ああ、素晴らしき“ズボラな世界”

ああ、素晴らしき“ズボラな世界”
ズボラな料理に、ズボラな掃除。
今、SNSで自身の「ズボラ」な生活をポジティブに発信する人たちに共感が集まっています。
“ズボラな世界”、ちょっとのぞいてみませんか?
(もくじ)
・ズボラなハンバーグ!?
・“ズボ連”に込めた思いとは
・100万再生「丁寧じゃない暮らし。」
・精神科医Tomyさんに聞いたズボラとは

“ズボラ”なハンバーグ

数あるSNSの投稿を見ていくと、こんなズボラも。
40代の男性「ちみを(グルメアカウント)」さんが、ことし3月にツイッターに投稿した、あるハンバーグです。

たまねぎも入れず、パン粉も牛乳も入れず、パックのひき肉をそのままフライパンに入れただけ。

当然、材料を混ぜる作業も、形を整える作業もなし。

このハンバーグは、1万7000以上のいいねがつきました。
ちみをさん
「スパイスもコショウしか入っていないので肉の味がそのまま。野性味が強調されたワイルドな味わいです。簡単にできるズボラ飯ですね」

“ズボ連”に込めた思い

こうした投稿が広がりを見せるなか、ズボラを掲げた団体も立ち上がっています。

その名も「全日本ズボラ主婦連盟」。

通称「ズボ連」です。

「トイレのマットやカバー洗うのめんどくさい。思い切って撤去してみた」

「お総菜でごめんね、ではなく『おいしそうだったからお土産買ってきた』って言えばいい」

毎日の生活を“ズボラ”に過ごすための方法や考え方を伝授しています。

例えばこんな悩みには。
(お悩み)
毎日の献立を考えるのが苦手です。

(ズボラアンサー)
月曜はシチュー、火曜は鍋…など曜日ごとにメニューを固定。
毎週、それを基準に回せば、考えなくてもOK!
「ズボ連」が去年5月にオンラインで活動を始めたところ、無料のメールマガジンに登録した会員は、この1年で3000人にもなりました。

なぜ共感を呼んでいるのか。

代表理事の浅倉ユキさんは「そんなに頑張らなくていいんだよと誰かに言ってほしいと思っている人が多いのでは」と話します。
料理研究家として、全国で料理を教えたり講演したりしてきた浅倉さん。

そういう場でいつも「ワンオペで家事育児がしんどい」「料理を毎日手作りするのがつらい」という悩みを聞き続けてきました。
浅倉ユキさん
「家事や育児を、外での仕事などに比べて軽んじる傾向が社会にはまだまだあります。でも、本当は大変なので、心身共に限界を超えている人が多いんです。そんな人たちに『苦しいなら料理だって家事だって、やらなくていいじゃない。ズボラでいいじゃない』と呼びかけることで、無理せず、笑顔でいてほしいと思ったんです」
一方で「ズボラ」ということばに対して、サボっている、怠けていると言われているようで嫌だ、という声も少なからず寄せられるそうです。

浅倉さんは、決して全員に「ズボラ」を強制するわけではないとして、次のように話します。
浅倉ユキさん
「好きな家事、得意な家事があってきちんとしたいという思いがあるのならそこは大切にしてやればいいんです。でも苦手だな、負担だなと思う部分まできちんとやる必要はないし、その部分は思い切って手放してもいいのでは」

