陸上選手の盗撮被害 半数超の団体が警察に通報や相談

アスリートたちの盗撮被害や性的な目的で画像が拡散される被害が問題となる中、日本陸上競技連盟が全国の関連団体に調査した結果、半数を超える団体が競技会場での盗撮などで警察に通報や相談をしていたことがわかりました。日本陸連は対策事例を各団体に周知し、防止策をとるよう呼びかけています。

アスリートが、競技会場などで盗撮される被害や性的な目的で画像や動画をインターネット上に拡散される被害が相次ぐ中、日本オリンピック委員会などは去年、被害の撲滅に取り組むと共同声明を出しています。

こうした中、日本陸上競技連盟はことし1月から2月にかけ全国52の関連団体に被害や対策を初めて調査し、37団体が回答しました。
ほぼすべての団体が会場での巡回や注意喚起など何らかの対策を行っていた一方、半数を超える20団体がこの3年以内に盗撮の疑いなどで警察に通報したり相談したりしたことがあると答えました。

具体的には「女子選手の主に下半身を撮っていたので通報した」、「10人ほど盗撮者がいて警察署に連れて行かれて指導された」といった回答がありました。
また、不審な行動が見られるケースが多いと感じるのは、選手の世代が「大学生以上」という回答が18団体、「高校生」が17団体で、高校生以上が参加する競技会で特に注意が必要だとしています。

一方、「撮影に厳しい規制を設けると、保護者などからの苦情が殺到する」とか、「人員や費用の面で負担が大きい」といった課題も寄せられました。

結果を受け日本陸連では、スタート地点の正面や後方を撮影禁止エリアに指定したり、許可なく望遠カメラを持ち込むことを禁じたりするなど、関連団体の対策事例をまとめ、防止策をとるよう呼びかけています。

被害の実情は

日本陸上競技連盟の調査では、回答した37団体のうち、ここ3年間で盗撮の疑いなどで警察に通報や相談をしたことがあったのは20団体と、半数を超えました。

具体的な内容を聞いたところ、「撮影禁止エリアで撮影していて、何度注意しても聞かないので警察対応した」、「不審な動きをしていた男性にカメラを見せてもらうと、女性選手の後部からの写真があり、警察に連絡した」、「スタンドに入り込んだ不審者が大型望遠レンズで盗撮し、逃亡した。申請時に提出された情報を警察に提出した」といった多くの事例が寄せられました。

一方、37団体のうち36団体が何らかの盗撮防止の対策を行っていると回答していて、具体策を複数回答で聞くと、「競技役員やスタッフによる巡回」が36団体、「アナウンスでの注意喚起」が34団体、「大型スクリーンでの注意喚起」が30団体、このほか「カメラの持ち込みの申請」が16団体でした。

自由記述では「マニアの間では、撮りやすい大会、警備がきつい大会などの情報が流れている」とか、「卒業アルバムの撮影や保護者会など、学校関係者なのか盗撮者なのか判断に困るときもある」と対策の難しさが寄せられたほか、「競技普及のためにも純粋な陸上競技ファンの撮影は許可したいので、盗撮や迷惑行為が行えない環境作りに重きを置き、諸問題に取り組んでいる」といった声もありました。

対策は

今回の調査結果を受け、日本陸上競技連盟が作った盗撮防止策の事例集では各団体の取り組みを紹介しています。

この中では、人員が足りなくても、チラシや大型スクリーン、会場アナウンスで注意喚起し、観客とともに盗撮をしにくい環境を作る方法や、カメラを持ち込む際には氏名と連絡先を記入してもらい運転免許証などで確認したうえで、申請済みだと示すリボンなどをつけてもらうことや、撮影した写真を開示する同意書へのサインを求める対応などが示されています。

また、スタート地点の正面や後ろ、走り幅跳びの正面などを撮影禁止エリアにしたり、撮影する方向を制限したりして盗撮を防ぐ対応を紹介しています。

さらに、表彰式での被害が多いといった声も寄せられていることから、式の時間を短くしたり、選手にジャージを着用してもらったり、フォトセッションは観客から見えない場所で行ったりするといった対策を呼びかけています。

日本陸連はこの事例集を52の関連団体すべてに配付し、対策を呼びかけています。

陸連「SNS発信やスマホ撮影で深刻化」

今回、調査を行った日本陸上競技連盟の石井朗生経営企画部長は「大会での迷惑撮影などはかなり前から続く問題で、解決策や取り締まる方法がない中、各団体は苦労してきたが、最近ではSNSでの発信やスマートフォンでの撮影により選手が被害に遭う事例が増え、より深刻化している」と指摘しています。

今回の調査結果について、「被害がかなり多いという実態とともに、各団体が深刻な問題として取り組んでいることもわかった。数少ない迷惑撮影をする人を減らすために撮影を全面的に禁止にするのは非常にハードルが高い。多くの純粋な思いで訪れるファンの気持ちをそがないようどう対策と折り合いをつけるかが難しい。今後は研修などを通じて選手や指導者にも被害に遭いやすい状況を知ってもらいつつ、他の競技団体や日本オリンピック委員会と一緒に、アスリートが安心して競技に取り組める環境を作っていきたい」と話していました。