「感染して初めて恐怖を… 緊張感薄れてた」渋谷 20代女性

「コロナはひと事。自分はかからないと思っていました」

東京に住む20代の女性は、ことし4月、新型コロナウイルスに感染していることが分かりました。

経験したことのない嗅覚と味覚の異常。
家族や友人に感染させていないかという不安。

「コロナは決してひと事ではない」
女性からのメッセージです。

薄れていた緊張感「この1年 何もなかったし…」

東京・渋谷のアパレル店で働く20代の女性。

若者が集まる渋谷の街の変化を見続けてきました。

去年4月の1回目の緊急事態宣言の時に比べ、ことしの春は人の流れが絶えなかったと言います。

満員の電車に揺られて渋谷に出て、接客に当たる毎日。

店も盛況で、女性自身、いつしかコロナに対する緊張感が薄れているのを感じていました。

「この1年間何もなかったし、大勢の人が外出しているから、きっと私も大丈夫」

多くの人が行き交う光景を見ているうちに、そんな思いが芽生えていたと言います。

外出も特に自粛せず、休日になると友人と買い物に出かけ、マスクを外してランチを楽しむ日常が戻っていました。

突然、ひと事から“自分事”に

異変は突然、訪れました。

4月初旬。

鼻が詰まるような症状が出ました。

「花粉症かな」と思い気にしなかった女性ですが、翌日、突然、38.5度の熱が出ます。

熱は下がったものの、次の日、念のためPCR検査を受けると陽性でした。

感染経路に心当たりは全くありませんでした。

「思い当たる節もなく、まさか自分がかかるとは思っていませんでした。今思えば、感染リスクが高い場面もあったかもしれませんが、コロナへの危機感がなくなっていました」

親族や友人など15人が濃厚接触者に 1人は陽性

そう振り返る女性。

特に驚いたのは、親族や友人を含む15人が保健所から濃厚接触者と認定されたことでした。

症状が出る数日前に、友人の実家に泊まりに行っていたことも濃厚接触者が増えた原因でした。

そればかりではありません。

体の異変を感じる前日、肺がんを患う祖父と会っていたことに、女性は心をさいなまれたと言います。

結局、濃厚接触者のうち14人は陰性と判定されましたが、同居している親族1人が陽性であることが分かりました。

「一番怖かったのは、最低限、感染に気をつけていたつもりなのに濃厚接触者がたくさん出てしまったことです。家族や友だちに大きな迷惑をかけ、自分の心配以上に、他の人の人生を台無しにしてしまう恐ろしさがあることに、感染して初めて気がつきました」

失われた嗅覚と味覚 経験のない違和感

陽性と判定された2日後。

保健所の指示で、指定のホテルでの療養生活が始まりました。

しばらくして体調が急変。

症状は一気に進み、ホテル療養2日目には嗅覚と味覚が完全に失われました。
これまでに経験したことがない違和感。

食事として出されたカレーライスの味も匂いも分からなくなったと言います。

「このまま一生戻らなかったらどうしよう」

女性は、重症化しないかという恐怖とともに、一人、不安な毎日を過ごすことになります。

症状は、療養期間が終わりホテルを出てからも約2週間続きました。

症状がなくなった今も、いつ再発するかわからないという恐れがつきまとっていると打ち明けます。

今、伝えたいこと「一人一人が行動を変えないと」

コロナへの危機意識が薄れていた自分。

その後の体の異変。

そして、濃厚接触者と認定された周囲への負い目。

コロナの「当事者」となった女性は、取材の最後にこう話してくれました。

「最初の感染拡大から1年以上がたち、若者を中心にコロナに対する意識が薄れてきていると思います。私も『自分は大丈夫』という根拠のない思い込みがありましたが、若い人も含め誰でもかかる危険性があることを知ってほしい」

そして、私たちにメッセージを託してくれました。

「感染して初めて、自分だけでなく、大切な家族もコロナで失うかもしれないという恐怖を味わうことになりました。自分の大切な人のことを考えながら、みんながコロナと正しく向き合い、一人一人が行動を変えていかないといけない」


(取材:映像センター カメラマン 植田耕平)