“ズボラ生活”の動画も人気

ズボラ生活実践編。そんな動画もYouTubeで人気です。

100万回以上再生された動画もあった「もも子」さんの「丁寧じゃない暮らし。」。

夫との“ズボラ生活”が、去年10月以降30本余り投稿されています。
「来客到着●時間前 慌てて片付ける」という動画。

このあと人が来るというのに家の中は散らかったまま。

予定は1週間前からわかっていたのに、当日も朝早く起きてやろうと思ったのに、何もしないまま時間が迫ります。
でも、だらしないとは思われたくない。

散らかったモノは見えないように別の部屋の扉の向こうに、ポイッ。

台所の流しに並んだ缶・ビン・ペットボトルもしぶしぶ洗って分別。

最終的には間に合うように片づけますが、めんどくさいという心境がそのまま出されています。

32万回再生されたこの動画には「私かと思ったww」「わかるぅ…ズボラは追い詰められないと身体が動きません」。

そんなコメントが寄せられました。
20代の介護士だという「もも子」さんに連絡を取って、動画投稿のきっかけを聞きました。

なんと、始めは“丁寧な暮らし”に憧れ、そんな動画を撮ろうとしたんだそうです。

でも、やってみると、それが逆にストレスになりました。
もも子さん
「丁寧な暮らしとは反対の、“丁寧じゃない暮らし”がいちばん合ってるのかなと。ズボラでも楽しく気ままに過ごせるならよいのではないかと考えました」
ある日の動画では、ついつい冷蔵庫を足で閉めちゃいます。

キャベツとネギ、それにもやしを取り出したら、手がふさがってしまったんです。

さらに作ったのは深夜のラーメンという、罪悪感も。

これにも「私も足使いの名人です」とか「ありのままがいちばん」といったコメントが寄せられました。
もも子さん
「ズボラ動画を上げることによって批判がくるかと思いましたが、たくさんの方々の共感を得られて、完璧な暮らしに息苦しさを感じているのは自分だけじゃないんだとうれしく思い安心しました」

精神科医Tomyはどう見る?

共感を呼ぶ「ズボラ」。

この人はどう見るのか聞いてみました。

「なんでも聞いていいわよ~」
精神科医のTomyさん。

ツイッター「ゲイの精神科医Tomyのつ・ぶ・や・き」のフォロワーは20万人を超え、覆面姿でメディアにも登場して、悩める多くの声にこたえてきました。
Q SNSで「ズボラ」を投稿したり、見て癒やされたりする人たちが多くいることについて、Tomyさんはどう思いますか?
A「ズボラ」は手を抜くことを肯定的に捉え直そうということばで、心の健康を保つためには、とっても好ましいことだと思うわ。

コロナ禍で外での人とのつながりが減ってしまってるけど、人間はどうしてもコミュニケーションをとって、共感し合いたいものなの。

「みんなそんなに立派じゃないよね」「わかるわかる」と、疲れたとき、家の中にいながらでも共感を求めたいものよ。
Q 少しズボラになりたいけど、やっぱりちゃんとしてなきゃいけないんじゃないか…、そういうはざまで悩んでいる人も多いと思います。
A 自分の生活を見つめ直して、あなたが大事にしたいところだけ頑張って、それ以外はズボラにしてみたらいいのよ。

楽しい部分だけ頑張って、あとは手を抜くという風にすれば、自分の個性も生かせるし、長所を伸ばせるわよね。

苦手なことも苦痛なことも一生懸命やろうとするとつぶれてしまうわ。
もちろん、一生懸命頑張るのが好きな人もいる。

いままで一生懸命頑張ってる人に「頑張らなくていい」と言うのは、場合によっては否定された見捨てられたと感じてしまうこともあるわ。

そこは注意ね。

それと、変えるにしても自分に合う形で少しずつにするのがオススメよ。

例えば、料理を4品作っていたのを3品にしてみるとか、週に1度は料理を作らず外食にしてみるとか。

いきなり全部を変えるのは難しいものだからね。
Q「少しくらいズボラでもいい」と考えるだけで、気が楽になりますね。
A 結局、世の中、なんとでもなるのよ。

なんとでもなるので、自分がいちばん楽になる考え方を模索するというのが大事よ。

「こうじゃなきゃ」という考えは間違い。

「こう考えると自分は楽しい」というものを探すの。

ズボラというのも、どうやってむだな体力を使わずに済むかというすごい知恵でもあるの。

ズボラレシピでも、ズボラな生き方でもいい。

「ズボラ」というのは多様性なのよ。

だから「ズボラじゃ無きゃいけない」と思ったらズボラの意味が無い。

それだけは気をつけなきゃダメよ。
(ネットワーク報道部 秋元宏美 田隈佑紀 高杉北斗)