デジタル庁設置法 参院で可決・成立 9月にデジタル庁創設へ

デジタル改革の司令塔として、ことし9月にデジタル庁を創設することなどを盛り込んだ「デジタル改革関連法」が、参議院本会議で可決・成立しました。

「デジタル改革関連法」は、菅政権が看板政策として掲げるデジタル改革の司令塔として、ことし9月にデジタル庁を創設し、国の情報システムを統括させる「デジタル庁設置法」や、デジタル社会を目指す上での基本理念などを定めた「デジタル社会形成基本法」など、合わせて6つの法律からなるもので、12日の参議院本会議で採決が行われました。

このうち「デジタル庁設置法」は、自民・公明両党のほか、立憲民主党、日本維新の会、国民民主党などの賛成多数で可決・成立しました。

また「デジタル社会形成基本法」は、自民・公明両党のほか、日本維新の会、国民民主党などの賛成多数で可決・成立するなど、6つの法律はすべて成立しました。

菅総理大臣は、去年9月の自民党総裁選挙で省庁横断でデジタル化を推進するためのデジタル庁の創設を打ち出し、それからおよそ8か月という急ピッチで関連法を成立させたことになります。

菅首相「デジタル化にとって、大きな歩み」

菅総理大臣は、12日夜、総理大臣官邸で記者団に対し「長年の懸案であった、わが国のデジタル化にとって、大きな歩みになると思う。関係者の尽力に感謝したい。9月1日のデジタル庁の発足に向けて、しっかりと準備していきたい。マイナンバーカードと健康保険証、運転免許証との一体化を進め、誰もがデジタル化の恩恵を受けることのできる社会をつくっていきたい」と述べました。

成立までの経緯

菅総理大臣は、去年9月の自民党総裁選挙に立候補した際、省庁横断でデジタル化を推進するため、デジタル庁の新設を打ち出し、就任以来、政権の看板政策のひとつとして、重点的に取り組んできました。

総理大臣に就任して2週間後には「法案準備室」を立ち上げるなど、急ピッチで準備を進めた結果、去年12月に基本方針を閣議決定し、ことし2月に「デジタル改革関連法案」を国会に提出しました。

「デジタル改革関連法案」は、今年度予算が衆議院を通過し、参議院に送られたあと、ことし3月9日に衆議院で審議入りしました。

一方、関係資料に45か所の誤った記載があったことがわかったうえ、それを国会に説明するための資料にも3か所のミスが見つかりました。その後、政府が国会に提出したほかの法案にも相次いでミスが見つかって、加藤官房長官が陳謝する事態となり、政府は、来月中に再発防止策をまとめることにしています。

平井デジタル相「強力に司令塔機能を発揮しけん引」

平井デジタル改革担当大臣は、記者団に対し「デジタル庁の設置は、規制改革のシンボルであり、成長戦略の柱でもある。成長戦略の中心的な一つにデータ戦略もあり、強力に司令塔としての機能を発揮して、けん引していきたい。力強くスタートダッシュできるように、これからさらに頑張っていきたい」と述べました。

加藤官房長官「次に向けてのスタート」

加藤官房長官は、午後の記者会見で「法律の成立は重要な意義を持つ一方、デジタル改革全体としてみれば、まさに次に向けてのスタートだ。誰もがデジタル化の恩恵を最大限に受けることができるよう世界に遜色のないデジタル社会の実現を目指し、9月1日のデジタル庁の発足に向けて、必要な人員の確保や体制の整備を含め、遺漏なく準備を行っていきたい。関係省庁一丸となって、スピード感を持って、デジタル改革をさらに前に進めていく」と述べました。

自民 下村政調会長「大きな可能性を秘めている」

自民党の下村政務調査会長は、記者会見で「デジタル社会の推進は、社会全体の抜本的な転換につながる大きな可能性を秘めており、新設されるデジタル庁により、国民の利便性と日本の競争力を高めていくことが可能になる。誰ひとり取り残さないデジタル社会が大変重要で、自治体との緊密な連携も必要だ。党としてもフォローアップしていきたい」と述べました。

