菅首相 緊急事態宣言「専門家の意見も尊重し判断行った」

菅総理大臣は、緊急事態宣言の対象地域に北海道、岡山、広島の3道県を追加したことなどを決定したのを受けて、14日夜、記者会見し、専門家のより厳しい対応が必要だという意見を尊重し、判断したと当初の方針を変更した理由を説明しました。一方、地域ごとに効果的な対策を講じていくことが重要だとして、宣言を全国に拡大することには慎重な考えを示しました。

菅総理大臣は、記者会見で「先ほど、新型コロナ対策本部を開催し、緊急事態宣言について、北海道、岡山県、広島県を追加し、期間は今月16日から今月31日までとすること。『まん延防止等重点措置』について、群馬県、石川県、熊本県を追加し、期間は、今月16日から6月13日までとすることを決定した」と述べました。

「緊急事態宣言の地域 強い措置を講じていく」

「緊急事態宣言の地域では、それぞれの自治体と協力し、飲食店の酒やカラオケの提供の停止、テレワークの促進など高い緊張感のもとで、強い措置を講じていく」と述べました。

その上で「『まん延防止等重点措置』の地域では、飲食店の時間短縮や見回りなどの集中的な対策を講じ、さらに飲食店の酒の提供の停止など、緊急事態宣言と同様の措置もできることとしている」と述べました。

「来月中をめどに一般の方々にも接種を開始する」

「来月中をめどに、高齢者の接種の見通しがついた市町村から、基礎疾患がある方々を含めて、広く一般の方々にも接種を開始する。あわせて、全国の企業の産業医の協力を得て、地域や職場の方々への接種を進めていく」と述べました。

その上で「なかなか予約が取れないなど、皆さんにはご不便をおかけしていることを大変申し訳なく思う。しかし必ず、皆さんに受けていただけるように、6月末までには、1億回分のワクチンを確保し、自治体など関係者の皆さんとしっかりと協力していく」と述べました。

「専門家の意見も尊重し今回追加の判断を行った」

「全国の感染状況は、地域によって差が見られる中、感染が急速に拡大している地域がある。新規感染者数は、大阪では減少に転じているが、東京はおおむね横ばいの状況であり、愛知と福岡では感染者の増加が続いている」と述べました。

その上で「そうした中で、比較的人口規模の大きな北海道、岡山県、広島県において、新規感染者数が極めて速いスピードで増加している。これらの地域においては、これまで地元の自治体と連携しつつ対策を進めてきたが、けさの分科会においては、専門家の方々から、より厳しい対応が必要との考えが示された」と述べました。

そして「政府としても、変異株が広がる中で、いまが感染を食い止める大事な時期だという考えに変わりなく、専門家の意見も尊重し、今回、追加の判断を行った。期間は東京などの都県とあわせて今月末までとし、その後の対応についてはその時点で改めて判断を行っていく」と述べました。

「全ての皆さんが1日も早く接種できるように」

「全国の自治体で今週から順次、本格的なワクチン接種が進んでいる。ワクチンの接種は皆さんひとりひとりの命を守る切り札となるものだ。自治体や医療関係者の協力が進み、全国の85%を占める1490の市町村で7月末までに高齢者の接種を終えることができる予定となった」と述べました。

その上で「各地で都道府県と大学病院などが協力して大規模接種センターを設ける動きも進んでいる。今後も、全ての自治体をしっかりサポートをして、全ての皆さんが1日も早く接種できるように取り組んでいく」と述べました。

「マスクなしの会話 感染原因の大部分占めるという調査」

「医療、介護などの現場では関係者の方々が、きょうも懸命に尽力をいただいていることを心より感謝申し上げる。1日も早く安心できる日常を取り戻すため、ワクチン接種の加速化を実行する。それまでの間は、対策を徹底し、全国各地の感染レベルをできる限り抑えていく。そのためにはマスク、手洗い、3密の回避という欠かすことのできない予防策の徹底をお願いする」と述べました。

その上で「特にマスクなしの会話による感染が原因の大部分を占めるという調査結果がある。飲食や会話の場面、また、職場においてひとりひとりが必ずマスクを着用することは、感染防止の大きな力となる。みなさまのご協力を心よりお願い申し上げる」と述べました。

「専門家からより強いメッセージ出すことが必要という意見」

「これまで政府としては地域の感染状況を踏まえた感染防止対策を分科会に諮問するとともに、そこで専門家の意見を踏まえた上で適切に対応してきた。けさの分科会では、専門家からより強いメッセージを出すことが必要という意見があり、そうした意見を尊重し、比較的人口規模も大きく、影響が懸念されることを踏まえて、緊急事態宣言の対象とする判断をした」と述べました。

その上で「緊急事態宣言を発出してから3週間が経過するが、大阪においては、新規感染者数は減少に転じている。東京においては、おおむね横ばいの状況だと認識している。引き続き、感染拡大を食い止めるために徹底して、取り組んでいきたい」と強調しました。

