ICUをコロナ専用にする対応 “今回が限界” 阪大病院

大阪で新型コロナウイルスの医療体制が破綻の危機に直面する中、大阪大学医学部附属病院は府の要請を受けて10日までの10日間、30床あるICU=集中治療室をすべて、コロナ患者専用にして治療にあたってきました。
11日から23床に戻して運用していますが、この間、およそ10件の心臓の手術などを延期するなどしていて、病院は「コロナ以外の患者への影響が大きく、今回が限界だ。感染を広げないよう、適切な行動をとってほしい」と訴えています。

新型コロナウイルスの医療体制が破綻の危機に直面する中、大阪府は、府内の5つの大学病院に対して、大型連休中、予定されている入院や手術を延期して重症者用の病床を確保するよう、要請しました。

これを受けて、大阪 吹田市にある大阪大学医学部附属病院は今月1日から10日までの10日間、30床あるICUすべてを新型コロナの患者専用にして治療にあたってきました。

病院によりますと、この間、術後にICUを使う心臓や、消化器系のがんなどの手術およそ10件を延期したほか、もともとICUにいた一般の患者を別の病床に移す措置をとったということです。

一方で、大阪ではこの病院でしか実施できない、心臓移植などの緊急手術はなかったということです。

大型連休中は毎日2人から4人の新たな重症患者を受け入れ、緊急用に残した1床をのぞき、29床が埋まった日もあったということです。

ただ、体調が回復した患者の転院調整が進まず、少しでも早く重症病床を空けるため、回復した患者を院内の別の病床に移すなどして対応したということです。

病院では、新たな患者の受け入れを制限するなどして、11日から、コロナ患者用のICUをもとの23床に戻して運用しています。

大型連休中の対応について大阪大学医学部附属病院の土岐祐一郎病院長は「今回は患者に、予定していた手術を最大で10日待ってもらったが、例えば1か月、2か月、待ってもらうような事態はありえない。今後、同じような対応は難しく今回が限界だと思っている。これ以上、病院機能をコロナに割くと、別の病気で助からない人が多くなるためそれはすべきではない」と述べ今後は、ICUすべてを新型コロナの患者用にするのは現実的ではないという認識を示しました。

また、現在の大阪の医療体制については「このまま感染者数が増え続けると府民が希望する医療は受けられなくなる。医療体制はそんなに余裕をもってつくられていない」と指摘したうえで「医療というサービスは高齢者にとっては非常に身近なので、医療が崩壊したら自分たちが困るという意識が強いと思うが、身近でない若い人に、感染を抑制する意識をもってもらわないと医療崩壊に結び付く。医療というものを自分だけではなく社会全体のものとして考えて行動してほしい」と呼びかけています。