公明 竹内政調会長「社会変革やイノベーションのスタート」

公明党の竹内政務調査会長は、記者会見で「国民の利便性を高める重要な法律であり、成立を歓迎している。大きな社会変革やイノベーションのスタートと位置づけており、今後は、災害や大きな経済変動があった時などに、公的な給付がスムーズに進むことを期待している」と述べました。

「デジタル改革関連法」とは

「デジタル改革関連法」は、6本の法律で構成されています。

このうち「デジタル庁設置法」は、ことし9月にデジタル庁を創設し、デジタル改革の司令塔として強力な権限を持たせて、国の情報システムを統括させるものです。

「デジタル社会形成基本法」は、2000年に制定されたIT基本法にかわるもので、デジタル社会を目指すうえでの基本理念のほか、国と地方自治体、事業者のそれぞれの責務などを定めています。

また、給付金などを迅速に受け取れるようにするため、希望者を対象にマイナンバーと金融機関の口座をひも付けるようにする法律もあります。

このほか、マイナンバーカードの機能をスマートフォンに搭載したり、行政手続きでの押印を原則、廃止したりするなどして、デジタル社会の形成を図る法律や、自治体ごとに異なる情報システムの仕様を統一して、行政運営を効率化し、住民の利便性を向上させる法律などもあります。

行政手続きの一部簡略化も

成立した「デジタル改革関連法」の施行によって、行政手続きの一部が簡略化されます。

例えば、ほかの自治体に引っ越す場合は、転出と転入の際、それぞれの自治体の窓口に出向く必要がありますが、このうち転出届は、マイナンバーカードを使ってオンラインで提出できるようになり、政府は、来年度中の運用開始を目指しています。

また、マイナンバーカードの機能がスマートフォンに搭載できるようになるため、確定申告や保育所の入所申請などの手続きがスマートフォンだけで行えるようになります。

さらに、銀行口座の開設や住宅ローンの契約といった民間の手続きも、スマートフォンでできるようになることが想定されています。

一方、ことし9月からは、行政や民間の押印の手続きが見直され、婚姻届や離婚届を出す際、引き続き本人の署名は必要ですが、押印の義務は廃止されます。

このほか、緊急時の給付金の支給などにマイナンバーを活用できるようになるため、新型コロナウイルス対策で、所得の少ない子育て世帯を対象にした新たな給付金について、早ければ来月にも、一部の自治体で本人からの申請がなくても支給が始まる見通しです。

デジタル庁の位置づけ

政府は、ことし9月に創設するデジタル庁について、デジタル社会の形成に向けた「司令塔」と位置づけています。

国の情報システムを統括・監理するとして、各省庁に対する勧告権など強力な総合調整の権限を持つほか、関係する予算も一括して計上、配分します。

マイナンバー制度全般についても、企画・立案を一元的に担い、行政サービスの抜本的な向上を目指すほか、厚生労働省が提供した新型コロナウイルスの接触確認アプリ「COCOA」のトラブルなどを踏まえ、重要かつ緊急的なシステムの開発を主導します。

デジタル庁の体制については、担当大臣のもとに、事務方トップの特別職として「デジタル監」を置き、発足時の規模は500人程度とする計画です。

このうち民間から100人以上を登用する方針で、すでに35人の非常勤職員が採用され、発足に向けた準備作業にあたっています。

民間人材には、兼業やリモートワークなど柔軟な働き方を認め、将来的には、官庁と民間を行き来しながらキャリアを積める環境の整備を目指したいとしています。

このほか政府は、来年度・令和4年度に実施する国家公務員の総合職の採用試験から「デジタル」の区分を新たに設け、専門性の高い職員の確保に力を入れる方針です。