「全国一律よりも地域ごとに効果的な対策が重要」

全国知事会から、全国に緊急事態宣言を出すべきだという意見が出ていることについて「専門家からも感染状況について、全国的な感染拡大ではないが、地域差が大きく、感染が急速に拡大し病床の状況が極めて厳しくなっているところがあると指摘されている。地域の感染状況を踏まえながら、全国一律というよりも、地域ごとに効果的な対策を講じていくことが重要だと考えている」と述べました。

「オリンピック・パラリンピック 安全安心の大会実現は可能」

東京オリンピック・パラリンピックの開催について「さまざまな困難があることは承知しており、まずは感染拡大を食い止めて、国民の命と健康を守ることが最優先だ。選手や大会関係者の感染対策をしっかり講じ、安心して参加できるようにするとともに、国民の命と健康を守っていくことが開催にあたっての基本的な考え方だ」と述べました。

その上で「医療体制については、地域医療に支障をきたさないよう調整しているところだ。ファイザーから各国選手へのワクチンの無償の提供が実現したほか、選手や大会関係者と一般の国民が交わらないようにするなど、厳格な感染対策を検討している。こうした対策を徹底することで、国民の命や健康を守り、安全安心の大会を実現することは可能と考えており、しっかり準備していきたい」と述べました。

「IOCは7月からの開催をすでに決定」

記者団が「東京オリンピック・パラリンピックを秋に延期してはどうかという提案が与野党からあるが、どのように考えるか」と質問したのに対し、「まず、現在の感染拡大を食い止めるために全力を尽くす。東京大会については、IOC=国際オリンピック委員会は、7月からの開催をすでに決定している。開催にあたっては、選手や大会関係者の感染対策をしっかり講じて、安心して参加できるようにすることが責務だと思っている」と述べました。

「高齢者の接種の見通しついたら福祉施設の方も接種」

記者団から、福祉施設で働く人に対するワクチンの優先接種を検討する考えがないか問われたのに対し、「7月末を念頭に、高齢者への2回目の接種を終わらせるとともに、来月をめどに、高齢者の接種の見通しがついた市町村から、障害者の方を含めて、接種を開始し、さらに広く一般の方へ接種を進めていきたい。高齢者の接種の見通しがついたら、そうした福祉施設の方も接種することが考えられる」と述べました。

岡山と広島「専門家から『より強いメッセージが必要』と意見」

岡山県と広島県を今回、緊急事態宣言の対象地域に加えたことについて「岡山県と広島県は、独自の判断で時短を始めたばかりだったので政府としては、そうした状況を踏まえて『まん延防止等重点措置』に基づいて、時短要請だけでなく、酒の提供禁止という強力な措置を講じていきたいと考えていた。一方、分科会では専門家から『より強いメッセージが必要』といった意見があり、緊急事態宣言の対象とすることを判断した」と述べました。

過料含めた対応「東京都 罰則も視野に要請行っている」

記者団から緊急事態宣言の効果を高めるため、都道府県に事業者への過料を含めた対応を働きかける考えがないか問われたのに対し、「すでに東京都では時短要請に応じていただけない事業者に対し、罰則の適用も視野に特別措置法に基づく要請を行っている。引き続き、東京都の体制を強化する中で、適切に対応していきたい」と述べました。

まん延防止等重点措置「自治体の制限効果見ながら適用を判断」

記者団が「『まん延防止等重点措置』の機動的な運用ができていないのではないか」と質問したのに対し「罰則つきの強い私権制限を課すものであり、政府としては、自治体の飲食に関する営業時間の制限の効果を見ながら適用を判断したい」と述べました。

北海道 「分科会から指摘受け宣言に」

記者団から、北海道への対策が小出しで適切ではなかったのではないかと問われたのに対し「政府としては、毎日のように北海道と連携しながら取り組んでいる。特に北海道は、九州の2つほどの面積があるわけで、その中で、感染者は札幌市に7割ぐらい集中している。『まん延防止等重点措置』で集中的にできるので、政府は、そうしたことでいいのかなという見解を持っていたことは事実だ。しかし、分科会の先生方から『厳しいメッセージが必要だ』と指摘をいただいたので、緊急事態宣言にさせていただいた」と述べました。

オリ・パラ関係者 「行動制限 反する場合は強制退去検討」

東京オリンピック・パラリンピックの際に、海外から日本を訪れる関係者への新型コロナ対策について「いま入国者数を精査していて、これまでに出ている数字よりはるかに少なくなると思うし、行動も制限する。これに反する場合は強制的に退去を命じることも含めて、いま検討している。また、一般の国民と関係者は違う動線で行動してもらうようにしている。特定のホテルを国として指定して、国民と接触することがないよう、しっかり対応している途中だと報告を受けている」と述べました。