新型コロナワクチン 高齢者の集団接種 各地の対応は

高齢者を対象にした新型コロナウイルスワクチンの集団接種が各地で始まっています。政府が7月末までの接種完了を目標に掲げる中、自治体や医療機関は、接種を行うスペースの確保や予約の支援など、対応に追われています。

福岡市 高齢者対象の集団接種 本格開始

このうち、福岡市博多区の「マリンメッセ福岡B館」には、接種の予約をした75歳以上の高齢者たちが次々と訪れました。そして、係員に案内され、順番に接種を受けていました。

接種を受けた男性は「きのう予約が取れて接種を楽しみにしていました。特に痛みもありませんでした」と話していました。

また、別の女性は「1日でも早く打ちたいと思っていたので、ほっとしています」と話していました。

会場では予約なしに訪れ、接種を受けられず帰る人の姿も見られましたが、大きな混乱はありませんでした。

福岡市では来週19日から74歳以下の高齢者の予約受け付けを始め、今月24日からは地域の診療所およそ750か所で個別接種も本格的に実施する予定です。

またマリンメッセ福岡B館は、今月28日から夜間の時間帯も開設するほか、7月からは24時間対応可能な会場も開設するとしています。

大学を施設を「間借り」 接種スペース確保

東京 墨田区の墨田中央病院は、ワクチン接種をスムーズに進めるため、区内にある大学の施設を借りて接種を行う取り組みを始めました。

この病院では、高齢者向けのワクチン接種を始めるにあたり、一般外来や、新型コロナの感染が疑われる患者の検査や診療などの通常業務もあることから、接種スペースをどう確保するかが課題となっていました。

こうした中、近くにある千葉大学から施設を借りられることになり、今月10日から、この施設を使って高齢者向けのワクチン接種を始めました。

13日も施設には朝から60人の高齢者が訪れ、区と大学が作成した接種までの経路を示す「誘導サイン」を確認しながら、予診やワクチンの接種を受けていました。

墨田区では別の医療機関でも商業施設の一部を借りて接種行う予定で、こうした対応を通じて7月中に希望する高齢者の接種を終えたい考えです。

墨田中央病院の小嶋邦昭院長は「病院は狭く、一般診療と同時に進めると混乱が起きる可能性もあったので、施設を借りられてとてもありがたかった。スムーズに始められたので今後、予約の枠を広げてもっと接種していきたい」と話していました。

ネット予約「代行」の取り組みも

高齢者の集団接種をめぐっては、電話やインターネットがつながりにくく予約が取りづらい状況が続いているところもあり、自治体の職員が予約を代行する取り組みが広がっています。

東京 足立区は11日から区役所などに臨時の窓口を開設して、区の職員がインターネットで予約を代行する取り組みを始めました。

13日は開始時間とともに区役所の窓口に多くの高齢者が訪れ、職員が希望の会場や日時を聞きとって予約を入れていました。訪れた高齢者は「電話がなかなかつながらなくて不安でしたが、予約がとれて安心しました」と話していました。

足立区の馬場優子衛生部長は「予約できない状況が続き、1日に100件ほどの苦情が来ていた。ご迷惑をおかけして申し訳ないが、しっかりサポートしていく」と話していました。
また東京 新宿区は13日から75歳以上の高齢者を対象に、区役所の第1分庁舎と出張所の合わせて11か所の窓口で、区の職員が「仮予約」のサポートをする取り組みを始めました。

日時と場所を指定することはできませんが、「仮予約」をすれば、6月上旬に区が指定する接種の日時と場所を記した書面が郵送で届き、6月中に1回目の接種を受けられるということです。

13日は、朝から高齢者が次々と会場を訪れて職員からサポートを受けて仮予約の手続きを行っていました。

時間外労働80時間超も 担当職員増やし対応へ

一方で、自治体の負担は増しています。

岐阜県各務原市は4月に「新型コロナウイルスワクチン接種対策室」を設置して、職員15人がワクチン接種の準備や医療機関との調整を進めてきました。

高齢者に接種券を配布してから市民からの問い合わせが急増したほか、政府が高齢者への接種を7月末までに終えられるよう取り組む考えを示したことから対応に追われました。

市が管理職と非常勤職員を除く11人の4月の時間外労働を調べたところ、7人が「過労死ライン」と言われる80時間を超えていました。このうち4人は100時間を超え、最も長い職員は143時間だったということです。

市は14日から対策室の職員を現在の15人から31人に増やし、職員の時間外労働を抑制するとともに、円滑なワクチン接種を進めることにしています。

医療機関は計画変更 対応に追われる

医療機関も対応に追われています。岩手県大船渡市では、一般の高齢者およそ1万3000人を対象にした接種を5下旬から始め、当初は9月上旬ごろの完了を見込んでいましたが、7月末の完了に向けて、計画の大幅な見直しを迫られています。

個別接種は、市内14のクリニックや診療所などで行う予定ですが、市が試算したところ、目標を達成するためには、それぞれ週に最大100回の接種を行う必要があり、今週から市が各医療機関と調整を行っています。

このうち滝田医院では、当初は通常の診療の合間に、1日30分から1時間ほどかけて接種することを想定していましたが、要請を受けて、2時間に拡大して1日に24回、1週間で100回近くの接種をするよう計画を変更しました。

しかし、接種にあたるのは医師1人と看護師2人だけで、重い負担がのしかかることになります。

地元の医師会の会長も務める滝田有院長は「接種がうまく行くのか不安だし負担がないと言えばうそになる。地元の医師は震災で被災しながら医療活動に奔走した経験があり、今回も危機意識を共有してこの困難を乗り越えたい」と話しています。

大船渡市では、集団接種についても広い会場に変更したうえで医師や看護師を増員し、週に2日から4日に倍増する計画です。