変異ウイルスで重症化 50歳男性「想像以上に怖い病気だ」

これまでより若い世代でも重症化する人が相次いでいる第4波。先月、変異ウイルスに感染し、集中治療室に入った50歳の男性がNHKの取材に応じ「重症化のスピードがとても早く、想像以上に怖い病気だと実感した」と証言しました。

男性は医師で、ふだんは新型コロナの患者を診療していませんが、先月、発熱やけん怠感があり勤務先の病院でPCR検査を受けたところ、新型コロナウイルスに感染したことが判明。

イギリス株の変異ウイルスだったこともわかりました。

その後、妻や2人の子ども、それに近くに住む両親の家族全員も感染していることがわかり、自宅療養となりました。

しかし、頭痛やせきなどが出て症状が悪化し2日後には救急車で病院に搬送され入院しました。

当時について男性は「自宅にいて体調が悪くなった時、最初は車で病院に行こうとしたが、わずか1時間か2時間ぐらいの間に動けなくなるくらい状態が悪化し、救急車を呼んだ。医師としての知識があったので、救急車を呼んだが、もし自宅で頑張っていたら最悪の結果になっていたと思う」と話しています。

その後、症状はさらに悪化して血中の酸素濃度も低下。

人工呼吸器やECMOでの治療が必要となる可能性もあったため、ICU=集中治療室のある東京医科大学八王子医療センターに転院しました。

男性は重症化のリスクが高い持病は全くありませんでしたが、一気に症状が悪化したといいます。

男性は「いろいろな病気をみてきたが、悪化のスピードがとても早いという点がいちばんびっくりした。この時はだめかもしれないと思った」と振り返っています。
集中治療室に入ると力の入らない指先を使って妻に対し「ちょっとだめかも。何かあったらごめん。子どもたちをよろしく」というメッセージをスマートフォンから送っています。

男性は投薬のほか、肺の機能を休ませるために2時間に1度うつ伏せになるなどして8日間ICUで治療を受け、症状が改善したといいます。

そして先月21日に退院することができました。

しかし、体重は6キロほど落ちて筋力が低下し、1人では歩くことができなくなっていたほか、胸を強い力でずっと押しつけられているような息苦しさが今でも続いているといいます。

男性は「治療中は死も意識し、体へのダメージも大きく、想像以上に怖い病気だと実感した」と話しています。

都内でもICUは満床状態

第4波で全国的に急増する新型コロナウイルスの重症患者。

都内でもICU=集中治療室が満床状態に陥っている医療機関が出てきています。

東京 八王子市にある東京医科大学八王子医療センターでは、新型コロナウイルスの患者を受け入れる病床が合わせて66床あり、このうち、重症患者向けのICU=集中治療室の病床は6床確保しています。

ことし3月まで重症患者は2人ほどでしたが、徐々に増加し、先月下旬からほぼ満床の状態が続いています。

都内全体でも重症患者の病床使用率は増加していて、内閣官房のまとめによりますと今月12日時点で38%と、ステージ3の目安を超えています。

これまで集中治療室に搬送されてくる患者は、60歳以上の高齢者が多かったということですが、第4波ではそれよりも若い30代から50代の重症患者も複数いたといいます。

こうした比較的若い世代の中には、持病も無いのに突然、重症化した人もいるということです。
東京医科大学八王子医療センター・救命救急センターの佐野秀史医師は「これまで1年間、新型コロナの治療に当たってきたが、第4波のウイルスは特に感染力が強く、特段、持病もなく普通に生活していた人も重症化するケースが少なくない。改めて恐ろしい病気だと感じる上、いまだに決定的な治療法も無く、一人一人がいま一度、感染対策を強く心がけるべき時だと思う」と話しています。