定義あいまい“かかりつけ” ワクチン接種予約で困惑 兵庫

新型コロナウイルスのワクチンの接種の予約は兵庫県内では「かかりつけ」の医療機関でも受け付けが始まっています。しかし、「かかりつけ」の定義があいまいなため、医療機関に予約を受け付けてもらえないケースも出ています。

尼崎市では、新型コロナウイルスのワクチンの接種を希望する65歳以上の高齢者には、「かかりつけ」の医療機関が接種を行っていれば、まずはそこで予約するよう呼びかけています。

しかし「かかりつけ」の定義があいまいなため、高齢者は「かかりつけ」だと考えていても最後の受診日から一定期間経過していることなどで医療機関側が「かかりつけ」にはあたらないと判断して、予約を受け付けないケースがあることがわかりました。

こうした状況に尼崎市は新規の人も受け付けている医療機関を同意が得られしだい、公表する方向で検討を進めています。

尼崎市の榎並隆喜担当課長は、「市民や医療機関に対して、情報提供が十分ではなく責任を感じている。これからも『かかりつけ』の表現を変えるつもりはないが、改善は進めたい」と話しています。

想定外の事態も

尼崎市では今月10日から65歳以上の高齢者およそ13万人を対象に新型コロナウイルスワクチンの接種の予約の受け付けが始まっています。

希望する人には「かかりつけ」の医療機関が接種をしている場合には受診した際に予約するよう呼びかけ、一方「かかりつけ」がない人や、定期的に医療機関を受診していない人は、集団接種を受けてもらうことにしています。

しかし、高齢者が「かかりつけ」だと思っていても医療機関がそう思っていないケースや、市の境に住むなどして「かかりつけ」が隣接する自治体にあるケースなど市が想定していなかった事態も生じています。

「かかりつけ」日本医師会の定義は

日本医師会では、「かかりつけ医」は「なんでも相談できるうえ、最新の医療情報を熟知して、必要なときには専門医、専門医療機関を紹介でき、身近で頼りになる地域医療、保健、福祉を担う総合的な能力を有する医師」と定義しています。

しかし受診の頻度や回数、最後に受診してからの期間などの定めはなく、どういう場合に「かかりつけ」にあたるのか明確な基準はないとしています。

予約を断られた女性は

ワクチンの個別接種を希望した尼崎市の78歳の女性は自分では「かかりつけ」と考えた医療機関に予約を拒まれ、戸惑うことになりました。

女性は尼崎市が設定している集団接種の会場が遠かったことから近所の医療機関で個別接種を受けることを希望しました。
市は個別接種の場合は「かかりつけ」にまずは相談するよう呼びかけています。

女性はこの1年間、2か月に1回くらいのペースで、受診していた近くの医院が「かかりつけ」にあたると考えましたが、そこは最近になって閉院していました。このため、2年ほど前まで月1回程度、通っていた別の医院が、「かかりつけ」に近いのではと考えて、今月10日、問い合わせをしました。
しかし、この医院の担当者から「あなたは、かかりつけの患者ではないので対応できない」と予約を拒まれたということです。

ほかにあてがなく困っていたところ、親族から「新規の人でも予約ができる医院がある」という話を聞き、一度も訪れたことがない医院でしたが、問い合わせてみると、予約できたということです。

女性は「『かかりつけ』と言われるとどのくらいの頻度で利用する医療機関ならよいのか分からない。受け入れ側の事情もあると思うが、高齢者はただでさえ不安なので、自分がどの医療機関でワクチン接種ができるのか事前に知らせてほしいと思う」と話していました。