知人が所有する都心のマンションの部屋を借りて住んでいることも確認されたということです。

また、海外視察をする際には知人の会社から商品を購入し、土産として持って行くこともあったとしています。

知人との関係について、前会長は取材に対し「食事やゴルフは年に数回程度で、費用は折半している。マンションの部屋も社会通念上相当な家賃を支払っており、特別な関係はない」と主張しています。

また、知人は取材に対し、代理人の弁護士を通じて「公益財団法人内部の問題であり、営利企業として業務を多く受注しようとすることに何ら問題はない」とコメントしています。

専門家「かなりずさんな発注が繰り返されていた」

第三者委員会の調査結果について、公益法人の制度に詳しい淑徳大学の鏡諭教授は「調査報告書を見るかぎり、かなりずさんな発注が繰り返されていたことが分かる。公益財団法人は、国の認可の下で税制上の優遇措置を受けており、国の支援という点では補助金と同じだ。このため、公益性や公正性が担保されなければならず、特定の企業などに特別の利益を与えるようなことがあってはならない。また、不適切な取り引きが何年も続いていたことを考えると、組織のガバナンスやコンプライアンスに問題があると言わざるをえない。監督官庁である内閣府は、こうした『公益法人の名を借りた業者』が出ないよう、認定の取り消しも含めて積極的に監督する必要がある」と指摘しています。

内閣府の委員会 報告内容をもとに調査へ

調査報告書を受けて、公益法人を監督する内閣府の「公益認定等委員会」はことし3月、アイム・ジャパンに対し、一連の経緯などについて報告を求める文書を送付しました。

公益法人認定法では、公益財団法人は不特定多数の利益の増進に寄与することとされていて、特定の企業などに特別な利益を与える行為は禁止されています。

NHKが入手した文書によりますと、内閣府はアイム・ジャパンについて「特定の営利法人への特別の利益の供与に対するその後の対応をはじめ、公益事業を行うのに必要な経理的基礎および技術的能力について、重大な疑義を抱かざるをえない」としています。

そのうえで、一連の取り引きが公益法人認定法に違反するという認識があったかどうかに加え、前会長に権限が集中していた状況を理事会が監督できなかったのはなぜか、調査報告書で問題を指摘されながら前会長に対して責任を求めず、3000万円を超える退職金も支払われているのはなぜか、といった点について報告を求めています。

これに対し、アイム・ジャパンはすでに文書で回答したということで、内閣府は今後、その内容をもとに調査を進め、運営の抜本的な改善を求める「勧告」などの措置をとるかどうか判断することにしています。